方針変更(2)

「………」


 図星だったのか視線を逸らす荒命に阿蓮が再びため息を吐く。


「まったくお前は……。こっちは十年間闘病生活を送っていたのに何をやっているんだよ?」


「闘病生活? 一体どういうことだ? というかお前はどんな任務をしていたのだ?」


「俺が与えられた任務は未確認宙域の調査だ。そこで人が住める惑星を見つけたのはいいが、未知のウィルスに感染してな。つい最近までコールドスリープをしていたんだよ。それで彼女達は爆竜の一族といって、コールドスリープをする前に製造した式姫神サポートユニットが単為生殖で増やした子孫だ」


「何っ……!?」


 荒命に聞かれて阿蓮がこの十年間の出来事を簡単に説明して爆竜の一族を紹介すると、それを聞いた荒命が驚いた顔となる。


「ちょっと待て! 人が住める惑星と言ったか!? しかも式姫神の単為生殖!? ということは、その惑星にはそこのお嬢さん方みたいな美しい女性が大勢いるってことか?」


「そうだ。全員同じ姿の巨乳美人が千二百人以上いるな」


「ふざけるな!」


 阿蓮が自慢するような顔で質問に答えると、荒命が表情を驚愕から怒りに変えて怒鳴る。


「コールドスリープから目覚めたら、開発もせずに最初から住めて、美女だらけの惑星の支配者になっていた!? 何だ、その男にとって都合のいい話は? 拙者とは雲泥の差ではないか! 不公平ではないか! 何故だ!?」


「何故って………普段の行いの差?」


「ふざけるな!」


 荒命の問いに阿蓮が少し考えてから答えると、再び荒命が怒鳴る。


「普段の行いの差って何だ!? 尚更納得できんぞ! 阿蓮、お前はさっき拙者がビルをみじん切りにしたことを言っていたが、悪霊体デモナスと一緒に千年以上の歴史を持つ都市を壊滅寸前まで吹き飛ばしたお前に比べたら断然マシだぞ!?」


「ふざけるな。悪霊体と一緒に神聖ヤマト皇国が重要文化遺産に指定した遺跡を叩き斬ったお前より十倍マシだ、馬鹿」


「馬鹿はお前だ。悪霊体と一緒に他の陰陽師の式艤神スターゲイザーを十隻以上爆破したお前より百倍マシだ、阿呆」


「阿呆はお前だ。悪霊体と一緒に軍の研究施設を真っ二つにして、そこで研究されていた殺人ウィルスを惑星中にばら撒きそうになったお前より千倍マシだ、間抜け」


「間抜けはお前だ。悪霊体と一緒に……」


『『………!?』』


 自分達がこれまでしでかした事件を言いながら罵り合う阿蓮と荒命。一般常識に疎い爆竜の女性達は二人が何を言っているのかいまいち分からなかったが、まだ土下座の体勢でいる三人の陰陽師は事件の大きさに身体を震わせていた。


 それから数分後。阿蓮と荒命もお互いある程度言いたいことを言って落ち着いたところで、阿蓮が荒命に話しかける。


「それで荒命? お前の任務はいつまで続くんだ?」


「うむ。陰陽寮から百人の陰陽師を鍛え直せば任務完了と言われていて、この三人で丁度百人目だ。いや、この十年は本当に大変であった。最初は一日も経たずに逃げ出す奴らばかりであったからな」


「それはそうだろうな」


 荒命の言葉に阿蓮は、むしろ十年で死者を出すことなく百人の陰陽師を鍛えたと思った。

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