第36話 メリーとの思い出を2

「良かったわね2人とも!」


「「――――はっ!」」


 雰囲気に完全に浸っていた俺たちに声をかけてきたのは咲だった。

我に返った俺とメリーは焦った。

メリーは顔を真っ赤にして目を回してオロオロしてるし、俺は顔がマジで熱いしオロオロし出すし……。


「全く、もっと2人くっつきなさいよ! もう2人とも付き合ってるんだから。ほらメリー、いつもみたいに悠真に甘えなさい!」


「そ、そんな事言われたって……。は、恥ずかしいですよぅ……」


「あれあれ〜? いつもならあんなにベタベタくっついていたのに〜?」


 は、腹立つこいつー!

完全に挑発しているようにしか聞こえないんだけど!?

 あれか?

実際は俺と今は付き合えないから、それの恨みか?


「で、出来ますよ! そんなの余裕――――よ、よゆ……ヨユウデスヨ?」


 あ、これは駄目なパターンかもしれない……。

メリーが催眠にかかったみたいに目を回しているし、言葉もカタコトになってる。

表情も恐ろしく見える。


「め、メリー、無理しなくても良いんだからな? 別に咲はからかっているだけなんだからな?」


「って言いながら期待しちゃっているもんね? ゆ・う・ま?」


「なっ!? そ、そんなわけ――――な、ナイジャナイデスカ……」


「やっぱり期待してるじゃない」


「――――!?」


 しまった!

咲にバレてしまった!

もうこれ回避できないぞ!?


「ゆ、ゆーまくん……」


「め、メリー……」


 どうすればいいか分からず、見つめ合う俺とメリー。

一瞬だけ咲を見ると……。


「――――」


 やべぇ……。

あの笑ってる表情がマジで恐ろしく見えるんだけど……。

気のせいか?

目元が暗くなってる気がするんだけど!?

 あ、メリーも俺と同じ表情になってるから同じこと考えてるかも……。


「まさか、怒られてるとでも思ってるの?」


「「――――!」」


「はあ……。そんなことはないわよ。逆よ逆。わたしは2人の幸せを願ってるの」


「咲……」


「咲さん……」


「あ、でも今日は何が何でも悠真の家に泊まるわよ」


「お、おう……。それは別に良いぞ……」


 何故感動のシーンを台無しにするんだ……。

まあ、でもそれも咲らしいな。


「ってか、もう気づいたら真夜中じゃねえか!」


「本当ですね! 時間というものは早く流れると言いますが……今日は特別早いですね」


「そう思って、さっき降りた時にこれ持ってきたの! みんなまだ夜ご飯食べてないでしょ? だからこれみんなで食べよ?」


 咲が手に持っていたのはカップラーメンだった。

まあ、夜遅いしあまりがっつりした食べ物を食べても胃に悪いだろうから丁度良いのかもしれないな。


「わあ! カップラーメンなんですね! 嬉しいです!」


「そっか、メリーはカップラーメンに今ハマってるんだもんな」


「そうなんですよ! 特にこの醤油ラーメンが好きなんです!」


「でも食べすぎると太るぞ?」


「メリーは太りません! 幽霊なので関係ないです!」


 頬を膨らませながらそう言うメリー。

俺と咲は笑い合いながら、カップラーメンの蓋を開けた。

 そう、この3人が良い。

こうやって笑い合いながら楽しんで一日を過ごせる。

それだけでも俺は楽しかった。

これも全部、メリーがここにやってきたから。


(残り少ない時間……俺はメリーのために傍に居てあげないとな!)


 俺は心でそう誓った。

メリーがここからいなくなってしまうまで約半年。

彼女のために、全力で。

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