金属性の切り裂き魔(1)

 惑星「戦事略決」。


 そこは陰陽寮が管理している惑星の一つで、丸ごと全てが陰陽師の技能や兵器を研究開発する研究所と工場となっている惑星である。神聖ヤマト皇国の意向により、陰陽師関連の研究施設や工場はこの惑星にしかなく、陰陽師の知識の全てが集まった星といっても過言ではない。


 阿蓮達が戦事略決にある工場が集まっている大陸へ行くと、そこには数百隻の式艤神スターゲイザーが宙に浮かんで並んでおり、それを星面金剛の操舵室から見た爆竜の女性達が驚いた声を上げる。


「うわぁ……!? 星面金剛がたくさん……!」


「本当……でも、色とか細かい所が違っているような?」


「それはそうだろ。星面金剛だけじゃなく式艤神は全部基本は同じだ」


 モニターに映る数百隻の式艤神を見ながら話す爆竜の女性達の言葉に阿蓮が答える。


 阿蓮の言う通り、陰陽師に支給される式艤神は全て、人型の戦闘兼航行ユニットの背中に円盤型の居住ユニットを取り付けた機体で、最初は外見も性能も周りと同じである。そこから自分が目覚めた式祈神スキルと相性の良い式器神ウェポンユニットや気に入った外装を取り付けていって、他の陰陽師の式艤神との違いを出していくのだ。


 更に言えば高い実績があったり特殊な才能を持つ陰陽師には、試作品や専用の装備を与えられることがあり、そういった特別な装備を式艤神に取り付けることは陰陽師の間では一つの自慢となっていたりする。


「あそこにあるのは俺達と同じ、整備をするためにやって来た陰陽師の式艤神だ。式艤神の整備を出来るのはこの星しかないから毎日あれだけの数が集まるんだ。……ああ、そうだ。式艤神を工場に預けたらすぐに移動するからな」


 阿蓮は爆竜の女性達に思い出したように言うと、整備の予約をしている工場に星面金剛を向かわせた。




 数時間後。星面金剛を工場に預けた阿蓮は爆竜の女性達と一緒に高速航空機を使って、工場が集まっている大陸とは別の、式祈神関係の研究所が集まっている大陸にやって来た。


「ご主人様? ここには一体何の用で来たのですか?」


「ん? ああ、ちょっと調べたいことがあって……」


「おいおい! 見ろよ! 裸の女達がいるぜ!? しかも全員美人じゃねぇか!」


 高速航空機を降りて街を歩いていると爆竜の女性の一人が阿蓮にこの大陸に来た理由を聞き、それに彼が答えようとした時、男の声が聞こえてきた。声が聞こえてきた方を見ると、阿蓮と同じ陰陽師の制服を着た男が三人、いやらしい笑みを浮かべて爆竜の女性達を見ながらこちらに向かってきていた。


(あー……。やっぱりこうなったか……)


 阿蓮はこちらへ向かってくる三人の陰陽師を見て、心の中でため息を吐いた。


 他の男達に爆竜の女性達の肌を見せたくなかった阿蓮は、彼女達に留守番か服を着替えることを頼んだのだが、爆竜の女性達は全員それを強く拒否した。それで仕方がなく爆竜の女性達を普段の裸の上に前掛け一枚という格好で連れ歩き、今まで注目を集めていたが声をかけられる事なく安心していたらこの有様である。


「おい、お前。その女達はお前の式姫神サポートユニットか? そんなに沢山いるんだったら、何人か俺達にく「断る」……ああっ!?」


 阿蓮が心の中でため息を吐いていると三人の陰陽師の一人が話しかけてきたが、彼はその言葉を最後まで聞かずに断る。すると三人の陰陽師は怒りの表情を浮かべ、威嚇するような目で阿蓮を見る。


「おいおいおいっ!? 今何て言った? 断る? 断るって言ったかお前?」


「俺達が誰だか知っているのか、テメェ? 俺達はなぁ? 戦闘向きな式祈神に目覚めただけじゃなく、『あの人』の地獄の特訓にも耐えた武闘派なんだぜ?」


「あんまり調子に乗ってると痛い目にあわせるぞ、オイ? それが嫌だったら、その女達をよこしやがれ」


(ふ〜ん……。コイツら、よりによって爆竜達を、俺の巨乳美人達を寄越せと言いやがった……。さっきは聞き間違いかと思って見逃してやったが、こうもハッキリ言われたら仕方がないな。うん、仕方がない。……………ブッッッコロス!)


 どうやらこの三人の陰陽師は腕に自信があるようで、高圧的な態度で阿蓮に爆竜の女性達を自分達に寄越せと言い、それを聞いた彼は三人の陰陽師を「敵」と認識して殺意に満ちた笑みを浮かべた。


 そしてその一分後。阿蓮に喧嘩を売った三人の陰陽師は全身黒焦げとなって地面に這いつくばっていた。言うまでもなく阿蓮の式祈神である焼泥の爆発によるものである。


「……それで? 誰が、誰を、痛い目にあわせるって?」


「ず、ずびばぜんでした!」


「つ、強ェ……!?」


「もっ! もう勘弁してください!」


 阿蓮が聞くと、三人の陰陽師は地面に這いつくばったまま必死に命乞いをする。そして騒ぎを聞きつけて集まった他の陰陽師達は、阿蓮の正体に気付くと顔を青くして驚いた後、三人の陰陽師に同情するような、あるいは馬鹿にするような視線を向けるのだった。

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