三度目の夢(2)

 自宅である温泉旅館で朝食を食べ終えて身支度を整えた阿蓮は、爆竜の一族と初めて出会った湖、そこに建設した星面金剛専用の停泊施設へと向かった。そしてその途中で、温泉旅館と停泊施設の間にある爆竜の一族の村の一つに立ち寄ると、村にいる爆竜の女性達が阿蓮に気づいて笑顔で挨拶をしてくれた。


「あっ、ご主人様だわ。おはようございます」


「おはようございます。ご主人様」


「おはようございます。何かご用があれば何でも言ってくださいね」


「皆、おはよう」


 笑顔で挨拶してくれる爆竜の女性達に阿蓮も笑顔を浮かべて挨拶を返す。


 式姫神サポートユニットである爆竜の一族が阿蓮に向けている好意と忠誠心は本物で、彼女達は彼のためなら死をも恐れず戦い、例えこの場でその魅力的な身体を玩具のように弄ばれても、恨むどころか歓喜するか羨むだろう。そんな自分を心から慕って尽くしてくれる爆竜の一族の姿を見る度に、阿蓮は嬉しさを感じながら彼女達に感謝していた。


 だからこそ阿蓮は、自分のためだけでなく爆竜の一族のためにもアリュウの開発を進めようと新たに決意する。そしてそれには多額の資金が必要なのだが、今の彼にはその持ち合わせがなかった。


 敵味方から恐れられる強力な五人の陰陽師、五大魔狂の一人として報償金が高額な悪霊体デモナス退治の任務ばかりをやっていた阿蓮だが、戦闘の度に周囲に被害を出して賠償金を支払っていたので、貯蓄はそれ程多くない。そこに星面金剛の整備、温泉旅館や停泊施設の建設、爆竜の一族専用の式着神アーマーユニットの購入と、少なくない出費が重なり貯蓄のほとんどが無くなってしまったのである。


 資金不足という問題を解決するため阿蓮は、爆竜の一族の村を後にして星面金剛の操舵室へ向かうと、自分が所属している神聖ヤマト帝国の陰陽師を統括する機関、陰陽寮のデータベースにアクセスして手頃な任務がないか探し始める。阿蓮が星面金剛の操舵室の中央にある操縦席に座って近くの機器を操作すると、モニターが陰陽師の任務に関する情報を映し出す。


「やっぱり悪霊体退治の任務をやった方が手っ取り早いか……」


 悪霊体退治の任務は数ある陰陽師の任務の中でも報償金が高く、運が良ければ拘束期間も短くすみ、何よりやり慣れている。そう考えた阿蓮が操縦席の機器を操作して、モニターに悪霊体退治の任務がいくつも映し出される。


「さて、どれにしようかな? できるだけアリュウに近い場所がいいんだけど」


「ご主人様、防衛の任務をするのですか?」


「さっきは悪霊体退治の任務をすると言っていませんでしたか?」


 阿蓮がモニターに映し出された複数の任務のうちどれを受けるか考えていると、お供として連れてきた十人いる爆竜の女性の内の二人、射ノ伍と生ノ三が彼の後ろから任務の情報を見ながら聞いてきた。現在星面金剛の操舵室には、阿蓮の他に十人の爆竜の女性達がいて、彼女達は朝に温泉旅館の一室で目覚めた時からずっと阿蓮の側についてきていた。


 ちなみに射ノ伍と生ノ三を含めたここにいる十人の爆竜の女性達は、昨夜阿蓮に抱かれたことによって自分達の名前を得ており、彼女達の首には自分の名前、村の名前と番号の組み合わせを刻んだ手作りの標札がかけられているのが見えた。

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