まずは「住」から(2)
阿蓮達がアリュウに帰還した翌日。阿蓮は村から適当に選んで連れてきた二十人くらいの爆竜の女性達と共に、建築用のロボットによって僅か一日で建てられた、これから自分が暮らす家の前に来ていた。
阿蓮の家は以前彼が
「ここって、昨日までただの荒地だったよね……?」
「うん……。それなのにたった一日でこんな大きな家ができるだなんて……」
「凄い……。こんなに立派な家なんて初めて見た……」
「私も。とても頑丈そうでここなら何百年でも住めそう」
阿蓮に連れてこられた爆竜の女性達は全員、たった一日で建てられた温泉旅館を呆然とした顔で見ていた。建てるまでにかかった時間のこともあるが、今まで原始的な住居で暮らしてきた彼女達はここまで立派な造りをした建物を見たのが初めてで、驚きを隠せずにいたのだった。
「とりあえず中も見てみるか。皆、行くぞ」
阿蓮はそう言うと、爆竜の女性達を連れて温泉旅館の中へと入って行く。それから一通り温泉旅館の部屋の様子を見て周り、特に目立った不備はなくてようやく人並みの生活環境が整ったことを確認した阿蓮は満足気に頷く。
「うん。中々良い出来じゃないか。……さて、次はいよいよ、だな」
『『………?』』
楽しそうな、それでいて興奮しているのが笑みを浮かべて呟く阿蓮に、爆竜の女性達は首を傾げるのだが、彼は特に説明することなく彼女達を連れて温泉旅館の奥にある大部屋へと向かう。そして大部屋の中にある光景を見て、爆竜の女性達は目を大きく見開く。
「ええっ!? これって……?」
「温泉!?」
阿蓮達がやって来た大部屋……いや、大浴場で爆竜の女性達は、石造りの湯船を満たしている湯の懐かしい香りを嗅いですぐに、その湯がただの湯ではなく天然の温泉だと気づく。
「その通り。これはお前達が以前から浸かっていた温泉そのものだ」
爆竜の女性達の言葉に阿蓮は自慢するような顔で頷く。
元々ここにあった山には温泉が湧いていて、そこは爆竜の一族が疲れを癒す場として愛用していた。だから阿蓮はここに自分が暮らせて、それと同時に爆竜の一族が疲れを癒せるこの温泉旅館を建てようと考え、こうして大浴場に温泉を引いたのだ。
「これから疲れを癒す時はこの温泉旅館で温泉に入ればいい。村に帰ったらその事を他の爆竜の一族に伝えておいてくれ」
『『…………!?』』
温泉は爆竜の一族の数少ない娯楽だったようで、阿蓮の言葉にこの場にいる爆竜の女性達は皆、歓喜の表情となって喜んだ。それを見て気分を良くした阿蓮は、口元に笑みを浮かべると彼女達に話しかける。
「それじゃあ、せっかくだから入ってみるか。……ここにいる皆で」
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