第79話
「あら!そうすれば美味しくなるのね?」
「はい!あとはここにコレを乗せて・・・・・・」
「とてもいい匂いがするわ〜」
「お腹空いてきた」
母さんが綾乃に料理を習っている。習っているというよりも、一緒に料理をしていると言った方が正しいかもしれない。
夏乃は美味しそうないい匂いに誘われてテレビの前からキッチンの方にフラフラと歩いていったし。
女性陣が料理をしている中俺はテレビゲームをしていた。
最近あまりゲームができていなかったので、暇になった俺はゲームをしていた。
「おはよ〜」
由美がパジャマ姿でリビングに入ってくる。髪の毛もボサボサでいつもの姉とは全くの別人だった。
「おはよう・・・・・・ってもう何時だと思ってるの!」
母さんがよく聞いたことのあるようなセリフを由美に向かって言っている。
「わかってるって〜」
由美は適当に流しながら、すんすんと部屋の匂いを嗅いでいる。
「なんか、よだれが出てくる匂いがする」
「え、姉ちゃん寝起きで食べれるの?」
「私を誰だと思ってるの!」
「いや、俺の姉ちゃんだろ」
「・・・・・・それもそうね、まぁお腹は空いてるから食べれるわ」
由美は何も思い浮かばなかったのか少し考えたあと諦めて俺が言ったことに納得していた。
「あれ?もう綾乃ちゃんたち来てるの?」
「来てるよ、姉ちゃんは寝てたから知らないだろうけど」
「先にそれを言いなさいよ!」
バシッと頭を叩かれたあと由美はササッと消えるように出て行った。
「なんなんだよ・・・・・・」
なぜ叩かれたか理解できなかった。
しばらくして由美がさっきとは違い髪の毛は整っていて、服もオシャレで、いつもの外行きの状態になっていた。
「今日どっか行くの?」
「行かないわよ?」
「じゃあなんでそんなオシャレしてんの?」
「綾乃ちゃん達がいるからに決まってるでしょ!バカなの?いやバカでしょ」
姉が俺の扱いが今日は特にひどいと俺は思っていた。それに、なんか言い方が腹立つ。
「黒田この人だれ?」
「あー、夏乃この人はだな・・・・・・」
「雄星の姉の由美って言うの、夏乃ちゃんだっけ?話は聞いてるよ〜」
「えっと・・・・・・」
「あっ!由美お姉ちゃんって呼んでいいからね?」
「ゆみ・・・・・・お姉ちゃん」
「かわいいっ!!」
夏乃に「お姉ちゃん」と呼ばれた瞬間、流れるように夏乃を抱きしめている。
抱きしめたあとは、自分の膝の上に乗せて、頬や腕をぷにぷにと触って「えへへ、やわらかい」と変態発言をしていた。
「姉ちゃん、きもいよ」
「うるっさいわねっ!!私には癒しが必要なの!」
そう言って夏乃の頭を撫でている。すると、綾乃がキッチンからエプロン姿でひょこっと出てきた。
由美が起きていたことに気づいた綾乃はこちらに笑顔で近づいてくる。
「あっ、お姉さんお邪魔してますっ」
「綾乃ちゃんっ!」
由美はそう言ってジロジロと綾乃のことを下から上へと見ている。
たしかに、エプロン姿の綾乃は破壊力高いかもしれない。
「な、なんでしょうか・・・・・・」
「私、今癒しが欲しいの」
「癒しですか?」
「綾乃ちゃんがぎゅって抱きしめてくれたら、癒しになるからお願いしてもいい?」
「そのくらいなら・・・・・・」
俺はそれを聞いて、テレビゲームどころではなくなった。綾乃のエプロン姿もじっくり見てないし、なにせ綾乃のハグとか羨ましすぎる。
俺はゲームのコントローラーをテーブルの上に置きゲームを中断して振り返ると、由美が綾乃にハグされていた。
「綾乃ちゃんとってもいい匂いする〜」
「そ、そうですか?料理してたのでその匂いかと」
「あと・・・・・・失礼しますね〜」
「ち、ちょっと!お姉さん!」
「やっぱりお胸がとっても柔らかいわぁ、服の上からでもわかるわぁ」
そう言って、綾乃のエプロンの横から手を入れて綾乃の胸あたりで手をモゾモゾと動かしていた。
「おい!この変態女!綾乃から離れろ!」
「こわ〜い、綾乃ちゃん〜助けて〜」
「雄星くん?お姉さんなんだから、そんな言葉はダメでしょ!」
「ぐぬぬっ・・・・・・」
俺の方を勝ち誇ったような表情で見てくる姉に対して下唇を強く噛んだ。
実際のところ羨ましかったのだ。綾乃とハグしたり、その、む、胸を触ったり、正直ずるいと思ってしまった。
「綾乃ちゃん〜?これあとは焼くだけ?」
「あっ!今行きます!」
そう言って綾乃がキッチンに戻るとまた由美は夏乃を抱っこして、夏乃の頬と自分の頬をすりすりしている。
夏乃も嫌がってるというわけではなかった。むしろ夏乃も甘えている様子だった。
「お姉ちゃんお腹空いた〜!」
「はいはい、もうちょっと待ってね〜?」
「ごめんね夏乃ちゃん、もう少しだからね〜」
母さんと綾乃が一緒にキッチンから顔を出して謝る。
「はーい!めっちゃ待つ!」
「なんで姉ちゃんが答えてんだよ・・・・・・」
「ほっぺたやわらかっ・・・・・・食べたい・・・」
待つって言ったのどこのどいつだよ、とツッコミたくなったが、相手にしていると疲れると思い、俺はもう一度コントローラーを手に取った。
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