重爆のスターゲイザー(1)

「なっ! 地震か!?」


「ご主人様! こちらへ!」


 地面が揺れて、阿蓮がこちらへ手を差し伸べた爆竜の女性の元へ行こうとした時、何かが割れるような音を聞いた。


 音の発生源は、爆竜の一族がご先祖様と呼ぶ恐竜の化石が埋まっている岩肌。岩肌にはいくつもの亀裂が走っていて、亀裂は音を立てて拡がってきい、やがて岩肌は恐竜の化石ごと轟音と共に崩れてしまう。


「ああっ! ご、ご先祖様が………え?」


 恐竜の化石が崩れたのを見て爆竜の女性は悲鳴のような声を上げるのだが、次に目の前で起こった出来事に思わず言葉を止めた。


 崩れた岩と恐竜の化石。それが宙に浮かび上がって一つに集まり、やがて四本脚の獣のような形にとなったのだ。


「こ、これは……? ご、ご先祖様?」


「いや、違う」


 恐竜の化石と岩が集まってできた四本脚の獣を見て、爆竜の女性が戸惑った声を呟くが、それを阿蓮が即座に否定する。彼は臨戦態勢となって岩と骨の獣を油断無く睨み付けながら、それの正体を口にした。


「コイツは……悪霊体デモナスだ」


 悪霊体。


 それは神聖ヤマト皇国が陰陽師を生み出した理由。自らの肉体を持たず、機械や生物の死骸を操って生物を襲う、全ての生物の天敵と言われる精神生命体。


 行動理由や正体の全てが謎とされている悪霊体だが、生物を襲うのはその生物を殺して魂を捕食するためだという説がある。


 生物の血肉ではなく魂を喰らう捕食者。それが放つ不気味な威圧感を、これまで多くの悪霊体と戦ってきた阿蓮が間違えるはずがなかった。


「悪霊体……? それってご主人様が戦ってきた……そして私達が作られた理由である敵ですか?」


「そうだ。だけど何で悪霊体がこんな辺境の未確認宙域の惑星に……いや、そういうことか」


 悪霊体と戦うために製造された生物兵器、式姫神サポートユニットである爆竜の女性の呟きに頷き答えた阿蓮は、悪霊体がこの惑星に現れたことに疑問を覚えたが、すぐにその理由を理解した。


 悪霊体は生物が生活する場所なら何処にでも現れるが、その中でも特に高度な知性を持つ人類の元に現れる可能性が特に高い。そしてこの惑星にいる高度な知性を持つ人類と言えば爆竜の一族しかいない。それはつまり……。


(要するにアレか? この悪霊体は爆竜の一族を殺すために現れたってことか? 俺の式姫神を? 巨乳で美人で、巨乳で俺好みの際どい格好で、巨乳で俺に絶対の忠誠を誓ってくれている彼女達を? ……………ふざけるな! そんなこと認められるわけないだろうが!)


 そこまで考えた阿蓮は改めて目の前いる岩と骨の獣、悪霊体を倒すことを決意する。


「あまり調子に乗るなよ? この、入れ物を借りないと何もできない寄生虫野郎」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る