第82話
綾乃や夏乃が姉ちゃんと一緒にお風呂に入っている中、俺は寂しくゲームをしていた。
しかし、想像だけはしてもいいだろう、俺はそう考えながら、ゲームはしていたが綾乃のお風呂に入る姿というか裸というか、そんなことを考えていた。
「まずいまずい、これ以上考えたら・・・・・・」
流石にこれ以上妄想したら、下半身が反応しかねない。
俺はそう思い、こんな悶々とした思いを消すために、深呼吸をした。
深く息を吸って、吐く。この繰り返しだ。
「アンタ何やってるの?」
母さんが、俺の方を見て不思議そうな顔で俺のことを見てくる。
「え?深呼吸だけど・・・・・・」
「ゲームしないなら、テレビ貸して」
「あー、するから待って」
母さんもテレビを使いたいらしく、俺に変わるように言ってきたが、俺ももう少しでボス戦なので、今日はそのボス戦まで攻略したいと考えていた。
「それにしても、本当いい人見つけたわね〜」
母さんは「よかったよかった」と言って、お茶を啜りながら、微笑んでいた。
「なんだよ急に・・・・・・」
「自分の息子が初めて連れてきた彼女だから言うけど、あんなにいい子よく連れてきたわね〜」
「悪かったねモテなくて」
俺がそう言うと、母さんは笑いながら否定してきた。
「違うわよ〜そういうことじゃないわよ〜」
「じゃあ、なに」
「別にモテなくたっていいのよ。この人しかいないって人をよく見つけて来たなってこと」
「どういうこと?」
俺は母さんの言っている意味が理解できなくて、首を傾げながらもう一度聞いた。
「別に母さんは、いっぱい人を好きになることが悪いとは思わないわ。それは人の価値観の違いで母さんは何も言えないもの、でもね、沢山の人と付き合わなくても、この人だけって人を一生愛せるのって素敵じゃない?」
母さんはそう答えたあと、もう一度お茶を啜っていた。
俺はゲームどころではなかった。コントローラーからは手を離して、母さんの話に聞き入ってしまっていた。
「でも、そんな素敵な話は夢のような話でしょ」
「そうよ?だからみんな失恋して、いろんな人と付き合って、この人だ!って人を見つけるのよ」
俺はその話を聞いて、俺は不安になってしまった。自分の中では綾乃しかいないと思っているが、どんなことが起きるかわからない。
もし・・・・・・ということを考えてしまう。
「大丈夫よ、アンタたちは」
「え?」
母さんが、ジトッとした目でこちらを見てくる。
「少なくとも、アンタが綾乃ちゃんしか居ないって思ってるんだったら万が一なんて事はないわ」
「俺はこれからも綾乃しかいないって思うけど、綾乃はどうかわからないから」
「なんか、懐かしいわ〜」
母さんが言うには、修学旅行の夜友達と恋話をしてる感覚に近いらしい。
友達じゃなくて実の息子だけどな・・・・・・と俺は苦笑いした。
「綾乃ちゃんはアンタが思ってるより、ずっとアンタに惚れてるわよ」
「はぁっ?なにそれ」
「本当よ?」
俺はその言葉を信じていいのかわからなかったが、信じるという選択肢しかなかった気がする。
母さんの方を見ると母さんの目線は俺ではなく俺の後ろの方を見ていた。
「雄星くん、ごめんね?先に入っちゃって」
俺は綾乃の声が後ろからしたので、すぐに振り返る。
そこには、髪をまだ乾かしてない綾乃が立っていた。
「あ、いや大丈夫」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
「うそ!雄星くんがそういう時いつも何かある時だもん」
何かあった、ことをすぐに見抜かれてしまった。別に大したことではないが、そのことを言って、意識させたくはなかった。
「その子ね、綾乃ちゃんが自分よりもっといい人がいるんじゃないかって、今ネガティブになってるのよ〜」
「いや!そんな話はっ」
「でも、思ってたでしょ」
俺はそう言われて、すぐに否定できなかった。
「雄星くん!」
「は、はい!」
俺は綾乃の大きな声にきちんと返事をした。綾乃は顔を俺に近づけてくる。
その時に俺の家のシャンプーの匂いがするのがわかった。
「私には、雄星くんしかいないの、雄星くんがいいから付き合ったの。私は自分で言うのもアレだけど雄星くんに一途なの」
「それを言うなら俺だって・・・・・・」
「じゃあ!もう他の誰かが〜とか言わないね?」
「う、うん」
「次言ったら今度は怒るから」
綾乃は「じゃあ髪乾かしてくる」と言って、リビングから出て行ってしまった。
「青春ね〜」
「あはは・・・・・・」
俺は今どんな顔をしているのだろうか、多分めちゃくちゃ、顔が緩んでいるんだろう。
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