第55話

「お待たせしました〜こちらふわふわオムライスになりま〜す!」


 店員さんといっても、うちの学校の先輩が元気よく注文していた物を出してくれる。


 卵がキラキラしていて、皿を揺らすと卵が左右に揺れ、ふわふわ感がとても伝わってくる。

 それだけでも、よだれが出てきてしまう。


「オムライスにケチャップで文字書いてくれるんですよね?!」

「はい!いいですよぉ〜」


 俺たちが学校の生徒だと分かっているだろうが、仕事だからなのか、メイドさんをしている人は一切恥ずかしいという素振りを見せない。


 それどころか、とても張り切っている。よくアニメなんかで見る、鼻から白い息が出るくらい張り切っている。


「お、おい三村・・・・・・恥ずかしいだろ」


 俺は少し恥ずかしかったので、三村の耳元で店員さんに聞こえないように言った。

 すると、三村は睨むような鋭い目つきで俺を見てきた。


「ったく・・・・・・まぁ、任せろ」


 よくわからなかった。ん?任せろってどういう意味だ?


 メイドさんが三村のオムライスに文字を書き終わって次は俺の番だと言わんばかりに俺の方を見てくる。


 俺は未だに恥ずかしかったので


「お、俺はいい・・・・・・んぐっ?!」

「えっと、じゃあ・・・・・・メイドさんの巨乳ラブって書いてください」

「・・・・・・え?」

「はっ?お前何言って!」

「か、かしこまりました・・・・・・」


 三村が変なことを言うから、メイドさんも困っている。いや、それよりだ、コイツはマジで何を言っているんだ。


「いいだろ?書いて欲しいことなさそうだったし、お前巨乳好きだし」

「いや、巨乳好きって・・・・・・俺は別に」

「綾乃さんのを想像してみろ・・・・・・」


 綾乃の胸・・・・・・ダメだと思った。こんなところで想像してはいけないと俺の中で感じた。


「三村調子乗りすぎ」

「そ、蒼太・・・・・・」

「わ、悪い・・・・・・でも、もうメイドさんは書いちゃったぞ?」


 まぁ、バレないバレない!と俺の方を叩いてくる。仮にバレたとして、その時はすべて三村に責任を負わせようと俺は思っていた。


 蒼太は普通に実行委員お疲れ様と書かれていた。


 俺もシンデレラお疲れ様って書けばよかった。と後悔していた。


「じゃあ食べるか〜」


 そう言って、料理が出てくる前までずっと喋っていたというのに、食事中も行儀が悪いが、喋りが止まらない。


 気づいた時にはあっという間にオムライスを食べ終えていた。


 この教室に入るまでは、胡散臭いと思っていた噂も実際入ってみると、教室を出る頃にはとても幸せな気分と言っていいのかわからないが、悪い気分ではなかった。


「入ってよかったなぁ〜!」

「まぁ、悪くはなかった」

「だろ〜!」


 その時の三村の表情はとても幸せそうな顔だった。噂どおり・・・・・・か。


「何笑ってんだよ!」

「いやっ、噂どおりだなって。たしかに幸せになれるわ、こんな幸せそうな友達の顔見てたら」

「・・・・・・?なんの話だ?」

「いや、なんでもない」


 これに関しては蒼太も気づいてなさそうだった。


◆◆◆


 オムライスを食べたあと俺たちは存分に遊んだ。頭が痛くなるほど遊んで、疲れすぎて今自分の教室で休んでいるところだった。


「ごめん僕、彼女と用事あるから・・・・・・抜ける」

「そ、蒼太・・・・・・俺のこと忘れちまったのかぁ?俺と彼女どっちが大事なんだぁ!」


 とダル絡みをしている三村の首根っこを掴んで


「あー、蒼太行ってきな」


 と手を振った。三村は「蒼太!そうたぁぁぁ!」と叫んでいた。


 お前は役者か!役者なのか?てかよくあんなに遊んだあとに、そんなボケができるなと思ってしまった。


 でも、もうすぐ俺にも連絡が来るのではないかと思っていた。

 午後の1時30分過ぎだった。そろそろ綾乃から連絡がきてもいいんじゃないかと、チラチラと携帯を見てしまう。


 すると、ピロンッとスマホが鳴る。画面を覗き込むと


『遅くなってごめん!今からでもいい?』


 とメッセージが来ていたので『いいよー』とすぐにメッセージを送った。


「三村・・・・・・俺も行かなくちゃいけなくなった」

「お、お前もかっ!」

「まっ、そういうことだ」

「くそっ!これは俺にも早く恋人を作れという2人からのメッセージなのか?!」


 1人茶番をやっている三村を置いて、俺は綾乃の教室に向かった。


 綾乃の教室に行くと綾乃は扉の前で待っていた。なんか、周りのオーラがすごかった。キラキラしていた。


「綾乃・・・・・・」

「ごめんね〜結構時間かかっちゃって」

「いいよ、全然」

「とりあえず、行こっか!」


 ニコッ笑いながら、歩いていく、俺もそれについていくのではなく、隣を歩く。


「どこ行こっか〜」

「行きたいところとかあるのか?」

「ん〜、行きたいところかぁ〜」


 そう言って綾乃はうーんと手を顎に当てて考えていた。


「あっ!一つあった!」

「どこだ?そこ」

「えっとね、メイド喫茶!なんか入るだけで幸せになれるって噂があるらしいの!」


 えっ?ちょっと待って・・・・・・これって、まさかあのメイド喫茶だよな?いや、絶対そうだ。


「あ、あの?綾乃さん?・・・・・・」

「ふふっ!どんな感じなんだろ!」


 ダメだ聞こえてない。楽しみすぎて目がキラキラしてる。

 どうなるんだろう、俺は綾乃とデートそうそう変な汗がたらたらと垂れてきた。


 着々と目的のメイド喫茶まで近づいている。

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