第71話
クリスマスが終わり、俺はだらっとした1日を過ごしていた。
もう少しで大晦日だが、こんなだらだらした空気のまま新年を迎えるわけにはいかないと考え俺は本屋に来ている。
本屋に来たのは漫画の新刊が出たから丁度いいという理由もある。
だが、家にずっと居るよりはいいだろう。
俺は新刊コーナーをぐるぐると回っている。こういう時にパッと見つけられないと、売り切れてしまったのではと少し心配になる。
「あ、あったあった」
ホッとしたのか声が漏れてしまったが、そんなのは今どうでもいい、俺は新刊に手を伸ばすと俺と同じように新刊に手を伸ばす人の手と当たってしまった。
俺はなんだこの少女漫画の様な展開、と思いながらもそっとその人の方を見ると、小さな可愛らしい女の子だった。
黒髪で肩にはかからないくらいの長さだった。
「あの・・・・・・なんか私の顔になにかついてるっすか?」
「あっ、いやごめん」
「ごめんじゃなくて、なにかついてる?って聞いたんすけど・・・・・・」
「ついてないです」
俺がそう言うと、その女の子はますます俺を疑いの目で見てくる。
「じゃあなに?いやらしい目で見てたんすか?」
「見てないわっ!大体お前何歳だよ」
「15歳っす」
「後輩じゃねぇか!」
そう言うと、俺の方を「えっ・・・何この人、先輩のくせにじろじろ見てたの?」的な感じでこちらを見てくる。
「えっと、嘘はよくないっすよ?」
「すぐ近くの高校あるだろ?そこの2年生だよ!」
「私も今年受験するっす、そこの高校」
「じゃあ帰って勉強しろ!」
「してましたよ。い、今は息抜きです」
もじもじと恥ずかしそうに言ってくる。
「
なんだろう、その小悪魔のような笑顔とは裏腹にとても腹が立つのはどうしてだろう。
「あぁ、せいぜい頑張れよ」
俺はお目当ての新刊を買いにきただけなのに、あんな変なのに絡まれるとは・・・・・・もしアイツが入学してきたら、周りにいる奴は振り回されるだろうな
なんで合格する前提なんだよ。アイツが合格するなんて誰にもわからないのに。
「はぁ〜っ。なんか、どっと疲れた」
「え、この世の終わりみたいな表情してるね」
「姉ちゃん・・・・・・何してるの」
「ん〜?今日は休みだから暇だったしぶらぶらしてたんだー」
「あっそう」
俺は適当に返事をすると、「冷たい〜」とだる絡みをしてくる。
姉と会うのは文化祭以来かもしれない。
「それで?綾乃ちゃんとはどこまでいったの?」
「べ、別に・・・・・・」
「キスはした?」
「うるさい」
「あ〜したんだぁ」
こういうところが本当にムカつく。自分の恋ではないので、楽しんでいるところが1番ムカつくのだ。
実の姉だからという理由も勿論ある。
「雄星くん?」
後ろの方から自分の名前が呼ばれた気がしたので振り返る。
綾乃が俺だと分かった瞬間、ニコッと笑って笑顔になる。
「やっぱり雄星くんだ。とお姉さんこんにちは〜」
「久しぶり〜!いつ見ても可愛いねぇ」
「いや、そんなことないですよ!」
「ねぇ?雄星?」
「うん。すごく可愛い」
綾乃はそれを聞いて、へにゃりと笑っていた。
「あ!大晦日お邪魔します」
「う、うん。こちらこそよろしくお願いします」
「えっ?なになに?」
「大晦日雄星くんのお家で過ごそうかなって思ってまして」
「えっ?!それ泊まる??」
「いえ、泊まるまでは・・・・・・」
ん?なんだこの流れは・・・・・・姉ちゃんはなにかピキーン!閃いた!みたいな顔してる。
「じゃあ泊まっちゃおう!」
「えっ?!け、けど・・・・・・」
「そうだぞ姉ちゃん、綾乃にも用事があるかもしれないし、家族と過ごしたいかもしれないだろ」
「えぇ〜お姉ちゃん綾乃ちゃんとお泊まり会したいなぁ〜」
「め、迷惑でなければ」
「全然!じゃあ決まりねっ!」
そう言って綾乃が大晦日の日に泊まることがこの数分の間に決まっていた。
自分の姉だが、なんだこの女と言うしかなかった。
その姉は俺に向けてピースしてくる。
「お姉ちゃんにありがとうは?」
「なんで」
「またまた〜照れちゃって〜」
「あ、ありがとう」
「ふふんっ!よろしい。ってことでコンビニ寄ってもいい?」
そう言って1番近いコンビニに入って行った。ていうかなぜか、一緒に帰ることになってないか?
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