十年ぶりの共闘(2)
(さて……一体何をどうやって調べるか。多分だけど、やっぱりあの夢は何らかの
陰陽師は複数の式器神を持っており、それが記録している式祈神と自身が目覚めた式祈神を組み合わせることで、本来のとは違う効果を生み出すことができる。その式器神同士が干渉しあって、陰陽師も予想していなかった組み合わせが起こる例は、珍しいが確認されていた。
そして演算強化系の式祈神とは、自らの脳の思考速度を強化して無意識化に高速演算領域を構成し、自分の周囲の状況を初めとする様々な情報を使って演算を行い、これから起こる出来事やそれに自分が関わった場合の展開を予測する式祈神である。直接戦闘に役立つわけでもないし、使う陰陽師によってその精度は大きく変わるのだが、それでも多くの陰陽師は演算強化系の式器神を自分の
阿蓮は演算強化系の式器神が他の式器神に干渉されて今までとは別の効果を発揮して、例の未来を予知しているような夢を見せているのだと考えたのだ。
それから阿蓮はこれまで発現された演算強化系の式祈神の一覧を一通り目を通したのだが、どれも彼が見た夢とは違うような気がした。
(どれも違うな……。一番近いのは相手の動きを先読みする幻視だけど、これで分かるのは数秒先の未来だけだ。俺が見た夢は相手だけじゃなくて周り全体の数日先の未来を予知していた……)
阿蓮が自分の見た夢について調べようと思ったのは、本当に夢が未来を予測する式祈神で、それを制御できればこれからの陰陽師としての活動に有利になると思ったからだった。しかしある程度分かっていたこととはいえ、自分が求める情報が得られず落胆した阿蓮は、ある論文の情報を見つけた。
(これは……『
阿蓮が見つけたのは式祈神に関する論文で、本来陰陽師が目覚める式祈神は一人に一つだけだが、死に直面する等の劇的な状況に直面することで別の新しい式祈神に目覚める可能性があるという内容であった。
(新しい式祈神……死に直面する等の劇的な状況、か……)
そこまで考えたところで阿蓮は、十年前にアリュウで未知のウィルスに感染した出来事を思い浮かべたのだが、すぐに首を横に振る。
(馬鹿馬鹿しい。死にかけたら新しい式祈神に目覚める? それだったら、これまでに
阿蓮がこれまで何百何千と悪霊体と戦ってきた記憶を思い出し多重能力者に関する論文を否定していると、彼の持つ携帯端末から呼び出し音が聞こえてきた。携帯端末の画面を確認すると一通の連絡文を着信しており、連絡文の送り主は荒命であった。
「荒命からか……まあ、いいか」
荒命からの連絡文は、せっかく十年ぶりに再会したのだから近くの宇宙居住地で一緒に食事をしないかという内容だった。これ以上ここで調べても自分の知りたいことは分からないと感じていた阿蓮は、了承したという返事を荒命に返すと爆竜の女性達と共に情報閲覧室を出た。
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