第3話 メリーさんは可愛い
――――いまこの子はなんて言った?
俺のことが好き?
うん、まさに死亡フラグですね。
『ほ、本当なんですって!』
メリーさんはオロオロとし始め、涙目になっている。
俺のイメージしていたメリーさんと、どんどんかけ離れていくんだけど。
俺の言うメリーさんは何だろう――――黒いドレスか何かを身に付け、黒くてヤバそうなオーラを身に纏っている。
そして、目が血走っていて口端から血を流しているイメージだったんだけど……。
「メリーさんって結構可愛いんだね」
『ふぇ!? そ、そんな急に言われたら……困ります……』
しかし俺の目の前にいるメリーさんはどうだろうか。
黒い少しボロボロのワンピースを着ているが、頭の横に小さな可愛らしい髪飾りが付いている。
幽霊でもオシャレはするんだな……。
小さな顔、透き通っていて綺麗な蒼い瞳、細い体と折れちゃいそうなくらい細い腕、スラッと伸びた脚――――文句なしの容姿を持っている。
「俺アニメの世界に転生しちゃった?」
『―――――』
「ごめん聞かなかったことにしてくれ……」
メリーさん引いちゃってる。
今更だけど、俺結構恥ずかしいこと言ったよね?
うーん、メリーさんに突然好きだって言われてもなぁ……。
俺は鈍感な男じゃない。
メリーさんが俺のことを異性として好きだと言っているのは分かっている。
でも相手は幽霊だし、なんか普通の女の子としてどうしても見れないんだよ。
「メリーさん」
『はい?』
「さっき俺に好きだって言ってくれたよね」
『は、はい! そ、それでどうですか?』
「えー……とても嬉しいんですけどごめんなさい」
『えっ!? なんでですかぁ!?』
逆ギレされた。なんで?
俺の肩を強く掴んで涙目になりながらガックンガックン前後に揺らすメリーさん。
首もげそうだからやめて欲しいんだけど!
「確かにメリーさんはめちゃくちゃ美人だと思うよ。今まで見たことないくらい可愛いし」
『そんなに褒めないでください……』
メリーさん褒められることに弱いなぁ。
俺がメリーさんのいい所を言っただけで、すぐ目を逸らしてモジモジしだす。
「でもメリーさんは幽霊だ。だからどう接していけば良いのか分からないんだ」
『―――なるほど、ちなみにゆーまくんは学生ですか?』
「そうだけど?」
『なら2人きりの時は実体化して、学校に行く時はこの姿で良いですね!』
「――――はい?」
全く話についていけない。
実体化? 学校に行く時はこの姿?
『今ゆーまくんが見てる姿は幽霊の姿です』
そう言うとメリーさんの周りに眩しい粒子が集まり始める。
するとさっきまで透けていた脚が見えるようになった。
なんか本当にアニメの世界にいるみたいな感覚になる。
「これで実体化出来ました!」
「え、うわ!」
実体化できたと同時にメリーさんは俺に飛びついてきて、俺は倒れ込んでしまった。
本当に実体化してる……。メリーさんの体全体が俺に触れていることが分かる。
普通の人間の女の子と変わらない。
なんか変な表現だけどね。
「ゆーまくん、暖かいです……」
顔ちっか! めっちゃ可愛いし!
これは幽霊じゃなくて本当の女の子だ!
さすがに俺の全身が熱くなり始めた。
「メリーさん、ちょっと離れてくれるとありがたいんだけど」
「嫌です」
「俺ちょっと疲れてきたから」
「イヤです!」
メリーさんは俺の体に腕を回してきて、頬ずりしてきた。
何この可愛い生き物は!?
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