土属性が地味とは限らない(1)
その日、阿蓮は夢を見た。
緑豊かな未開発の惑星で突然地鳴りが起こり、それによって岩山が崩れるとそこから巨大な影が現れた。岩山から現れたのは、身体が岩と無数の骨が集まってできた異形の怪物で、怪物は現れるとすぐに近くにある村を襲い始める。
村には同じ顔を格好をした女性達が数多く暮らしていて、女性達は岩山から現れた怪物に祈りを捧げたり何かを懇願したりするのだが、怪物は女性の声が聞こえていないのか彼女達を次々と殺していく。怪物によって村の建物が破壊され、村に住む女性達が次々と悲鳴を上げながら無惨に殺されていき、やがて村を破壊し尽くした怪物は次の獲物を探すのか何処か別の場所にと向かって行った。
「ぁ、ぜ……」
怪物に破壊された村には一人だけ、生存者の女性がいた。しかしその女性は下半身が潰され虫の息で、命が尽きるのも時間の問題だろう。
「なぜ……わた、達を……殺すの……です、か? ご先祖、様……?」
生存者の女性は悲しみと悔しさが混じった声で呟くと、その言葉を最後に事切れるのだった。
「……………っ!?」
先程まで見ていた悪夢のせいか、目を覚ました阿蓮は額に大粒の汗を浮かべていて息も荒かったが、なんとか気分を落ち着かせて呼吸を整えると手で額の汗を拭う。
「あれは……夢? まったく、なんて夢だよ……」
阿蓮が見ていた夢はこれ以上なく現実感があって、目を瞑るだけで怪物が女性達を殺す光景やその時の女性達の悲鳴が鮮明に思い出せそうだった。
「あんな夢を見たのって、やっぱり彼女達のせいか?」
一人呟いた阿蓮が自分の座っている操縦席に備わっている機械を操作すると、操舵室にあるモニターが起動してある光景を映し出す。モニターに映っているのは式艤神の周囲にある原始的な集落の様子で、そこには昨日コールドスリープから目覚めた彼の前に現れた、自分達のことを「爆竜の一族」と呼ぶ
夢で怪物に殺された女性達は、間違いなく爆竜の一族であった。しかし見たところ爆竜の女性達の村は平和そのもので、あの現実感がある悪夢は単なる偶然だと結論を出した阿蓮は、彼女達が名乗る「爆竜」の名前の意味について考える。
「爆竜……。『爆発』に『竜』か。爆発は多分『アレ』のことだろ? だったら竜は彼女達を製造する時に使った『材料』に関係しているのか?」
式姫神は陰陽師と別の生物の遺伝子情報を組み合わせて製造する生物兵器である。
阿蓮はコールドスリープを行う直前に式姫神を製造する時、自分の遺伝子情報と一緒に、この惑星の調査中に手に入れた恐竜らしき生物の化石を使用した。恐らく式姫神の女性達は、自分に恐竜の化石が使われていることを理解しているから、自らを「竜」と名乗っているのだろう。
「…………………………だから気のせいだって」
阿蓮がモニターに映る爆竜の女性達を見ていると、夢で彼女達が岩と骨の怪物に殺される光景が脳裏に浮かび上がり、彼は首を横に振ると自分に言い聞かせるように呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます