第80話

「じゃーん!お待たせ〜綾乃ちゃんとの初の共同作業、愛情たっぷりハンバーグでーす!」

「ごめんね?待たせちゃって」


 綾乃は母さんが言っていることに対して苦笑いしながら、リビングで待っていた俺たちに謝ってくる。


「いいよ、いいよ!全然待ってないもん。ねー?夏乃ちゃん?」

「うん、待ってない」


 夏乃がそう言った瞬間、ぐるるるるーとお腹の音が夏乃の方から聞こえた。

 まぁ、顔を赤くしてる夏乃がこの、お腹の音を出した犯人だろう。


「あははっ!本当か?夏乃」

「雄星っ!イジめないの!」

「イジめてるわけじゃ・・・・・・」

「早くハンバーグたべたい」


 夏乃の方を見たら、俺が言ったことよりも綾乃と母さんが作ったハンバーグを食べたそうにそわそわしていた。


 俺はその表情を見て、めんどくさいことにならなくてよかったと安心していた。


「雄星くんもゲームやめて、ご飯食べよ?」

「あ、ごめん。今やめる」

「うん!」


 俺はゲーム本体の電源を切り、テーブルに置かれた、ご飯を前に思わずヨダレが出てしまった。


「あははっ、雄星くんっ。小学生みたい!」

「ち、ちがっ!これは・・・・・・美味しそうだったからつい」

「じゃあ冷めないうちに食べよっか?」

「たべる!」


 そう言って、5人でテーブルを囲んで作ってもらったハンバーグを一口食べる。

 一口食べただけで、わかる、美味しい。そして俺好みの味付けなので、より美味しい。


 デミグラスソースというハンバーグの中でも1番と言っていいほどのソースがかかっているのもポイントが高い。


「雄星じゃなくて、私が貰いたいわ」

「マジで美味い」

「でしょ〜!母さん隣で見てたけど、本当お料理上手よ!」

「やめてくださいっ、照れますから」


 そう言って、綾乃はみんなから褒められたのが恥ずかしかったのだろう、顔を赤くしていた。


 綾乃と母さんが作ったハンバーグは本当に美味しかった。

 どんどん箸が進み、すぐに無くなってしまった。


 もう少しゆっくり食べればよかったと思い、残念な気持ちが残った。


 俺は自分が使った食器を洗うために流し場まで持って行った。

 すると、俺についてきたのか、夏乃も自分の皿を持って流し場にきた。


「洗うから、そこ置いといていいよ?」

「別にいい、夏乃が洗う」

「大丈夫か?」

「夏乃だってできるもんっ!」

「お、おう・・・・・・」


 案外大きな声を出してきたので、結構びっくりした。

 夏乃はまだ小さいからと言って、甘やかしてしまった。


 一生懸命、洗っている夏乃を見て俺は失礼だったかなと思った。


「あっ、夏乃自分で洗ってるんだ、えらいえらい」


 そう言って、綾乃が夏乃の頭を撫でている。撫でる手つきは普段から頭を撫でている人の優しそうな手つきだった。


 夏乃は子ども扱いされたことに対して、不満を見せるかと思ったが、全く違った。


 嫌な顔はせず、逆に自分から撫でられてるみたいだった。

 その仕草はまるで猫のようだった。


◆◆◆

「あっ、今日綾乃ちゃんと夏乃ちゃんは私の部屋で寝ようね!3人で川の字になって」

「川の字ですか?」

「もちろん!可愛い女の子2人に挟まれて寝るの夢だったのよね」


 姉ちゃんが真ん中かよ・・・・・・俺は自分の姉の発言だと思いたくなかった。


「あっ、今日はテレビ見て、年越しそば食べて家でゴロゴロしてようか」


 そう言って由美が、ソファに寝転がる。


「あっ!もちろんお風呂も3人で入るからね〜」

「姉ちゃん・・・・・・流石にそれは」

「せっかくお泊り着てるんだし、そういうのも思い出よ」

「はぁ、2人はいいのか?さっきから姉ちゃんに流されてるように見えるけど」


 夏乃と綾乃はお互いを見つめ合ったあと、俺の方にニッコリと笑顔を見せてきた。


「大丈夫だよ!お姉さんいい人だし」

「うん、夏乃も大丈夫〜」

「やった!決まり!」

「なんか、本当にありがとう」


 俺がそう礼を言うと、綾乃は苦笑いしてた。


 しかし、3人でお風呂か・・・・・・覗くのはダメだよな、見つかったら姉ちゃんに殺される。

 綾乃に嫌われるかもしれないし・・・・・・


 今思ったことで俺も変態なのではと思ってしまった。

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