一人目の再会

望まれぬ帰還(1)

 阿蓮が自身の式艤神スターゲイザー、星面金剛に乗って悪霊体デモナスを退治してから二ヶ月後。いつものように星面金剛の操縦席に座って眠っていた阿蓮は、目を覚まして周囲を見ると嬉しいような呆れたような表情となって呟く。


「まったく……。コイツらは今日もかよ?」


 阿蓮が座っている操縦席の周りでは、十人の爆竜の女性達が床の上で眠っていて寝息を立てていた。この十人の爆竜の女性達は、これから陰陽師としての行動を再開する阿蓮を補佐するために、爆竜の一族が自ら千二百人以上の中から選抜した精鋭である。


 二ヶ月前、悪霊体を容易く爆砕した阿蓮の力を目の当たりにして、更に陰陽師の使命と宇宙の存在を知った爆竜の一族は大いに驚いた。だがそれ以上に陰陽師の補佐をする式姫神サポートユニットの使命を果たせることを喜び、こうして精鋭を選び阿蓮と行動することを望んだ。


 そして爆竜の一族が千二百人から十人の精鋭を選抜した方法は、全部で十ある爆竜の村でそれぞれ行われた勝ち抜き戦方式の試合で、全ての試合が終了するまで半月以上の時間がかかり、阿蓮はその全ての試合を観戦させられた。


 試合の内容は、基本的にお互い式祈神スキルの焼泥を組み合わせた格闘術を使った打撃を加える度に爆発が起こる殴り合いで、常人であれば一試合ごとに死人が出ていただろう。しかし生物兵器である爆竜の一族は、鱗で覆われた恐竜のような手脚だけでなく他の体の部分も常人とは比べ物にならないくらい頑丈だったらしく、爆発が起こる打撃を受けても軽い火傷程度の傷を負うだけであった。


 ……ちなみに、戦うのが全員同じ姿をした巨乳の美女で、攻撃が当たる度に爆発が起こって唯一の衣服である前掛けが破け、魅力的な裸体を晒し合って戦う爆竜の一族の試合は、これ以上なく刺激的でとても子供には見せられなかったとだけ言っておく。


 こうして激しい戦いの末に選ばれた十人の爆竜の女性達は、常に阿蓮の側について行動を共にすることになったのだが、行動を共にしようとしすぎるのも問題だと阿蓮は思った。式艤神の居住ユニットには乗組員が休む部屋があって、彼は爆竜の女性達に眠る時はその部屋を使うように何度も言っているのだが、彼女達は部屋を使おうとせず今のように阿蓮と同じ操舵室で眠っているのだった。


(まあ、これはこれで朝起きる度に幸せな気分になれていいけどな)


 床の上で寝ている十人の爆竜の女性は、寝相で裸体の上に着ている前掛けが乱れていたり、中には寝ている時に前掛けを脱ぎ捨て裸となっている者もいて、そんな彼女達を見て阿蓮は心の中で満足気に頷く。本音を言えば彼もこんな操縦席で寝るのではなく、爆竜達と同じ部屋で一緒に眠りたいのだが、阿蓮には出来るだけこの操舵室にいたい理由があった。


「それにしてもまだ来ないのか? もう連絡を届いているはずなんだが……ん? これは!?」


 阿蓮がそこまで一人呟いた丁度その時、操縦席の近くにある機器が何かを知らせる電子音を鳴らし、それを聞いた彼が慌てて機器を操作すると空中に画面が現れた。


「…………!? よし! よしよしよし! やっと! やっとだ!」


 阿蓮は空中に現れた画面を見て笑顔を浮かべると大声を出して、それにより眠っていた爆竜の女性達が目を覚ますのだが、彼はそれに気づかないくらいに喜び浮かれていた。空中の画面に表示されているのは彼がこの操舵室でずっと待っていたもの、陰陽師を統括する陰陽寮の本部からの通達書で、通達書には阿蓮がこの惑星の所有権を得ることを認めることと未確認宙域の調査任務が終了したことが記されていた。

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