第30話 無双状態のメリー
『フラッシュです』
『ストレートです』
『もう一度ストレートです』
「ま、また!?」
「ちょ、ちょっと……!」
さっきからメリーの手札が強すぎるんだけど……!
13回戦目から完全にメリーに流れが来ている。
というか、流れ来すぎだろこれ……。
メリーはさっきからフルハウス以上しか出していない。
メリーは
「悠真! ちゃんと混ぜてるの!?」
「ちゃ、ちゃんと混ぜてるって! 俺も最初はちゃんと混ざってないかなって思ったら、めっちゃ混ぜた。それでもこれだからな!? 」
『メリーもすごく驚いてます。連続でこんなに当たっているんですから』
メリーは落ち着いた声で話してはいるが、顔がニヤついている。
まあ、これだけ当たればな……。
カジノを本気でやっている人の気持ちがよく分かる。
「ぐぬぬぬ……! わたしだけじゃないのよ、強い役が作れてないの!」
「その傲慢さが影響しているんだろうな」
「な、何よ傲慢って!」
「早く強い役を作りたいっていう欲を思っているから揃わないんだ。良いか咲、賭け事っていうのはな……何も考えない方がかえって当たるんだ」
「そ、そうなの? じゃ、じゃあ次は何も考えないでやってみるわ」
そう意気込んでいる咲だが、多分メリーには到底勝てないだろうな。
ポーカーが強い俺ですら勝てないんだから。
「じゃあ次は21回戦目だな」
「残り9回ね……」
『絶対に勝ちます!』
いよいよクライマックスを迎えようとしているポーカー。
果たして勝利は誰の手に……? ってところだな。
俺もここからは本気でやることにするか。
「よし、じゃあカードをシャッフルするぞ」
俺はカードの山をシャッフルする。
ただカードをシャッフルしているだけなのに、空気はさらに重くなって緊張が走る。
思わず唾をゴクリと飲んでしまった。
「――――じゃあ、配っていくからな」
俺は時計回りにトランプを配っていく。
2人の表情も硬い。
俺と同じで緊張しているのだろう。
「――――」
「――――」
『――――』
配り終わったら見ても大丈夫って言うんだけど……雰囲気に飲まれてそんなことを言う余裕もなかった。
黙ったまま同時に自分の手札を取り、カードの中を見る。
俺はめちゃくちゃドキドキしながら、カードの中を開けた。
カードの中は……
スペード4、クローバー2、クローバーQ、スペードK、スペードJ
ま、真っ黒だなあ……。
それに絵柄が全部スペードだったらロイヤルストレートフラッシュ狙えたのに……。
まあ、そう簡単にはいかないか。
とりあえず、ストレートは狙えそうだから、スペード4は捨てて、Aが出てくることを願おう。
「じゃあ、俺は一枚捨てる」
そう宣言し、俺はスペード4を捨てて、カードの山から一枚引いた。
とりあえず、フラッシュを出してメリーの連勝記録を止めたい……!
頼む!
お前のマークにかかってるんだ!
ハート4
何でこのタイミングで赤が出てくるんだよ!
ノーハンド確定だこれ……。
もう勝てないかもしれない。
さて、このターンの負けは確定だ。
残るは2人だが……まだカードを捨ていない。
どうやら、出そうか出さまいか悩んでいる様子だ。
俺はもうこのターンは勝てないから、勝手に絶望して2人が終わるのを待つか。
あー俺はもう勝てねえ終わったー負けたー。
――――これやってたら本当に絶望して病みそうだな。
やめよ。
「じゃあ、この2枚捨てる」
「あいよ。2枚な」
「ありがと」
最初に動き出したのは咲だった。
手札から2枚を抜き、捨場に置いた。
表情からして……全くわからん!
ポーカーフェイスなのか、絶望しているのかどっちか全く分からない。
俺はカードの山から2枚を出し、咲に渡した。
「――――」
うーん……咲がどんな役を揃えられたのか気になる。
めちゃくちゃ真顔だから感情が読み取れない。
『じゃあ、メリーは3枚捨てます』
「あいよ。3枚な」
『ありがとうございます』
おお、かなり賭けに出たな。
3枚捨てるということは、残した2枚はすでにペアが出来ている可能性が高い。
恐らく3カードあたりを狙っているのかもしれない。
表情は……真顔過ぎて全く把握できない。
「さて……準備は良いか?」
俺がそう言うと、2人は黙ったままコクリと頷いた。
――――ヤバい、なんだこの緊張感。
これ遊びのポーカーなんだよな?
何も豪華なもの賭けてないのに、まるで本場のカジノにいるかのようだ。
「では……オープン!」
俺の掛け声と同時に、3人でカードを開けた。
俺は勿論ノーハンド、咲は……ストレート!?
メリーは……3カードか。
ということは……。
「はい、今回は咲の勝ち」
「やったあ!」
やっと咲が1勝目をあげた。
と言っても、最終的な結果は咲は最下位だけどな。
まあ、彼女の中ではもう勝負は諦めていそうだ。
今はとりあえず役を揃えることに精一杯だろう。
真剣だけど、楽しみながらやっているようだった。
そう、こんな感じが本来の咲なんだ。
こうやって負けず嫌いだけど遊ぶことを思いっきり楽しんでいるところが、実に彼女らしいと思う。
あの時、咲と話せて良かったと心からそう思った。
「――――ちょっと! 何で褒めてくれないわけ!?」
「いや……ゔゔん! いやー、さすが咲だなー」
『ええそうですねー。さすが咲さんです。凄い豪運の持ち主ですねー』
「何で2人とも棒読みなのよ! 良いわ……残りのターンは全部わたしが勝ってやるわよ!」
「ま、この時点で既に咲の負けは確定だけどな」
「うっ……うるさいうるさい! とにかく早くやるわよ!」
最終的な結果で負けることは咲も自覚していたようだ。
さて、次は22回戦目。
さすがに俺も勝ち続けないとヤバいな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます