望まれぬ帰還(2)

 陰陽寮から十年前に与えられた任務、未確認宙域の調査の完了を認めるという通達書を受け取ってから数日後。阿蓮は自分の補佐である十人の爆竜の女性と共に、星面金剛に乗って宇宙に出ていた。


「これが、宇宙……」


「まるで夜空に包まれているよう……。凄い景色ですね……」


(こっちも充分凄い景色だけどな)


 星面金剛の操舵室では、爆竜の女性達が十人ともモニターが映す宇宙の景色に釘付けになって感想を口にして、阿蓮はそんな彼女達を見ながら心の中で呟く。


 爆竜の一族の衣装は、裸体の上に直接羽織った黒い前掛け一枚。つまり阿蓮の前でモニターを見ている爆竜の女性達は今、その豊かな巨乳に負けないくらい肉付きが良い尻を彼に向けていて、加えて言えば腰から生えている尻尾が大切な部分を隠しているのが魅力を更に引き上げていた。


(当たり前のことなんだけど、尻って胸と同じで丸いんだよな……。俺は断然胸派っていうか巨乳派だけど、たまには尻もいいかもしれないな……)


 阿蓮が爆竜の女性達の一列に並んだ尻を眺めながらそんなことを考えていると、彼女達の一人が彼の方に振り返って質問をしてきた。


「それでご主人様? 何故急に宇宙に出たのですか?」


「ん? ああ、一度、陰陽寮の惑星に戻ろうと思ってね」


 陰陽師になった者は全員、基本的に陰陽寮が管理している惑星で生活することが義務付けられており、任務以外での他の惑星への移動が制限されている。しかし今の阿蓮のように自分の惑星を所有している場合、所有している惑星を拠点として自由に活動する権利が認められているのだが、彼には陰陽寮が管理している惑星に戻る理由があった。


 阿蓮が陰陽寮の惑星に戻るつもりだと質問をしてきた爆竜の女性の一人に答えると、今度は別の爆竜の女性が聞いてきた。


「陰陽寮の惑星ですか? そこに何かあるのですか?」


「何かあるって言うか、星面金剛の整備をしに行くんだよ。コールドスリープをしていた十年間、ずっと放っていたからな。……あと、それに一つ調べたいことがあるしな」


 爆竜の女性の質問に答える阿蓮だったが、最後の言葉だけは自分にしか聞こえない小声で言い、それに対して爆竜の女性が首を傾げる。


「ご主人様?」


「いや、何でもない。それより、そろそろ亜空間航行の準備が終わる。そうなったら外の景色も見えなくなるぞ?」


「そうなのですか? では最後に私達の星をしっかり見ておきます」


 阿蓮の言葉を聞いて爆竜の女性達は、モニターに映る一つの惑星に目を向けて、阿蓮も彼女達と一緒にモニターの惑星を見る。


 惑星「アリュウ」。


 未確認宙域の調査という任務で発見して陰陽寮、そして神聖ヤマト皇国から正式に所有権が認められた阿蓮の惑星。そして爆竜の一族が単為生殖するのに最適な環境が揃った彼女達の故郷。


 今回阿蓮が陰陽寮の惑星に戻るのは、アリュウを開発するための資材等を購入するためでもあった。


 ちなみに阿蓮の実家である射国家に協力を頼めば、開発はすぐに完了するかもしれないが、阿蓮は自分の実家に協力を頼むつもりはなかった。その理由は、アリュウに住む爆竜の一族を自分以外の男、特に正妻の他に三十人以上の側室を持つ父親に見せたくなかったからだ。


 そんな話をしている間に準備を終えた星面金剛は、瞬間移動系と加速系の式祈神スキルを利用した亜空間航行を開始して、陰陽寮が管理している惑星へと向かうのだった。

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