重爆のスターゲイザー(3)

「………!? あ、その……お、お見事でした、ご主人様……。お、終わったのですか?」


 阿蓮の式祈神スキルの威力を目の当たりにして爆竜の女性は半ば呆然と阿蓮に話しかけると、彼は首を横に振って答える。


「いいや。まだだ」


 確かに悪霊体デモナスは跡形もなく吹き飛んだが、それでも悪霊体が放つ不気味な威圧感まだ感じられた。阿蓮は周囲を観察しながら爆竜の女性に説明をする。


「悪霊体の一番厄介なところは体……入れ物を破壊しても、それで終わりとは限らないところだ。式祈神で体を破壊すれば悪霊体の本体にもダメージを与えられるけど、倒しきれなかった場合、すぐに別の体に取り憑いて襲ってくる。……このようにな」


「え? ……なっ!?」


 阿蓮の言葉を合図にしたかのように地面が再び揺れ始め、爆竜の女性が驚きの声を上げる。今度は地面に亀裂が走り、地下から巨大な「何か」が出てくる。


「これは……さっきと同じ? でも大きさが……!?」


 地面から出てきた悪霊体は、先程阿蓮が吹き飛ばしたのと同じ岩と骨の怪物という外見だった。だが爆竜の女性が言ったように、大きさは先程の数倍以上あり、悪霊体が出現により阿蓮達がいる山の半分が崩れた。


「どうやらこの辺りは恐竜達の墓場で、化石が大量にあったみたいだな。悪霊体はそれを利用して取り憑く体を作り、俺がさっき吹き飛ばしたのはその一部だったってことか。……それにしても」


「はい……。なんて巨大で恐ろしい……!」


 新たに現れた悪霊体を見上げる阿蓮の言葉に、爆竜の女性は頷くと震える声で呟く。


 相手より体が大きいというのは、それだけで相手を威圧感を与えることができる。生まれて初めて見る、文字通り山のように巨大な捕食者、悪霊体に見下ろされた爆竜の女性は死を覚悟したのだが……。



「小さいな」



 と、爆竜の女性の隣に立つ阿蓮は、まるで路傍の石を見るような目で悪霊体を見上げて呟いた。


「ご主人様……? 小さい? あの悪霊体が……ですか?」


 爆竜の女性が何を言っているのか分からないという表情で阿蓮を見て聞くと、彼は悪霊体を見上げながら頷く。


「そうだ。俺が昔、仲間達と一緒に、十隻以上の宇宙戦艦に取り憑いて変形合体した悪霊体と戦ったことがある。それに比べたら全然小さいし、迫力不足だな。……まあ、でも? 十年のコールドスリープから目覚めたリハビリには丁度いいかもな?」


 そこまで言うと阿蓮は、獰猛な笑みを浮かべて高らかに叫ぶ。


「『急急如律令緊急発進』! こい! 式艤神スターゲイザー『星面金剛』!」

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