土属性が地味とは限らない(4)

(何だか落ち着かないな……)


 阿蓮は周囲を見回して心の中で呟く。彼の周りには爆竜の一族の女性達が数百人といて、その全員がこちらを見ていた。


 爆竜の女性達は髪型や化粧等の多少の違いはあるが全て同じ姿。巨乳で美人な上、裸の上に前掛け一枚だけという過激な服装の、男なら目を必ず奪われる美女達だ。そして彼女達が阿蓮に向けるのは歓喜や敬愛といったこれ以上ない好意的な視線ばかり。


 阿蓮も自分の好みの女性達に好意的な視線を向けられるのは嬉しいのだが、それでも数百人という大人数に囲まれては落ち着かなくなっても仕方がないだろう。だがいい加減、未確認宙域の調査という退屈な任務から解放されたかった彼は、この惑星の調査が終われば任務も終了することを思い出すと気持ちを切り替える。


「質問をしてもいいか?」


「はい。何でもお聞きください」


 昨日今日と自分に話しかけてきた、恐らくはこの場にいる数百人の女性達の代表者だと思われる爆竜の女性の一人に阿蓮が話しかけると、彼女は話しかけられたのが嬉しくてたまらないといった笑顔で返事をした。


「それで一体何を知りたいのですか?」


「俺が聞きたいのは君達が知っているこの惑星の情報。そして君達、爆竜の一族についてだ」


 爆竜の一族は阿蓮が製造した式姫神サポートユニット、正確には彼が一人だけ製造した式姫神が単為生殖によって増やした子孫である。だから阿蓮はこの惑星の調査を終えて任務を完了させた後、爆竜の一族にも次の任務を手伝ってもらおうと考えているのだが、今はまだ彼女達の能力も何も知らない状態だった。


 その為、惑星の情報と一緒に爆竜の一族について阿蓮が聞くと、彼に話しかけられた爆竜の女性だけでなく、話を聞いていた他の爆竜の一族の女性達も頬を紅くして嬉しそうな笑みを浮かべた。


「あら! ご主人様は私達に興味があると!? それならそうともっと早く言ってくれても……。ええ! ええ! ご主人様のお望みなら私達の身体、どうぞじっくりと隅々まで観察してお楽しみください……!」


 爆竜の女性は興奮したようにそう言うと、阿蓮の目の前で自分が着ている前掛けを脱ごうとする。前掛けを脱ぎ始めたのは彼女達だけでなく周囲にいる他の爆竜の一族の女性達もで、中にはすでに前掛けを脱いで全裸となり、阿蓮に自分の裸体を見てもらおうとたわわに実った乳房を前に突き出している者達もいた。


「………!? い、いや! 俺が聞きたかったのは君達がどれだけ動けたり戦えたりするのかってことで、身体のことは……まぁ、また後で……」


 突然裸になろうとする爆竜の一族に、阿蓮は驚きながら最後の方だけ未練のある声で止めようとする。


 正直な話、爆竜の一族の身体がどれだけ柔らかいのか確かめたい気持ちは大いにある。しかし、もしこの場でその「確認」を初めてしまったら、阿蓮は自分が数日間は惑星の調査を忘れてしまう確信があったので、理性を総動員して前掛けを脱ごうとする彼女達を止めたのであった。


「そうですか……残念です……」


(何をやってるんだ俺はぁっ!? 巨乳だぞ!? 見渡す限り確実に胸囲百を超えていて『爆乳』と呼んでも過言ではない巨乳の美女ばかり! しかも俺に触られるのを心待ちにしている据え膳を食わないなんて男か俺は!? あれか? ウィルスかコールドスリープの影響で知らないうちに性欲と生殖機能を失ったか!? ……いいや! こうして激しく後悔しているのは俺が健全な男である証拠! そうだよ、冷静になれよ射国阿蓮。別に慌てる必要なんてないんだよ。彼女達、爆竜の一族は俺の式姫神で所有権を持つのは当然俺! この惑星の所有権を持つのも俺! 今の俺は巨乳美女ばかりの巨乳の惑星の支配者! 神聖ヤマト皇国どころか宇宙でも有数の勝ち組! 他の五大魔狂、放火魔とトリガーハッピーと切り裂き魔とバトルマニアのキチガイ四人が血の涙を流して羨ましがる、ハーレム貴族の父さんを超えた巨乳ハーレム貴族の射国阿蓮だ! ここは全宇宙の勝者の余裕を見せて、仕事を終わらせてから派手に巨乳天国を楽しめばいいんだよ!)


 阿蓮に止められた爆竜の一族の女性達は、ご馳走を目の前で取り上げられたような残念そうな顔となって前掛けを着る。その光景を瞬き一つせず見ている阿蓮は、心の中で必死になって自分を説得しながら最初の質問をする。


「まず最初に、念のために聞くけど、君達は式祈神スキルを使えるな?」


 陰陽師と別の生物の遺伝子情報を組み合わせて製造された生物兵器である式姫神は、生まれてすぐに自分を製造した陰陽師と同じ式祈神を使用することができる。そしてもう一つの遺伝子情報から得た身体能力や特徴と、式祈神を組み合わせた独自の戦闘技術が式姫神の一番の特徴であった。


「はい、もちろんです。ご覧になられますか?」


「頼む」


 質問に笑顔で答える爆竜の女性の言葉に、阿蓮は瞳に興味の光を宿すと即答した。

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