第22話 いつもと変わらない幼馴染
月曜日、月曜日の登校というものはめっちゃダルい。
何もやる気が起きないのはみんなも同じだろうが、今の俺の心の中はもっとダルい。
(咲と出くわしちゃったらどうしよう……)
そんなフラグっぽいことを考えなければ良かったと思った。
まるで俺を待っていたかのように、玄関のドアを開けた目の前に咲がいた。
「おはよう悠真!」
「お、おはよう……」
しかし、いつも通りの咲だった。
リュックを背負って、胸の前で小さく手を振っている。
警戒し過ぎか?
いやいや、咲がいつどこで仕掛けてくるか分からない。
油断は禁物だ。
「――――? どうしたの? 早く行こ?」
「あ、ああ。行こっか」
とにかく、咲に怪しまれないように観察してみるとするか。
1番危険なのは下校しているとき。
その時に咲が俺の家に入りたいとお願いしてきたら、それは間違いなくメリーに対抗するためだと思ったほうが良い。
そして、またあの夜みたいに俺を誘惑してくる。
だが、今回は俺から誘うことになる。
咲の反応はどうなるのか……その先を想像すると、何だか不安になってくる。
「――――かなあ……」
「ん? なんか言った?」
「ううん、何も言ってないよ?」
「そうか」
しかし、学校に近づくに連れて、咲はいつも通りに『氷花姫』と化した。
俺の警戒心は杞憂だったかのように、咲が俺に何か言ってくることもなく時間が過ぎていった。
勿論警戒心は怠ることはなかったが、それでも警戒する必要はなかったかもしれないと思うほど、それくらい何もなかった。
◇◇◇
授業も終わり、帰宅部の俺はすぐに学校を後にする。
咲は周りの事も考え、俺とは後から合流してくることになっている。
学校で有名になっている咲が、俺にだけあんなに話しかけているところを見られたら大変なことになるからだ。
「――――」
俺はずっと考えていた。
今日は登校があったし、それを配慮してあえて言わなかったのかもしれないが、それなら2人で登校している時に言えばいいだけの話。
あれだけ俺に大胆な行動をしてくるというのなら、気持ちを抑えきれず、すぐに俺に伝えてくるはず……。
ただ……もしかしたら、下校を共にしているところを狙って、俺の家に入り込もうとする可能性だって大いにある。
結局油断は出来ないってことか……。
まあ、咲が俺の家に来たいというのなら逆に俺は都合がいい。
何故なら昨日決めたことの工程が省けるからだ。
「うーん……。にしても咲は何を企んでいるのか本当にわからん……」
「ゆ・う・まー!」
「えっ、うわっ!?」
「えへへー、やっと悠真に追いついた」
「ちょっ! 急に抱きつくな!」
「別に良いじゃん」
誰かと思ったら咲が俺の名前を大声で呼んで、そのまま俺に抱きついてきた。
ま、周りに人がいなくて良かった……。
もしいたら大変なことになってたぞマジで……。
「あ、そうだ。悠真にまだ言ってなかったけど、今日わたし用事あるから悠真の家行けないから宜しく」
「え、あ、わ、分かった」
「なにー? まさか来て欲しかったのー?」
「違うわ!」
「隠さなくても良いのに……。そんなに寂しがらなくても、明日はちゃんと遊びに行くから」
「結局来るのね……」
ほぼ毎日俺の家に来ているけど、咲の親は本当に何も言わないのだろうか。
でも、21時になったら帰ることにしているみたいだし、許せる範囲ではあるかもな。
それに咲の親は優しいし。
それはともかく、俺の計画は省けて済んだ。
あとは咲に真相を聞き出すだけ。
かなりリスクは抱えることにはなるが、これは咲の暴走を止めさせるためでもあるし、今まで通りに咲と関わっていきたいという俺の切実な願いがある。
別に緊急的なことでもないし、明日でも問題ない。
「じゃあわたしはここで。じゃあね!」
「またね」
話をしながら、家の前についた咲と俺はお互い手を振って別れた。
咲は俺に別れを告げたあと、すぐに家の中へ走り込んでいった。
それを見送ったあと、俺も自宅へと入る。
『どうでしたか? ゆーまくん』
「あれ? 家にいたの?」
『咲さんが家の中へ入っていくところを見たので、今日は来ないんだろうなって思いまして』
「――――もしかして全部聞いてた?」
俺の質問に、メリーは視線をそらした。
あ、これ聞いてたパターンだ……。
「ちなみにー……いつくらいから?」
『えっと……咲さんがゆーまくんに抱きついたところからですよ? メリーは結構遠くからそれを見かけたので、咲さんにバレないようにしながら付いてきたんです』
「そ、そうか……」
まさか、全部聞かれていたとは思わなかった……。
咲は霊感が強いって言っていたけど、距離が離れれば感じないっていうのは本当のことなんだなと今になって知った。
『じゃあ実体化しまして……』
そう言うと、メリーはいつも通り実体化した。
本当に一体どんな仕組みになっているんだろうか……。
「今日もメリーと遊んでくれますよね!?」
「もちろんだ。メリーが気が済むまで付き合ってあげるよ」
「でも今日だけちょっと変えて……」
メリーがもじもじしながら顔を赤らめる。
男である俺にその表情を見せられると、色々ヤバいことになりそうだからやめてほしい。
それに、メリーは自分で言っておいてそうなってしまうことがほとんどのため、さらにグレードアップされたような感じになる。
ちょっとドジっ子なのかな? と思ってしまう。
「今日はいつもより多くゆーまくんに甘えたいんです……。良いですか……?」
そんな顔で上目遣いをしながら、俺の手を握ってこられたらたまったもんじゃない。
俺は夜遅くまでメリーを甘やかした。
そして、メリーは何故かいつもより俺にペタペタと触りまくっては甘えた声で俺に話しかけるのだった。
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