この「衣」は少し違う(2)
「それじゃあ服はそのままでいいんだな?」
「はい。構いません」
阿蓮が改めて確認すると射ノ一は、今の裸の上に前掛け一枚だけという格好でいいと頷き答える。
「……そうか。お前達がそれでいいんだったら、もういいか」
「あっ。普段着はこれで構いませんけど、着る物で興味があるものが一つあります」
爆竜の一族の格好はとても魅力的で阿蓮も気に入っており、本人達がこの格好のままでいいと言うのならこれ以上何も言うことはないと彼が考えていると、突然射ノ一がそんなことを言い出した。
「興味があるもの? 何か着たいものがあるのか?」
「はい。これは私だけでなく爆竜の一族全員が興味を持っています」
阿蓮の質問に射ノ一は答えると、自分達が興味を持っているものが何か言うのだった。
「それじゃあ、呼び出すけどいいか?」
『『はいっ!』』
射ノ一の住居で彼女と話をしてからしばらくした後、阿蓮は村から少し離れた草原で後ろを振り返って話しかける。振り返った彼の視線の先には射ノ一だけでなく、数十人の爆竜の女性達の姿もあり、阿蓮の言葉に彼女達は揃って返事をする。
「では……
「おお……これが……!」
阿蓮が自分の星面金剛に指示を送ると、星面金剛の倉庫にあった「ある物」が彼の目の前に転送されて、それを見て射ノ一を初めとするこの場にいた爆竜の女性達が感動したような声を上げる。
星面金剛の倉庫から阿蓮の前に転送されたのは、全長三メートル程の巨大な全身甲冑であった。
神聖ヤマト皇国が
操縦方法は「意識を他の物質に移して操る」という
式着神は改造は装甲と内蔵されている式器神を交換するだけなので非常に容易なため、一部の陰陽師は式着神を自分に合うように徹底的に改造して、
阿蓮も星面金剛では入り込めない都市部などでの戦闘では式着神を使っており、今転送した式着神は彼が長年改造を重ねて使い込んできたものであった。
「これがご主人様の式着神……」
「何て逞しいんでしょう」
「装甲をよく見れば分かる無数の細かい傷……。恐らくこの式着神はご主人様と一緒に数々の戦場を潜り抜けてきたのでしょうね……。なんて羨ましい……」
爆竜の女性達は瞳を輝かせて式着神の周りに集まって観察をしていた。その様子は流行の服を見ている女性のようにも見えるのだが、その見ているのが全長三メートル程の無骨な全身甲冑というのは少し違うのではないかと阿蓮は思うのであった。
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