B子 5

田舎とはいえ大声だと聞こえる範囲に他の家もある。

このまま泣き騒がれてしまうと色々と不都合が起きる。


すぐにやめさせようと外に出てB子を探すが姿が見えない。

おそらくとっさに逃げたのだろう。


会いたいのか会いたくないのか何がしたいのかわからない。


翌日も翌々日もB子は騒ぎに来た。

そして日増しに行為はエスカレートしていく。


夜中に庭先でガサガサゴトゴトと異音がする日が続いた。

玄関前に紙袋が置いてあり、中身を見ると≪血液を貯めた袋≫が入っていた。

家の前の道路に血液がぶちまかれていた。

郵便受けに血の付いたカミソリが入っていた。

ボロボロに切り裂かれたぬいぐるみが屋根に投げられていた。


これらの行動を見てわかるとおり、やはりB子は病気ではない。


ただ気持ちが荒れていて

自分を見てほしくて

思い通りにならなくて

どうしていいかわからなくて

わがまま言って駄々をこねているだけだ。

それでも《直接》なにかをする勇気などなくて

騒いだり嫌がらせでもいいから相手にしてほしいのだ。


可哀想...と言ってしまうと上から目線でよくないのかもしれないが

子供のように泣いているB子の姿を見て胸が痛くなったり

何のとりえもない底辺な私にそこまでしてくれる事に嬉しささえ感じた。


サイレンの音が近付いて来た。


次にB子の声や姿を見る日はいつになるだろうか。

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