第78話
「あなたたち付き合ってるのよね?」
「そう言ってるだろ母さん」
「恋人同士ってことよね?」
「そういうことになるよね」
母さんは本当に俺と綾乃が付き合っていることを確かめる気でいた。
綾乃は戸惑った様子で俺の方を見てきた。
俺は綾乃の方を見て苦笑いすることしか出来なかった。
「じゃあ、綾乃ちゃんに質問。雄星の好きなところは?」
母さんがいきなり攻めた質問を綾乃にしていた。俺は母さんに攻めすぎだぞという意味を込めて母さんの肩を揺さぶった。
しかし、母さんは小声で「こんなのジャブに過ぎないわよ」と言ってまだまだ攻めるといった姿勢だった。
「えっと・・・雄星くんの好きなところですか?」
「恋人だったらあるわよね?」
「はい!もちろんです!」
俺はやけにホッとした。これで「ありません」なんて言われたら10日は立ち直れる気がしなかった。
それで、綾乃の俺の好きなところはなんなんだろうか、俺は今までそういうところを聞かなかったから少し新鮮な気持ちで綾乃の話を聞く。
「優しいってところは前提で雄星くんと一緒にいると楽しいんです」
「楽しい?」
「はい、雄星くんと一緒にいるだけで、2倍3倍と楽しさが増すんです!」
「なるほどね・・・・・・」
母さんは、綾乃のその話を聞いて徐々に俺と綾乃が付き合ってるということを信じてきている様子だった。
「それと」
「それと?」
綾乃がまだ何か言いたそうだった。
「雄星くんは、覚えてないかもしれないけど、私小学生の時よく男子からからかわれてたんです。でもそんな時雄星くんが助けてくれて、それがとってもカッコよくて・・・・・・」
綾乃が続けて「だから、その・・・・・・」と言いたいことはあるけど、上手く言葉にできないような感じで頑張って話そうとしていたら
「綾乃ちゃん、もう大丈夫よ」
「え?そ、そうですか?」
「うん、雄星のこと本当に好きっていうのが伝わってきたわ」
母さんは優しい表情で綾乃の方を見ていた。綾乃は少しもじもじして落ち着かない様子だった。
「お姉ちゃん、いつも黒田、くろだ〜ってうるさかったもん」
「夏乃!それは言わない約束でしょ!?」
「え?それ本当の話?」
「夏乃嘘つかないもん!お姉ちゃん高校の方が楽しそうだもん!」
「だって仕方ないでしょ!?中学で会えなかった分高校でやっと近づけて浮かれてたんだから!」
綾乃は自分でそれを言った直後、我に返って、だんだんと顔が赤くなっていった。
母さんはその表情を見て「あらあら」とニヤつきながら俺と綾乃を交互に見る。
「な〜つ〜の〜?」
涙目になりながら綾乃はぷるぷると震えて夏乃の名前を呼んでいた。
「あ、黒田守って!」
「こっちにきなさいっ!」
「黒田!」
「雄星くん!夏乃を渡して・・・・・・って雄星くん?」
俺は今まで普通に聞いてきたが、今思えば全部俺のことについて話してたんだよな・・・・・・そう考えた瞬間俺は心臓の鼓動が速くなるのがわかった。
「あー、この子恥ずかしがってるわ、そっとしておいてあげて」
綾乃が俺のことをそういう風に思ってくれていた意識してくれていただけで嬉しかった。
「それじゃ、次は雄星アンタの番よ」
「え?なにが?」
「え?なにが?じゃないわよ!綾乃ちゃんだけ言うのは不公平でしょ?アンタも言いなさい」
「ええっ、でも・・・・・・」
「あの顔を見ても言わないつもりかしら」
そう言って、母さんは俺じゃなく綾乃の方に目線をずらす、綾乃は何かを期待したような目で俺の方を見ていた。
自分の好きなところも言ってほしいというのが、顔いや、全身から伝わってくる。その、オーラ的な感じで。
「最初は嫌な奴だと思ってた、でも一緒に話したり花の世話したりしてるウチに綾乃も1人の女の子だって気づいた」
「それ、小学生の時は女の子として見てなかったってこと??だいぶショックだよ!」
「最後まで話を聞け!」
俺は気を取り直して話をする。
「綾乃の努力家なところが好き、綾乃の優しい笑顔が好き、負けず嫌いなところも好き、拗ねると頬を膨らませたりするのも好き、それから・・・・・・」
「ストーーーップ!も、もういい!わかったから」
「え?でも・・・・・・」
「なんか、息子から聞くと気持ち悪いわぁ」
母さんから聞いといて気持ち悪いは酷すぎないか?流石の俺でも傷つくぞと母さんの方を睨んだ。
しかし、母さんはいつものニヤけるような表情ではなく、さっきの綾乃を見るような目で俺の方を見つめてきた。
「綾乃ちゃんを見なさい」
俺は母さんに言われた通り、綾乃を見ると手で顔を隠していた。
「アンタも言うようになったわねぇ〜」
「う、うるさい!あ、綾乃?」
「イマカイワNG」
「何言ってるんだ?おかしくなったのか?」
「ウチのお姉ちゃん、あ、まちがった。ウチの綾乃は会話NGです!」
「即興で作ったごっこ遊びみたいなのやめろ」
会話NGってどこの業界だよ・・・・・・ってどんな話してるんだよ俺らは。
「やばいわ〜、甘すぎてこの部屋匂うわ〜窓開けて換気しなさい〜」
「母さんまで何言ってるんだよ!」
大変な1日になりそうな予感だった。
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