土属性VS土属性(3)

 阿蓮は一瞬、目の前にいる京の言葉が理解できなかった。


「今……決闘と言ったか? 何でいきなり? 俺とお前は多分初対面だと思うが?」


「そうだ! 確かに俺とお前は初対面だ。だが俺のことをよく知っているぞ!」


 京は阿蓮の言葉に大声で答える。


「射国阿蓮! いや、土属性の爆弾魔マッド・ボマー! お前はその優れた力で数多くの悪霊体デモナスを退治してきたが、その度に周囲に大きな被害を出してきた! これはとても許せることではない!」


「あー……」


 阿蓮は京の言葉に何も言い返すことができず、気まずそうに頬をかいた。彼を初めとする五大魔狂の五人が、悪霊体退治の任務で周囲に多大な被害を出してきたのは否定できない事実であったからだ。


「それで? 決闘を申し込んだのは、昔俺達五大魔狂がお前の故郷は破壊した敵討ちか?」


「違う! 俺とお前は初対面だと言っただろう!」


 これまでにも阿蓮達五大魔狂と悪霊体との戦闘の余波で故郷である都市を破壊され、それを理由で阿蓮達を恨む者達は大勢いた。だから目の前にいる京も、彼らと同じ故郷を自分達に破壊された者だと阿蓮は思ったのだが、京は阿蓮の言葉を否定する。


「さっきも言ったが、悪霊体を退治すると同時に周囲に大きな被害を出してきたことはとても許せることではない! お前の、五大魔狂のしてきたことは俺達他の陰陽師の評判を落としている! そ、それに…!」


 京はそこまで言うと頬を僅かに赤くして阿蓮の背後、彼の式姫神サポートユニットである爆竜の女性達を見る。


「いくら自分の式姫神とはいえ、女性達をそんな裸同然の姿で外を連れ歩くなんて! 彼女達がかわいそうだとは思わないのか!?」


「え? ああ、いや、彼女達は……」


 京の言葉は全くの正論といえる怒りであったが、爆竜の女性達の裸の上に前掛け一枚という格好は、彼女達自身が望んだものである。阿蓮はそのことを言おうとしたが、京は彼の言葉を聞く様子はなかった。


「もはや陰陽師としてだけでなく人としても許せない! 射国阿蓮! 改めてお前に決闘を申し込む!」


「ちょっと貴方! いい加減にして!」


「黙って聞いていれば好き勝手言って!」


「お前達、ちょっと落ち着け」


 池ノ伍と路ノ三だけでなく、この場にいる爆竜の女性達全員が殺気のこもった目で京を睨み付けるが、それを阿蓮が手で制する。


「ご主人様? しかしこの人は……」


「いいから落ち着けって」


 爆竜の女性達を黙らせた阿蓮は、珍しくて面白そうなものを見つけたような表情を浮かべて京を見る。


「今どきそんな理由で俺に決闘を申し込むだなんて面白い奴だな。いいぜ。その決闘、受けるよ。ただし何処で戦うのかはこちらで決めさせてもらうぞ?」


「ああ、構わない」


 阿の言葉に京は義憤に燃える目で彼を睨みながら頷く。


 こうして射国阿蓮と加登京、二人の陰陽師の決闘が決まったのだった。

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