第35話 メリーとの思い出を1
「もちろん幼馴染の悠真なら分かるわよね? わたしが冗談言ってないこと」
「そ、それは分かるけど……。急な展開すぎて脳の処理が追いついてない」
俺がメリーの恋人になるなんて……。
いや、だってメリーは幽霊だぞ?
生きてないんだぞ?
「お願い、無理なお願いなのは分かってる。でも、メリーがここに来てずっと悠真の傍に居続けているのは、悠真がそれだけ良い人でタイプだったってことでしょ? なら尚更よ。もうメリーにはここに、いいや、この世界からいなくなってしまうかもしれないのを、メリーはもう分かってる。それは悠真も知ってるでしょ?」
「――――」
俺は咲から視線を逸した。
さっきも言われたけど、やっぱり信じたくない。
たぶん……それくらいメリーは俺たちの生活に溶け込んでいたんだと思う。
もう、メリーがいない生活なんて考えられなかった。
「――――寂しいんでしょ?」
「それはもちろんそうだ。もう、メリーがいない生活なんてありえない。メリーが来てから、俺の一日の過ごし方が思いっきり変わった。今までは1人でゲームするか、咲が俺の家に来るか、俺が咲の家に行くかしかなかったけど……。メリーが来てからはいつもメリーと話すことがほとんどだし、違う遊びをするようになった。家に帰ったら楽しいことがあるなんて今までなかったし、考えられなかったな」
「悠真を見れば分かるよ。あ、最近楽しそうだなって! だから、悠真にとってメリーは大きな存在だと思う。だからこそ、わたしは悠真にメリーと恋人になって欲しいって言ったの。今まではメリーが悠真を幸せにするだったけど、今度は悠真がメリーを幸せにする番よ」
咲の言葉に、俺は気付かされた。
確かに、メリーがいなかったら俺は何も楽しくない生活を送っていた。
咲もいたけど、メリーが加わったことでさらに楽しいと感じるようになった。
そうか……。 今度は、今度は俺がメリーに応えてあげる番なのか。
「――――咲の言う通りだな。今度は俺がメリーに応えてあげなきゃいけない時期になったってことか」
「そう。だから悠真、もう一度言うけど……。メリーの恋人になってあげて! あの子に最高の思い出を作ってあげて!」
「――――」
真剣な眼差しで俺を見ながら、咲はそう言った。
恐らくこれで最後の選択になった。
俺はこれからメリーと残りわずかの時間をどう過ごすのかを。
俺の選択は1つしかなかった。
てか、もう決めた。
「――――決めた。俺は……メリーの恋人になる。俺も咲と同じ考えだ」
「――――! 決まりね! さっすがわたしの悠真!」
「いつからお前のものになったんだ俺は……」
『――――えっ?』
「「――――!?」」
後ろから声が聞こえたと思ったら、声の正体はメリーだった。
あれ……思ったよりも帰ってくるの早かった!
「えっと……もしかして、俺たちの会話聞いてた?」
『は、はい……』
「ど、どこから聞いた?」
『えっと……ゆーまくんがメリーと恋人になる! って宣言してたところからです……』
「待って……俺めっちゃ恥ずかしいこと聞かれてんじゃん!?」
もう泣きたい……。
これから準備に取り掛かろうとしていたのに、全部聞かれてたのかよ!
もうお婿にもお嫁にも行けない……。
「でも悠真はあれでしょ? 意外と満更でもないんでしょ?」
「――――っ!? そ、それは絶対……」
「ほんとに〜? すごい顔真っ赤よ」
「――――」
『えっ、もしかしてゆーまくん……本当なんですか!?』
くそっ、咲のそのニヤニヤ顔がすっごい腹立つ。
まじで煽ってるようにしか見えない。
後でお仕置きだな。
「じゃ、わたしはお役御免かしらね。しばらくリビングで悠真のお菓子でも漁って食べてるから」
「ちょっ、おまっ!」
「悠真、こういうのは雰囲気が大事、でしょ? それじゃあ、また後で」
「――――」
くっ……あいつ、こういう時だけは気が利くやつなんだよな。
咲は手を振りながら俺の部屋から出て、リビングへ行ってしまった。
咲が階段を降りる音が聞こえた。
「――――」
『――――』
あれ?
メリーと2人きりなんて毎日のようにあるのに、今日はめっちゃ気まずい。
俺はメリーと目を合わせることが出来なかった。
目を合わせたら、さらに気まずくなるどころか、もっと恥ずかしくなってしまいそうだったから。
『その……さっきのお話の続きなんですけど……ゆーまくんは本気で言っているんですか?』
「えっと……咲に半ば強制的な感じに聞こえたかもしれないけど……俺は本気だ!」
『――――!? で、でも……メリーは幽霊ですよ? 確かにメリーはゆーまくんのこと好きですけど……』
「メリーは確かに幽霊だけど、恋愛なんてそんなの関係ないんじゃないか? 」
『えっ?』
「だって、メリーだってそうだろ? 出会って即俺に告白してきたじゃないか。まあ、最初は絶対ありえないって思ってたけど……でも今は違う! 俺は本気なんだ!」
『ゆ、ゆーまくん……!』
メリーは目から大粒の涙を流し始めると、実体化して俺に抱きついてきた。
彼女は幽霊だから、もちろん生きている人間みたいに体温は全く感じない。
しかし、この時は何故かメリーから温かい何かを感じた。
「メリー。メリーが良かったら……俺と付き合ってくれませんか?」
「はい! よろしくお願いします! ゆーまくん、大好きです!」
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