十年ぶりの共闘(3)
阿蓮が荒命から食事の誘いを受けてから数時間後。彼は爆竜の女性達と一緒に、戦事略決の近くの宙域にある宇宙居住地の中で営業している居酒屋に来ていた。
「それにしても変わった所を選んだものだな?」
荒命は居酒屋で出された酒を一口飲んでから周りを見ながら阿蓮に向かって言う。
阿蓮達が今、宇宙居住地の中の大通りから離れた居酒屋、その二階の個室を貸し切りにしており、この居酒屋を選んだのは阿蓮であった。食事を提案したのは荒命だがどの店で食事をするのかは決めておらず、阿蓮に意見を求めたらこの居酒屋に決まったのだ。
確かに居酒屋が出す食事と酒は決して不味くはないが、それでももっと旨い料理と酒を出して大通りに近い店は探せばいくらでもある。何故わざわざ大通りから離れたこの居酒屋に決めたのか荒命が阿蓮に聞くと、阿蓮は酒を飲みながら何でもないように答える。
「別にいいだろう? 客が少ないお陰でこの部屋を貸し切りにできて、彼女達も連れてこれたんだから」
「……まあ、中々花のある席だとは思うがな」
この居酒屋の個室には阿蓮と荒命だけでなく十人の爆竜の女性達も同席していて、彼女達は食事を食べながら阿蓮と荒命に食事の皿を差し出したり酒を注いでいた。半裸の巨乳美女達に酌をされて荒命が満更でもないように言うともう一度酒を口にする。
「確かに、客が大勢いる店ではこの爆竜の女性達が入れず、この光景はなかったな」
(それだけが理由じゃないけどな……)
酒を飲んで上機嫌になった荒命の言葉を聞きながら、阿蓮は個室の窓から外の景色を見て心の中で呟く。
阿蓮達がこの居酒屋に決めたのは、あまり客がいなくて爆竜の女性達を連れ込める個室を確保できる以外に、もう一つの理由があった。その理由とはここが宇宙船が出入りする宇宙港のすぐ近くで、個室の窓から宇宙港の様子が観察できることである。
(まさか荒命について行ったら、夢と同じ宇宙居住地に来ることなるなんてな)
荒命に呼ばれて阿蓮達がやって来た宇宙居住地は、阿蓮が夢で見た謎の宇宙船の襲撃を受ける宇宙居住地であった。アリュウで夢と全く同じ出来事が起こったという体験をした阿蓮は、これを単なる偶然と片付ける気にはならず、何が起こってもすぐに行動に移せるように今いる居酒屋で食事をとることに決めたのだ。
「阿蓮。さっきから外を気にしているようだが、外に何かあるのか?」
「ん? いや、ちょっと………っ!?)
阿蓮が窓から外の景色を見て自分の見た夢について考えていると荒命が話しかけてきて、それに対して阿蓮が何か言おうとした時、宇宙港の方向から警報が聞こえてきた。
「警報? 何だ?」
「もしかしてアリュウと同じように、本当に夢の通りの展開かよ?」
突然の警報に荒命が立ち上がるとその近くで阿蓮も立ち上がり、荒命はこのことを予想していたような阿蓮の呟きに疑問を抱いた。
「阿蓮? お前何か知っているのか?」
「あー……。話せば長くなるし、言っても信じてもらえないと思うから説明は後にする。ただ今言えるのは……」
荒命に聞かれて阿蓮は最初、何と答えたらいいか迷っているような表情だったが、すぐに肉食獣のような笑みを浮かべて次の言葉を口にする。
「もしかしたらこの後、戦闘になるかもしれないってことだな」
「………ほう?」
阿蓮の言葉に荒命も肉食獣のような笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます