第39話
姉と2人でラーメンを食べに行くのは初めてだ。ちょくちょくご飯などには行ったりするときがあるが、それでもこんな急には誘われない。
なにか裏があるんじゃないかと、最初は姉が運転する車に乗りながらずっと考えていた。
しかし、由美はなにか真剣な話をしようというわけではないらしい。
ただ、単純にラーメンを食べに行きたかった所に丁度タイミングよく俺が帰ってきたらしい。
「姉ちゃん、本当に何もないんだね?」
「だからさっきから言ってるでしょ?本当に何もないって」
「だって怪しいから、何かあるんじゃないかって疑っちゃう」
「私ってそんなに信用ないかな・・・・・・」
そんな話や他愛もない話をだらだらと車の中で10分ほどしたら、由美が言っていたラーメン屋に着いた。
「ここって結構コッテリ?」
「うん!ストレスが溜まった時はここが1番っ!」
「姉ちゃん・・・・・・」
「今日は帰ったらお酒も呑むから!!」
「そうですかい」
じゃ中に入ろうと言って、車から降りる。
「へいらっしゃ!」
もう、なんて言ってるのか分からないくらいの声量でお出迎えをされた。
耳がキーンってなるほど大きかった。
由美はその挨拶を聞いて、ん〜100点だね!と言っている。
実の姉がなんかテンションが高い。
俺は1番オーソドックスな醤油ラーメンを頼んだ由美は味噌ラーメン野菜増し増し、ニンニク少なめを頼んでいた。
「ニンニクは減らすんだ」
「だって、明後日になっても口臭治らなかったら嫌だもん、お客さんに怒られちゃう」
「まさか、姉ちゃんなんかあった?」
「・・・・・・あった」
それからコッテリと重たいラーメンを食べながら由美の愚痴は止まらない。お客さんに言われた言葉とかウザい先輩があざとすぎるとか。
「あー、ストレスでハゲる」
「お母さんとかにも相談したら?」
「相談したよー、ラーメンにも誘ったけど、行かないって言われた〜でもお酒は付き合ってくれるって言ってた」
「よかったじゃん」
そう言うと、泣きそうになりながら、俺の方を見てきた。
「ううっ〜こんなに良い弟が居て嬉しいよ〜」
「別に・・・・・・」
「素直じゃないところも可愛い〜」
「うぜぇ、そういうのは彼氏にやれよ」
それを言った瞬間、由美の表情がピシッという音が聞こえてくるほど固まっていた。
まさかとは思うが、言ってはいけない事を俺は言ってしまったのかもしれない。
「えっ?まさか」
「・・・・・・そのまさかよ」
「じゃあ・・・・・・」
「別れたわよぉ〜!」
うわ〜やってしまった。すぐに後悔した。自分でこれはやってしまったので、最後まで話には真剣に付き合うつもりだった。
時刻はもうすでに、9時30分を過ぎていた。
「もうそろそろ帰ろっか」
「う、うん・・・・・・」
そのあとの車の中はとても空気が重たかった。別に仲が悪くなったとかではないが、気まずいのだ。
もちろんさっきの彼氏の話だ。店を出てから一回もその話に触れていない。
本当にショックだったのだろう。
「ね、姉ちゃん」
「いいって別に、雄星が悪いわけじゃないでしょ」
「でも・・・・・・・・・」
「しつこい男は嫌われるぞ〜」由美はこの言葉を使って、強制的に会話を終わらせた。
もうこれ以上は俺も触れない方がいいと感じとった。
家に着いたあと、由美は急いで冷蔵庫に向かった。その中からビールを取り出している。
きちんと手洗いうがいをしてから、プシュッという効果音と共に、ゴクゴクと飲んでいく。
「くぁ〜これがキンキンッに冷えてるってやつね」
「これがいいのよね〜」と言って、まるで20歳そこそこの発言とは思えなかった。
しかし、そこまでいいと言うのなら、成人してから飲むのがより一層楽しみになる。
俺が由美がビールを飲む姿をジッと見ていると
「あげないわよ!それにお子様はジュースで我慢してなさいっ」
「いらねぇよ・・・・・・」
「じゃあなんで見てたのよ」
「いや、元気になってよかったなぁって思っただけだよ」
そう、ビールが飲みたいとかそんなのはどうでもいいのだ。
「ゆ、雄星ぃぃぃ!」
と言って俺にダイブしてくる。これは本当に危ないので姉にやめてほしいリストに加えておこう。
「姉ちゃん、どいて動けない」
「んー」
「おーい!」
そう言って、顔を上げさせると、もう眠っていた。スースーと寝息を立てて眠っている。
疲れていたのだろう。精神的にも肉体的にも今は休んでほしい。
「文化祭があることは言わない方がいいかな」
疲れてるっぽいし、文化祭の存在を知ったら無理をしてでも来ると思ったので言わないでおこうと思った。
「文化祭行く」
「寝てなかったの?それに聞いてたのかよ」
「そんな面白いイベント行かないわけないでしょ」
「は、はぁ・・・・・・」
「よーし!頑張って次も働くわよ〜!」
酔っているのかビールパワー全開!と言いながら思っている。次第に服を脱ぎ始めた。
「あっつ〜」
「な、な、なんでいきなり脱ぐんだよ!」
「え〜いいじゃ〜ん」
そう言って、紫のthe大人のような下着を履いていた。まだまだ自分は子供なんだと知らされた。
子供の俺には、刺激が強かった。俺に近づいてきた時には、何かされると思ったが今度は確実に眠りについていた。
しかし、下着姿で眠っていた。風邪をひくといけないので、下着姿の姉を起こすしかなかった。
姉に寝巻きを着てもらい、自分の部屋に行ってもらう。
酔っ払った姉を介抱するのはとても大変だった。しかしたまにはこんな一日もありかなと思ってしまうから、難しい。
大変なことはやりたくないことが普通だと思っているのに・・・・・・
由美はスースーと気持ちよさそうに眠っている。
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