第29話 トランプゲームはいつになっても面白い
「フルハウス」
「ちょっと! 何で悠真はそんなに強いわけ!?」
「運を持っているか持っていないかの差ですよ咲さん。わっはっは……!」
「ぐぬぬっ……! 苛つくわその笑い……! 良いわよ、絶対に笑ったこと後悔させてやるんだから!」
『メリーもです!』
俺やっぱ賭け事強いなあ。
今俺は10連勝中だ。
メリーと咲はまだ一勝もしていない。
このまま勝ち切って、2人をボロボロぐちゃぐちゃにしてやるぅ。
にへへへ……!
『――――3枚です』
「わたしは2枚!」
「はいよ」
ディーラーは俺がやっているから、カードの山からメリーには3枚、咲には2枚渡した。
咲はばっとすぐに渡されたカードを見た瞬間、ちょっと良い顔をする。
お、もしかして良い並びができたのか?
一方メリーはというと……目元を暗くしていた。
これは……全く揃わなかったやつだな。
「じゃあ、俺は1枚で……」
俺の手札は右からスペード7、ハート7、クローバー7、ダイヤ9、クローバーAだ。
またもやフルハウスのチャンスということで、クローバーのAを捨てて9を狙う。
もし、これで出なかったとしても3カードだから勝算は十分にある。
俺はクローバーのAを捨て、カードの山から1枚引いた。
そして、表を開くと……ダイヤ3だった。
くそ、フルハウスはないか……。
でも、3カードは確実だ……勝てる!
「じゃあ、用意は良いか……?」
咲は自信満々に顔を上下に振り、メリーは目元を暗くしながら小さく頷いた。
「よし、じゃあ……オープン!」
一斉にカードを見せ合った。
メリーは……ノーハンド、つまり全く揃っていないブタだ。
咲は……。
「ふふん、どうよ悠真……!」
「これは……! すげえ、1ペアだ!」
「やっと揃ったわよ! さあ、褒めてちょうだい!」
「いや、1ペアぐらいで褒めることなんてねえよ」
「何でよ! 11回目でやっと揃ったことをちゃんと褒めてよ!」
「フラッシュとかストレートらへんを出したら、目一杯褒めてやるよ」
俺がそう言うと、咲は歯ぎしりしながら俺を睨む。
ま、実際そうだからな。
1ペアは役の中では一番弱いし揃いやすい。
そんなものでそんな喜ばれても、俺はジト目で見るけどな。
『何で……何でメリーはこんなに当たらないんでしょうか? 変なものに取り憑かれているんでしょうか……?』
「そんなに落ち込まなくても……。咲だって今やっと1ペア来たし、もうちょっとで運が回ってくるって」
『うーん……』
慰めたつもりだったが、メリーの表情は変わらないままだった。
運なんて神様の気まぐれだ。
当たり始めたら止まらないし、最初に当たっていたらいきなり当たりが全く来ないことだってある。
メリーはまだ当たりが来ていないだけだ。
我慢強く待っていれば、いずれ当たり始める。
それがトランプゲームなんだ。
「じゃあ、12回戦目ね」
「ああ、じゃあ今からカード配るからな」
『はい……』
俺は時計回りにカードを配り始めた。
手持ちは1人5枚。
12回戦目となると、状況が変わりやすくなってくる頃合いだ。
俺ももしかしたら、ハズレが続く可能性だってある。
ここからが、本当の戦いだ……!
カードが配り終わり、3人同時にカードを見る。
俺の手札は……ダイヤ3、ダイヤ5、ダイヤ9、クローバー10、スペードK。
お、終わった……。
とりあえずクローバーの10とスペードのKは捨ててフラッシュを狙うけど、ノーハンドになる可能性大だな。
良い結果でも1ペアくらいだなこれ……。
「うーん……」
『――――』
2人は……お互い険しい顔をしていた。
結構微妙な手札なんだろうな……。
「じゃ、俺は2枚捨てる」
俺は宣言して2枚捨て、カードの山から2枚引いた。
せめて、1ペアくらいにはなってくれ!
そう願って俺は恐る恐るカードを表にした。
トランプに書かれていた数字とマークは……。
ハート3、スペードQ
終わった……。
完全敗北決定です。
俺の伝説に終止符が打たれた。
あとは残りの2人の戦いとなるわけだけど……。
「ふ、ふふふ……」
咲は気持ち悪い笑いをして、ニヤニヤとしていた。
交換しない様子だから、一発目で結構良い役が出来たのか。
いや、さっきは1ペアでめっちゃ喜んでいたから、さっきよりはちょっとだけ良い役が出来たのかもしれない。
あまり期待しないでおこう。
さて、問題はメリーだけど……。
表情を変えずに、真顔で手札を見ていた。
悩んでいるのか、やっぱりよろしくない手札になってしまったのか、よく分からない。
『1枚交換、お願いします』
「お、おう」
刺さるような声でそう宣言したメリー。
いきなり空気が緊張感に包まれた。
いや、これただの遊びのポーカーだぞ?
何も賭け事をしていないのに、何でこんなに緊張感が増しているんだ?
俺はメリーに1枚渡した。
メリーはそれを手に取ると、ニヤリと笑った。
これは、もしかしたら……!
「じゃあ、準備は良いな?」
咲とメリーは同時に頷いた。
「よし、じゃあ……オープン!」
同時にカードを表にした。
俺は勿論ハイカードだからどうでもいいとして、まずは気持ち悪い笑い方をしていた咲の手札を見てみるとしよう。
「今回は3カードよ! どうかしら?」
「おお、6が3つ揃ってるな! これは結構強いぞ」
「やった! とりあえず悠真の連勝は止めることが出来たわね」
「――――俺はノーハンド」
そのドヤ顔が今はものすごく腹が立つからやめて欲しい。
後でお仕置きをしないとな、ポーカーで。
残りはメリーだ。
『――――フラッシュです』
「は!?」
「えっ!?」
メリーの手札を見ると、全部のマークがスペードになっていた。
フラッシュは2番めに強く、滅多に見られない組み合わせだ。
それを引き当てるなんて……何かヤバい気配がする。
「えっと、今回はメリーの勝ち!」
『やった〜!』
「どうする? このゲームきりがないから何回までやるっていうの決めておくか?」
「今ので12ターンだから……30ターンでやめる?」
『そうですね。時間的にもそのくらいが良いでしょうし』
「分かった。じゃあ、30回戦目で終わろう」
久しぶりにやったけど、やっぱトランプゲームは楽しいな。
カジノゲームは全般的に面白いと思う。
だから、みんなはホイホイと金を賭けてしまうんだろうな……。
「よし、じゃあ13回戦目始めようか!」
「ドンと来なさい! この調子で一位になってやるんだから!」
『メリーだって負けませんよ!』
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