第72話

「ぐへへ、今日はアイツで決め込むか・・・・・・」


 なにやら、気持ち悪い笑みを浮かべながら商品と睨めっこしているのは俺の姉だ。


 他のお客さんも居るし、恥ずかしいので本当にやめてほしい。


「姉ちゃんお酒はやめとけよ」

「なによぉ!いいじゃない!」

「いや、1人で勝ってに飲む分だといいんだけど、俺にダル絡みしてくるから・・・・・・」

「酔うと楽しくなっちゃうんだもんっ」


 ◯◯だもんっ!的な感じで少し可愛らしく見せようとしているのだろうか、俺はそれを目の前で見た時ゾワッと寒気がした。


「姉ちゃんそういうのはやめた方がいい」

「なによー!お姉ちゃん悲しいっ」

「はいはい」


 そう言って、軽く流して俺は自分が買う商品を見ていた。


「なに、雄星アンタそれ買うの?」

「あーうん」

「ちょっと貸しなさい」


 そう言って俺が手に持っていた商品を由美は俺から取り上げて自分が持っていたカゴに入れる。


「姉ちゃんなにして・・・・・・」

「並ぶの面倒だから、これくらい私が出してあげるわよ」

「い、イケメン・・・・・・」

「それは・・・・・・褒めてるよね?」


 「もちろん!」と俺が元気よく返事をした。


◆◆◆

 家に着いた途端とたんに俺は崩れるように玄関に倒れる。


「ちょっと、汚いから自分の部屋で寝なさい。あと邪魔」


 俺は仕方ないなと思いながらも、ノソノソと起き上がる。


「あっ!お母さん!大晦日の日雄星の彼女泊まりに来るからよろしくねっ!」

「えっ!?彼女?!」


 由美から綾乃が大晦日に来るということを聞かされた母はドタドタとすごい音を立てて、玄関に居る俺たちのところに来た。


 そして、俺の方をジッと見つめていた。


「ん〜、確かに最近身だしなみとか、気を遣ってるとは思ってたけどまさか彼女だったとはねぇ〜」

「そうなの、お母さんっ。私に髪の毛まで切らせてねぇ〜」


 由美と母はニヤニヤとした表情で俺の顔を見てくる。


 なんということでしょう。由美だけでなく母からもイジられるとは・・・・・・あまり綾乃を関わらせたくなくなってきた。


「母さん、何か変な匂いするけど」

「変な匂い?アンタなに言って・・・・・・あっ!料理!焦げてるかも!」

「えっ?!ちょっとダメでしょ目離しちゃ」


 そう言って慌てて由美と母は、ドタドタと音を鳴らしてキッチンに戻って行った。


「はぁ、なんか疲れた」


 俺は自室で休もうと、階段を上がって自室に入って、ベッドに横になった。


 大晦日に綾乃が俺の家に泊まりに来るなんて、考えてもなかった。

 これも全部あの姉ちゃんのせいだ。いや、おかげと言った方が正しいのかもしれない。


 なんだかんだ言って、綾乃のオフの姿とか見たいし、綾乃のお風呂上がりとかも見れるってことだよな・・・・・・


 やばい、興奮してきてしまった。一般的な反応だと思う。


 好きな人のお風呂上がりを想像してしまったら、いや、こんなことを想像している時点で変態なのかもしれない。


 俺が変な妄想を膨らませているとコンコンッと扉をノックされた。


「なに〜?」

「アンタに渡す物あった。ハイこれ」


 そう言って、由美は扉を開けて俺に向かって何かを投げてきた。


「何これ」

「やっぱり、2人きりとかそういう雰囲気になった時に必要でしょう?」

「はっ?!」

「フフフ、感謝しなさいよ」

「いや、なんでサイズ知ってるんだよ!」

「・・・・・・・・・フッ」


 いやいや、そこじゃない。そこも問題だが、そこじゃないんだ。


 由美は本当にそれを渡しに来ただけだった。渡しち後はすぐに、俺の部屋から出て行った。


「クソッ!変な妄想してた後だから・・・・・・」


 いやいや、ないな。綾乃がOKを出さない限り俺は絶対に手を出さないって決めてるから。


 でも、もしOKを出したらなんて考えてしまう。悶々とした気持ちが続いた。


「ま、まぁ、一応ね?使わないと思うけど。勝手に姉ちゃんが買ってきただけだし」


 捨てるのも勿体無いので、俺は机の引き出しに姉からもらった、ソレを大事に保管した。

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