第81話
時間が過ぎるのは早いもので、窓の外を見ると辺りは暗くなっていた。
いつもはお風呂に入っている時間なのだが、由美が先に入らせろと言わんばかりに俺を睨んできたので俺はしょうがなく黙って歌番組をボーッと眺めていた。
「じゃあ綾乃ちゃん夏乃ちゃん、入ろっか」
「あっ、はい!」
「はいる〜」
夏乃がウキウキといった足取りでお風呂場に向かっていく。
「ごめんね、雄星くん先に入らせてもらっちゃって」
「いいんだよ、ゆっくりしてきて」
「じゃあ、お言葉に甘えるね」
「うん、姉ちゃんになんかされたらなんでも言って」
「あははっ、うん!頼りにしてる」
そう言って、綾乃もニコニコと笑いながら夏乃のあとにお風呂場に向かっていった。
「お風呂・・・・・・か」
俺はその一言テレビを眺めながらボソッと呟いた。
◆◆◆
「さー!お風呂入っちゃうよー!」
雄星くんのお姉さんが、すぐに自分の着ている服を脱いで洗濯機の中に入れている。
こういうところで、裸になるのは、少しというかだいぶ恥ずかしい。
「2人とも何してるの?早くしなさい〜」
「あっ、ちょっと待ってください!」
お姉さんは平気なのだろうか・・・・・・私あなたの弟の彼女なんですけど。
私は恐る恐る、上下下着1枚になる。
「綾乃ちゃん?早くしないと、お姉さん襲っちゃうぞ?」
「やめてくださいっ!」
「恥ずかしがらないで〜夏乃ちゃんはもう、体洗ってるわよ?」
「夏乃・・・・・・」
こんな時夏乃みたいに、恥ずかしさを無くせたらと思う。
小学生の時の発表などが、恥ずかしいから雲になりたいみたいな感じだった。
「やっときた〜・・・・・・・・・」
「お姉ちゃん遅い」
「あははっ、ごめんごめん」
なんか、お姉さんの視線が、さっきからじろじろと見られてて怖い。
「ちょっと失礼するわよ〜?」
「へっ?・・・・・・っ!?」
「おおっ、とても柔らかくて、大きさも申し分ない最高です」
「何言ってるのか分からないし、何してるんですかっ!」
私は胸を揉んでいるお姉さんの手を振り払って、お姉さんの方を見る。
「え〜、胸を揉んでるんだけど?」
「そんな、当たり前だよね?みたいな顔しないで!当たり前じゃないですから!」
「サービスサービス!」
「誰にですかっ!」
「私に?」
私は「もうっ」と言って、体を洗い始めた。その間お姉さんは夏乃とおしゃべりをしたり、また私の方を見てきたりしていた。
「綾乃ちゃん、肌綺麗よねぇ〜」
「えっ?そうですか?」
「うん、なにかお手入れしてるの?」
「クリームとかは塗ってますけど、それ以外は特に・・・・・・」
「羨ましいわぁ」
由美さんは自分の腕を見てため息を吐いている。
由美さんは私からしたらオシャレの塊みたいな人なのに・・・・・・今日もとてもオシャレで、最初来た時間違ってお店に来たんじゃないかと勘違いするくらいに・・・・・・
少し変態なのはアレだけど・・・
「もう出る〜」
「夏乃1人で着替えとかできる?」
「できるー」
夏乃はそう言って、ペタペタと歩いて洗面所の前でバスタオルで体を拭いている。
それを見て、私はパタンとお風呂場の扉を閉めた。
「やっぱりお姉ちゃんね〜」
「別に、今のは・・・・・・」
「心配なのよね、わかるわぁ」
「雄星くんですか?」
「小さい頃は私にべったりだったからね・・・・・・」
「その話よく聞かせてください」
私は雄星くんの昔の話が聞きたくてお姉さんとお風呂場で長話をしてしまいました。
「のぼせたかも・・・・・・」
「私もです」
そう言って、お風呂場から出て少しボーッとしていると、お姉さんが話し出した。
「綾乃ちゃんも甘えたい時はいつでも甘えていいのよ?」
「えっ?でも、私高校生ですよ?」
「私より歳下じゃない」
「それはそうですけど・・・・・・」
「もうっ、一回甘えてみればわかるわ!」
そう言って、お姉さんは「えい!」と言って、私の体を引き寄せて、頭を優しい手つきで撫でてくる。
「よしよし、いつも頑張っててえらいぞー」
「なんか、暖かいです」
「お風呂入ったばかりだからね」
「裸でこんなことしてるの、結構ヤバいですよ」
「あははっ!そうだね」
そう言って、お姉さんは私の体を離した。
しかし、私はお姉さんに撫でられている間、嫌だと感じた事はなかった。
「いつでも甘えなさいよ!」
「・・・・・・・・・はい」
私は恥ずかしくなって、バスタオルで隠しながら小さな声で返事をした。
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