この「衣」は少し違う(1)

 阿蓮が用意したナベミは、射ノ一だけでなく爆竜の一族の全員に気に入られ、彼女達の村の周りではナベミを育てる畑を作るために式祈神スキル「焼泥」で地面を爆破する音が連日鳴り響いた。


 そして阿蓮が射ノ一にナベミを渡した日から三日後。順調に畑が作られているのを見て阿蓮は、ナベミと同じ遺伝子技術で作られた栽培が簡単で味も良い植物を射ノ一達に渡すか、今度こそ彼女達のための住居を建てるか考えていると、その途中であることである事に思い至る。


「待てよ……。『住』に『食』と言ったら、次は『衣』の方がいいのか?」


 人間が生活するのに必要な要素である衣食住のうち、食と住に手をつけたのだから今度は衣……つまり爆竜の一族の服装、裸の上に前掛けを一枚羽織っただけという格好に、何か改善すべき点がないか考えようと阿蓮は思った。そして早速彼は爆竜の一族のまとめ役である射ノ一の元まで行って、自分達の服装について何か問題や不満がないか聞いてみたのだが……。


「いいえ。全くありませんね」


 と、即答であった。


 むしろ何故そんなことを聞いてくるのか分からない、といった表情を浮かべる射ノ一に見られて阿蓮は困惑しながら彼女に話しかける。


「え……? そうなのか? 本当に恥ずかしいとか、防御力がないとか、そういう問題や不満はないのか?」


「はい。全くありませんね」


 阿蓮の言葉に射ノ一は再び即答すると、前掛けの上から分かるくらい盛り上がっていて、前掛けの左右から魅力的な横乳が見える胸を張って説明をする。


「ご主人様。私達爆竜の一族はご主人様のために作られた式姫神サポートユニット、生物兵器です。ですから常人よりもずっと身体は丈夫ですし、怪我を負っても身体が千切れない限りは時間が経てば完治します。更に言えば私達が得意とする戦いからは『焼泥』を利用した格闘術で、中途半端な防御力のために動きが鈍くなる服装はかえって邪魔なのです」


「なるほど……?」


 射ノ一の話を聞いて阿蓮は納得したように頷く。


 確かに爆竜の一族、式姫神が作られる最大の目的は、陰陽師と共に悪霊体デモナスと戦うこと。それなのに戦いの長所を殺す衣装をすすめるわけにはいかないだろう。


 自分の主人の理解を得られた事を嬉しく思った射ノ一は、一つ頷くと説明を続ける。


「それと恥ずかしくないのかという話ですが、私達はご主人様から授かったこの身体と容姿を誇っており、それを効果的に見せれるこの前掛け一枚という格好も気に入っています。……ご主人様だって私達のこの格好を気に入ってくれているでしょう?」


「う……。いや、それは、まぁ……」


 射ノ一に聞かれた阿蓮は視線を逸らして言葉を濁した。彼女の言う通り、彼も爆竜の一族のほとんど裸の格好を目の保養にして気に入っていたからだ。

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