十年ぶりの共闘(6)
「凄い……」
光線銃などで武装した数十人の敵を前にしても臆する事なく攻撃を仕掛け、次々と敵を吹き飛ばす、あるいは斬り捨てていく阿蓮と荒命の姿は、これまでに数多くの悪霊体を倒してきた歴戦の陰陽師と言えた。しかし……。
「ねぇ? ちょっとあれ……」
「危なくないの?」
阿蓮と荒命の戦う姿を見て違和感を感じた爆竜の女性達が呟く。
爆竜の女性達は悪霊体との戦闘は皆無だが、アリュウで大型肉食獣を集団で狩った経験ならある。だからこそ阿蓮と荒命の戦いに危険を覚えたのだ。
集団での戦いでは同士討ちを避けるために味方同士の位置や攻撃のタイミングを把握することが重要なのだが、阿蓮と荒命の二人からはお互いに気をつけている様子が全く見られなかった。更に言えば阿蓮の
「もらった!」
「危ないな。荒命、お前もっと周りを見て剣を振れ……よっ!」
荒命の剣はもはや刃を出鱈目に繋げた鞭のようになっており、彼が振るうと刃の鞭は宇宙海賊の死体を数体引き裂いてそのまま阿蓮をも巻き込もうとしたのだが、阿蓮は最小限の動きで刃の鞭を避けると荒命の近くにいる宇宙海賊の死体を式祈神で爆破した。
「おっと? 阿蓮よ。その台詞、そのままお前に返す……ぞ!」
「いや、実際、今も、滅茶苦茶に、剣、降ってる、……だろ!?」
阿蓮が式祈神で宇宙海賊の死体を爆破した時に生じた爆風と爆炎、それらを何でもない顔で避けた荒命は阿蓮ごと彼の近くにいる宇宙海賊の死体に向けて刃の鞭を振るい、阿蓮を味方から繰り出される高速の斬撃を避けながら別の宇宙海賊の死体を式祈神で爆破していく。
それはあまりにも異様な共闘の姿だった。同士討ちをしないようにお互いに気をつけて協力しあうのではなく、協力など最初から考えておらず自分の攻撃が当たったら向こうが悪いと言わんばかりの、共闘というよりお互い利用しあっていると言った方が正しい阿蓮と荒命の戦う姿に爆竜の女性達は言葉を失っていた。
「相変わらずだな。その敵も味方もまとめて斬ってしまう剣は」
「お前もな。その爆撃、敵よりも巻き込んだ味方の方が多いのではないか?」
お互い敵も味方もお構いなしに式祈神を使って戦いながら、阿蓮と荒命は昔を懐かしむように軽口を叩き合う。この時の二人の表情はここが戦場であることを忘れているかのように落ち着いたものであった。
「でもまあ、お互い十年前と同じで何よりだ」
「そうだな。以前と同じように戦えるのは正直助かるな」
そこで今まで宇宙海賊の死体を攻撃しながら会話をしていた阿蓮と荒命は、お互いの目を見て同時に同じ言葉を言い放つ。
「「お互い、死んでも恨むんじゃねぇぞ!」」
その言葉を合図にしたように、阿蓮と荒命は残り少なくなった宇宙海賊の死体に向かって、今まで以上の速さで突撃をするのだった。
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