土属性VS土属性(4)

 加登京。


 彼は今から十年前、阿蓮達五大魔狂が陰陽寮から強制的に任務を受けさせられたのと同時期に陰陽師となった。十年というのは陰陽師の世界では「新米」という扱いなのだが、京は若手の中では上位の実力を持っており、すでに何体もの悪霊体デモナスを単独で退治していた。


 京は陰陽師になるとすぐに悪霊体退治の任務を主に受けて宇宙中を渡り歩くのだが、そうなると必然的に阿蓮達五大魔狂の話をよく聞くようになる。


 一つのことに集中したら他のことが見えなくなる視野の狭いところがあるが、それでも正義感が強い上に熱血漢である京は、阿蓮達五大魔狂と悪霊体の戦いの余波で都市が破壊された痕跡を見る度に、阿蓮対して少しずつではあるが苛立ちに近い感情を持つようになっていった。


(それだけ強いのに何故もっと上手く戦えなかった!)


(それだけ強い力を力を何故そんなに無計画に使える!)


 京の感じている苛立ちは、阿蓮達五大魔狂の戦いを見たり、あるいはそれに巻き込まれた者達全員が感じているものである。しかし正義感の強い彼は、実際に阿蓮達の戦いに巻き込まれた者達と同じか、あるいはそれ以上に苛立っていた。


 そんな苛立ちを胸に秘めながら陰陽師として活動していたある日、京が悪霊体退治の任務を受けてとある宇宙居住地へ行くと、自分と同じ任務を受けた陰陽師がいて、しかもそれが五大魔狂の一人である射国阿蓮であった。その事を知った彼は、すぐに阿蓮がいる宇宙居住地の農業区画へと向かったが、そこで見たのは自分に式姫神サポートユニットである女性達を裸同然の姿で連れ歩く射国阿蓮の姿。


 その光景に今まで積もり積もってきた苛立ちが一気に爆発をして京は射国阿蓮に決闘を申し込み今に至るのであった。




「……本当にここで戦うのか?」


 阿蓮に決闘を申し込んだ京は、阿蓮が決闘を行うと決めた場所で彼に話しかける。


 今阿蓮と京がいるのは宇宙居住地の近くの宇宙空間で、二人は自分専用の式着神アーマーユニットを装着した状態で距離を取って対峙していた。


 京の阿蓮は式着神の頭部を動かして頷く動作をさせてから答える。


「ああ、ここで戦う。お前だって宇宙居住地の中で戦うつもりはないだろ?」


「それはそうだが……」


「それに、これはアイツらにとってもいい勉強になるからな」


 阿蓮はそう言うと、少し離れた場所にいる式着神を装着した十人の爆竜の方を見る。


「彼女達の勉強だと? お前、ふざけているのか?」


「別にふざけていないさ」


 京の僅かな怒りを感じさせる声に阿蓮は何でもないように答える。


「俺はコールドスリープをしていた期間を含めて八十年陰陽師をしているが、その間にお前のように決闘を申し込んでくる奴は大勢いた」


 悪霊体との戦いの余波で故郷が破壊された、あるいはそれに巻き込まれた。主にこの二つの理由で阿蓮達五大魔狂に決闘を挑んだ陰陽師は過去大勢いて、阿蓮達はそんな陰陽師達を完膚なきまでに倒していき、これも彼らの悪名が広まる理由の一つであった。


「陰陽師同士の決闘は実際にやるだけじゃなくて見るだけでもいい経験になるからな。お前も勝手に決闘を申し込んできたんだ。彼女達に見学させるぐらい、いいだろう?」


「………! ふざけるな!」


 自分との決闘を受けた理由が式姫神の経験値稼ぎにためだと言われ、怒りの表情を浮かべた京は阿蓮に向かって突撃した。

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