B子 2
私は本当に心の病気で苦しんでいる人を知っている。
だから、B子の心が病んでいるとは思えなかった。
普通に仕事もしていたし、大学も卒業していた。
A子のようなイジメの被害者でもない。
ただ、彼女は《彼女の世界》に深く入ってしまう。
例えば好きな曲を聴いていると、その曲の歌詞が全てになってしまう。
まるで催眠術にでもかかっているかのようだった。
明るく楽しい曲ならニコニコして活発になり、悲しい曲なら下を向き涙を流しうずくまり動かなくなる。
そしてB子は《陰鬱とした世界観の曲》がどうやら好みのようだった。
♪〜幸せになりたい〜♪
♪〜元彼に縋るの〜♪
♪〜どうせ私が悪い〜♪
曲を聴きながら剃刀をカバンから取り出して、私の目の前でギコギコと自らの脚を切り出す。
ピンクの肉と黄色い脂肪が見えるほどに傷は深い。
『うぅっ…』と声を出して痛みに耐えるB子。
傷口を自分で開いたり閉じたりしてマジマジと見たあと、慣れた手つきで処置を始める。
床の血溜まりは時間の経過でゼリーのような塊になっている。
それを両手ですくい上げ『これ、血餅って言うんだ。知ってる?』と言って笑顔で私に見せつける。
『こんど一緒にライブに行こうよ!』
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