十年ぶりの共闘(5)
「はははっ! これは驚いたな!」
「まさか本当に戦いが起こるとは! なあ、阿蓮? お前はこれをどうやって予測した?」
「居酒屋でも言っただろ。後で説明するって。あと、これも言ったと思うけど、長くなる上に信じられない内容だからな?」
荒命が自分の隣に立つ阿蓮に聞くと、彼は数十人の宇宙海賊の死体から目を離さずに言って、荒命はその言葉に頷いてみせた。
「構わんよ。どんな長話のホラ話でも聞いてやるさ。それよりも今は……」
「ああ、今はコイツらを全員……」
「一人残らず吹っ飛ばす!」「一人残らずぶった斬る」
そこまで言って阿蓮と荒命は獰猛な笑みを浮かべると、数十人の宇宙海賊の死体に向かって突撃する。
「まずは動きを止める!」
阿蓮が自分の
「斬り捨て……御免!」
宇宙海賊の死体に駆け寄った荒命が右腕を振るうと、素手であったはずの彼の右手には抜き身の刀が一本握られており、刀は宇宙海賊の死体を何の抵抗もなく両断した。そして荒命はそれで止まることなく、次々と別の宇宙海賊の死体を斬り捨てていくのだが、死体を斬る度に彼の刀の刀身が長く、厚く、そして歪に変形していく。
式祈神「
荒命が目覚めた、斬った対象の一部を取り込んで刀身の形状を変えていく剣を作り出す金属性の式祈神。
この式祈神で作られた剣はどれだけ刀身が変化して重量が増えても、使い手である荒命には刀一本分の重量しか感じさせないため軽々と振り回すことができる。更に斬る度に刀身の形状と重量が変化すると言うことは、斬撃の威力が増して間合いも広くなる上に、太刀筋が常に変化するので攻撃を見切られにくいということ。
(荒命の野郎……。訓練時代の頃からそうだ。相変わらず人を便利に使いやがって)
阿蓮は自分の式祈神で動きを封じた宇宙海賊の死体を次々と斬り捨てていく荒命を見て、心の中で舌打ちをする。
刀一は荒命のような白兵戦を得意とする陰陽師にとっては、まさにうってつけの式祈神と言える。だがその真価を発揮するには当然ながら剣が相手に届く距離まで近づく必要があり、相手の動きを止めることにも使える阿蓮の式祈神は、相手に近づくまでの時間を稼ぐのに非常に便利であった。
だから荒命は陰陽師となったばかりの訓練時代に、同じく陰陽師となったばかりの阿蓮に一緒に悪霊体退治をしないかと持ちかけたのである。そしてそれが切っ掛けで生まれた腐れ縁は長い間続き、こうして今も阿蓮と荒命は十年ぶりに同じ戦場で戦っているのだった。
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