第68話
あの後、結局三村が何度も何度も遊びたいと言ってきたので、結局いつものメンバーで遊びに行った。
男3人という可哀想なクリスマスイブだった。
しかし、男同士だからこその楽しさがそこにはあった。やはり男同士は気を遣わなくていいし、なによりも楽だと感じた。
遊んだあとも三村は「クリスマスも遊ぼう」と
真剣な表情で言ってきたので蒼太と2人でキッパリと断った。
「という感じです」
「へー、なんだか楽しそうだね」
「綾乃はイブの日何やってたんだ?」
「んーと、普通だよ?いつもと変わらなかった〜」
綾乃は「雄星くん楽しそうだったみたいでいいな〜」と羨ましそうに言ってくる。
「今日楽しめばいいだろ?バカだな」
「んな!?バカは言い過ぎでしょ!でも、そうだね今日は楽しもう!」
そう言って綾乃は満面の笑みを見せつけてくる。その可愛さに俺は思わず頬を摘んでしまった。
「な、なひ!?」
「あ、つい・・・・・・えっと柔らかかった」
「感想はいらないから!」
触られて恥ずかしいのか、プイッとそっぽ向いてしまった。
怒っているという反応ではなかったが、男として彼女の頬に触りたいというのはあるものだろう。
すると、綾乃が俺の頬を親指と人差し指で挟んで引っ張ってくる。
「お返し」
「男の触って楽しい?」
「う、うるさい!」
バシッと頭を叩かれる。綾乃を見るとカァーッと頬が赤く染まっていく。
俺が見ていることに気づいたのか、マフラーを上に上げて顔を隠していた。
◆◆◆
俺と綾乃は少し歩いたところのショッピングモールに来た。
小さい頃からあまり変わらない建物なので、ちょっと安心する。
その中の服屋に来ていた。よく来るというわけではないが、店員さんもそれなりに顔を知ってる人がいる。
「これとか、似合いそう!」
「あっ、いいかも」
綾乃が俺に似合いそうな服を選んで持ってきてくれた。
値札を見ると、今日財布に入っているお金じゃ足りなかったので断念した。
「そんなに落ち込まないでよ」
また来ればいいでしょと綾乃は言ってくれるが、次の日にはこの気持ちがどうなっているかわからない。
気持ちが変わらなくても売り切れていたり、サイズが合わなかったりしたら・・・・・・なんて考えていると、そんなことを考える暇はないと言わんばかりに綾乃がどんどん前に進んでいた。
「ほらほら、雄星くん早く!」
そう言って俺の方に大きく手を振りながら俺のことを急かしてくる。
学校で見せる白河綾乃ではなく、その姿はまるで遊園地に来てはしゃぐ子供のようだった。
◆◆◆
思う存分ショッピングモールで遊んだ後は、綾乃が言っていた話題のカフェに向かった。
「ここだった気がするんだよね」
そう言って、店内に入って行くと、とても落ち着いた雰囲気のカフェだと感じた。
「私パンケーキにしよ〜」
「俺はブレンドコーヒーとサンドイッチにする」
注文をしたあと、客がぞろぞろと入ってきた。俺らが入ってくる時も少し他の客が入っていたのだが、タイミングが良かったのだろう。
もう少し遅れてきていたら、何十分か待っていたことだろう。
さすが話題と言ったところか、すぐに満席になった。その客層はカップルや女性はもちろん、ダンディーなおじさんなど色々だった。
たしかに、ここだったら1人でも来たいなあと考えていた。
「見て!このパンケーキ可愛い〜!」
「熊の顔になってるのか」
「うん!くまさん」
パンケーキを見て目をキラキラさせている綾乃を見て俺はこっちの方が可愛いけどと思った。
「てか、それだけで足りる?」
「それ、女の子に聞いたらダメなセリフだよ」
「ごめん。でも・・・・・・」
「大丈夫っ!・・・・・・たぶん」
最後小声でたぶんって聞こえたんだが、大丈夫だよな?少し心配になってしまう。
時々思ってしまう。俺は綾乃に対して過保護なのではないかと。
「なんか、色々あったね」
綾乃がパンケーキと一緒に注文していたカプチーノを飲みながら、喋りだした。
「雄星くんに気づいてもらえて、今はもう彼氏彼女の関係なんて、一年前は考えもしなかった」
「そうだね」
「私は気づいてたけど」と言われ心にグサッとくる言葉だった。
「私の片想いで終わるかもしれなかったんだよね」
「だとしたら、夏乃のおかげだな。アイツが迷子になってなかったら、綾乃と出会わなかったからな」
「そうだね・・・・・・今日帰ったら夏乃のこと抱きしめてあげよ!」
綾乃はなんだかとっても嬉しそうだった。笑顔でパンケーキを頬ばる姿も可愛らしかった。
そんな姿を見ていると、こっちまで笑顔が移ってしまう。
「笑顔ウイルスめ」
「人のことウイルス呼ばわりは酷くない?!」
「綾乃といると飽きないなってことだよ、なんていうか喜怒哀楽がはっきりしてるというか」
「うーん、褒められてる気がしない」
そう言って、顔をしかめながら、パンケーキをまた食べると笑顔を振り
それを見て、俺もニコニコまではいないが、ニヤついてはいたかもしれない。
周りにいた客や店員さんまでも、なんか笑顔を俺らが座っている席に飛ばしてくる。
俺は笑顔ウイルスめと心底思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます