第38話 やっぱり嫉妬してしまう
「ん……」
俺はいつもよりバッチリと目が覚めた。
そして目を開けると……何故か寝ないはずのメリーが寝ていた。
珍しいな、メリーが寝てるなんて。
あれ、でもメリーが前回寝ていた時は実体化していた時間が多すぎると、力をいつもより多く使ってしまうから眠くなってしまう的なことを言ってたような……。
もしかして……俺が寝た後もずっと実体化してたってことなのか?
「わっ!」
「うひゃっ!?」
俺の後ろから、いきなり大声で俺を驚かしてきた。
こんなことをするのはあいつしかいない。
「さ、咲か……。朝から驚かすなよ! お陰で意識ぶっ飛びそうになったじゃねえか!」
「良いじゃない、悠真の頭はぶっ飛んでるから」
「頭なんて単語いま1つも使ってないぞ!? 俺が頭おかしいみたいな言い方するな。てか、いつもぶっ飛んでる咲には言われたくない」
「なっ! 誰がぶっ飛んでるって!? 悠真の方が馬鹿、大馬鹿よ!」
「いーや、お前の方が大馬鹿野郎だ」
「キィー! あんたのほうが大馬鹿野郎よ!」
まじでこいつ朝から騒がしいやつだな……。
寝起きって一番耳が敏感なんだから、いきなり大声張り上げられたらそりゃあ俺の鼓膜が死ぬに決まってる。
「てか、今は静かにしてくれ。メリーが珍しく寝てるからさ」
「あら本当だ。メリーの寝顔また見れたわね」
「お前はメリーのことが好きなのか嫌いなのかよく分からないんだけど?」
メリーと喧嘩はするわ、と思ったらなんか楽しく話したり遊んでいるわ――――もう仲が良いのか悪いのかよく分からない。
「そうねぇ、前も言ったけどわたしにとってメリーはライバルよ。でも、いつも意地を張って言い争ってるってわけじゃないの。本当はわたしもメリーも、もっと仲良くしていきたいのよ。わたしは学校でもあまりよく思われてないでしょ?」
ま、まあそうだな。
学校では『
しかし咲は知らない。
一部の高校生ではその超塩対応な咲が好きで、ひっそりと支持をしている人たちがいるということを……。
しかも、男子だけじゃなくて女子もいるということも。
「いやぁ? 咲って学校じゃ結構人気だぞ。その証拠に密かにお前の応援隊みたいのあるらしいからな」
「――――は? そんなのあるわけ無いでしょ?」
まあそういう反応すると思ったよ。
咲はいわゆる『自分の人気無自覚女』だからな。
「それがあるんだな〜。咲は気づいてないかもしれないけど、まじでテレビに出てるアイドルをガチ恋で応援してるみたいな奴らがいっぱいいるからな。噂だけど、ライブで使う推しの団扇とか作ってるらしいぞ」
「――――キモ」
咲の顔がサッと青くなった。
ごめん、これは俺も咲に同情する。
テレビに出るようなアイドル相手なら分かるんだけどさ、学校の生徒相手にそこまでする必要あるか? ってなる。
そりゃあキモって言われても仕方ないなって思う。
「えっ、わたしってそんなに人気あるってこと……?」
「そういうことだ。だから、咲は自覚してないだろうけど結構人気あるからな」
「そ、そうなんだ……」
これを言ったらマジで咲が物をぶっ壊すくらい暴走しそうだからな。
「ねえ悠真、わたしって……そんなに綺麗なの……?」
俺を見つめてそう聞いてくる咲。
咲がこんなこと聞いてくるなんて珍しいな……。
咲は――――正直言ってめちゃくちゃ綺麗だし美人だ。
男子全員が咲の姿を見たら、間違いなく射抜かれるくらいだろうな。
「ああ、咲は綺麗だし美人だと思うよ」
「――――!? そ、そう……?」
あ、やべ、思わずストレートに答えちまった……。
でも、これは本当のことだから良いか。
美に厳しい女子にこんな質問をされて、いやなんて言ったら絶対に殺されるに決まってる。
「う、嘘じゃなくて?」
「嘘じゃない。さすが咲、学校でもトップクラスの美女だって言われてるくらいだ」
「そ、そうなんだ……。ゆ、悠真が言うのならそうなのかもね」
俺が言ったらそうなるってどういうことだ?
俺の意見というよりも、大半は他の生徒の話だから俺の感想は当てにならない。
ただ、俺の目から言わせてもらうと、咲は綺麗だと思う。
「悠真がそう言ってくれるなら……余計やけるわね」
「やける? 何が?」
「あ……聞いてないと思ってたらちゃんと聞いてたのね……。まあ良いわ、悠真に言っても問題ないし」
そう咲が小声で呟いた瞬間、いきなり咲は俺に顔を近づけてきた。
メリーは壁側に寝ているから、余計咲の顔が近い。
「悠真がメリーと付き合えて良かったって思ってる。でも勘違いしないで。わたしは諦めたなんて一言も言ってないから! メリーがいても、わたしは悠真にアタックしまくるからね! 覚悟しなさい!」
「――――っ!? あれお前……諦めた感じあったけど?」
「そんなこと誰が言ったのよ。わたしは全く諦めてないから! これからも悠真を堕とすって決めてるんだから!」
これは……面倒事になりそうだなぁ……。
メリーにプラスして咲が俺に来るってことだろ?
またメリーと咲が張り合って俺が巻き添えになる未来しか見えない。
今頃言うのもあれだけど、これ一番めんどくさいタイプのハーレムルートじゃん……。
「咲ともし付き合うってなったら……絶対面倒くさいこと全部俺に押し付けそうなんだよな」
「そんなことはしないわ。わたしだって意外と家庭的なんだからね! 家事全般は出来る」
「――――」
「な、なんで黙るのよ! ほ、本当だからね!」
「いや、咲って結構不器用なところあるから、いつの間にか家事とか出来るようになってるんだって思うと……咲も成長してんだなって思って」
小さい頃は俺にしがみついてビービー言ってた咲が、今は家事も勉強もできるやつになってる。
咲は努力家だから、不器用でも最終的には一通りこなせるようになってしまう。
そこが彼女の凄いところだし尊敬する。
まあ、負けず嫌いな性格ということだ。
「――――そういうところがずるい……」
「まあ、俺はずるい人間だから仕方ないな」
「――――っ! だから何でちゃんと聞いてるのよ! そこは聞き流してほしかったのにぃ……」
「ごめん、俺意外と耳良いからさ」
「――――知ってる。でも悠真が思っているずるいとは違う意味だから良かったけど」
「――――?」
ずるいってそういう意味じゃなかったのか?
咲はほっと一息ついた。
どこか安心した表情だった。
『んっ……。あれ、ゆーまくんと咲さん……』
「おはようメリー。ぐっすり眠れたかしら?」
『メリー、いつの間にか寝てて……』
「多分、実体化したままになってたんじゃないか?」
『――――そうかもしれませんね……。うみゅう……』
メリーはまだ寝ぼけているのか、起き上がったと思ったら俺の脚を枕にし始めた。
寝ぼけメリー……可愛い。
気づけば、俺の手がメリーの頭に乗せていた。
何で幽霊化してるのに触ってる感覚はあるんだろうな?
「――――わたしもそれやりたい」
「お前がこれやったら俺の脚が限界を迎えるから却下」
「それって……わたしが重たいって言いたいのかしら……?」
「ああ、メリーに比べたらな」
「――――っ! 悠真のバァーーーーーカ!」
「えっ、なんで!?」
咲は俺に吐き捨てるようにそう言って、部屋を出て行ってしまった。
あれ、もしかして俺……体重のこと言ってた……?
――――俺やらかしたなこれ……。
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