第38話
「えー、それでは文化祭の実行委員を決めたいと思いまーす。誰か立候補は居ませんかー?」
実行委員を決めるためにホームルームの時間を使って決めようとしている。
しかし、やはり決まらない。まぁこうなることは予想できた。というよりも予想通りだ。
「ど、どうしましょう先生・・・・・・」
「本当に誰かいないのかー?」
このパターンは誰も決まらないから、先生が勝手に決めるパターンかクジで決めるパターンのどっちかだ。
「クジで決めるぞー」
ほらきた。俺は自分の予想が当たって、なんかアニメみたいな展開だな。そう感じた。
なんか、俺が当たりそうな気がしたのだが、俺はハズレだった。つまり、実行委員はやらなくていいらしい。
実行委員は2人決めるらしい。1人は蒼太、もう1人は白坂がやることになった。
当たりのクジの人と自分のハズレのクジを交換してやったらしい。
本当にいいやつだな。いい奴すぎて逆に怖い。
「蒼太〜頑張れよー」
「まぁ、なったからにはやるけどさぁ・・・・・・」
「まぁまぁ、蒼太。いい知らせがあるぞ?」
「なに」
三村が何かニヤついた顔で俺たちの方を見てくる。それがやけに腹立つ。俺は深呼吸して心を落ち着かせる。
「実はな・・・・・・白河さんが実行委員らしいぞー!」
「それって・・・・・・・・・黒田だけ特じゃん」
「なんでそこで俺が出てくるんだよ」
「いや、だって黒田好きじゃん」
「いや、そうだけど、他の男も嬉しい奴はいるだろ」
はぁ、またコイツはみたいな顔で三村と顔を合わせて蒼太は俺のことを見てくる。
たしかに、俺も流石に自分がヘタレすぎることを最近感じてきていた。
小学生の時の方が性格的にカッコよかったんじゃないかと・・・・・・ゔっ、胸が痛い・・・・・・
「とりあえず、何かあったら俺は手伝うぞ?」
「いや、俺たちって言えよ。じゃねぇと俺が手伝わないみたいじゃんか」
「うん、大変そうだったら頼るけど、相方が白坂だから要らないかも」
と笑いながら蒼太は言ってきた。
気づいていたのにあえて触れずに喋っていたところをえぐってくる。
「蒼太・・・・・・そんなこと言われたら、手伝う気失せるよ。あっ、手伝うことがないかもしれないのか」
なんか一瞬で空気が重くなった。
「手伝って欲しいとき言うねー」
「あぁ」
俺と三村は見つめあって、苦笑いをした。
◆◆◆
俺と三村は放課後、ファストフード店でポテトをつまみながら、話をしていた。
「やっぱり、何やりたい?」
「ん?なにが?」
「文化祭だよ!ぶんかさい!」
「あぁ、俺は裏方の仕事でいいから基本的になんでもいいよ」
「はぁっ?つまらない男だなぁ」
つまらないと言われ胸にグサッとくる一言だった。
逆に文化祭で、楽しいとはなんだ?
「自分が楽しいと思えれば良くないか?」
「まぁ、そうなんだけどさ。もう少し冒険してもいいんじゃないかと俺は思うぞー?」
「冒険?」
三村がなにやら意味ありげなことを言ったので食い気味に聞く。
「たとえば、メイド喫茶やるとするだろ?」
「お、おうっ」
「そこでお前がメイドさんをやるんだよっ!」
「は?なんで?男の俺がメイドやるわけ?」
「いや、そんな真顔で言わなくても・・・・・・」
大体なんで俺がメイドをやるのかが分からなかったウチのクラスの女子じゃダメなのだろうか。
「ウチのクラスの女子じゃダメなのかよ」
「そういう意味で言った訳じゃない」
「じゃあどういう意味だよ」
「お前が女装して、メイドするんだよ」
「俺にそんな趣味はない」
「もしかしたら今回やってハマるかもしれないぞ」
そんなことある訳ない。と思いたいが人間何があるかわからないので、「絶対ない」とは言い切れなかった。
「そういえば三村は何やりたいんだよ」
「俺は今言ったろ、メイド喫茶だよ」
「あー、やっぱりそうなんだ」
「でもなんか、女子の勢い的に今回は劇になりそうだよなぁ」
三村曰く白坂を王子とか、そこら辺の主役にして劇をやりたいらしい。
拒否権がなさそうな白坂には少し同情した。やりたくない役でもアイツだったらやりそうだなと思ってしまった。
「でも、白坂は実行委員があるから多分だけど劇での主役は難しいんじゃないか?」
「あー、そうかもな」
劇をするとなると芝居の稽古などをやると思うのだが白坂は実行委員なのでクラスに顔を出さない時が、ちょくちょくあるだろう。
そういう点を踏まえると白坂がセリフの多い主役わやるのは難しいだろう。
「ただ、難しいだけであって不可能ではない」
「そうだな、白坂だったらなんか笑顔で頑張るよって言いそうだよな」
「断るということを知らない男だ」
三村が「もう少し自分を大切にしろっ」と言ってここには居ない白坂に対して怒っている。
こういうところを男の俺ではなく、女性の誰かに見せればもう少しマシな付き合いはできると思うのだが・・・・・・本人に言うと、調子に乗りそうなのでやめておく。
「それはそうと、お前残念だったな実行委員なれなくて、実行委員に選ばれたら白河さんと一緒になれたのになぁ」
同情するぜと言って肩に手をポンと置いてくる。別に同情されるようなことをした覚えはない。別に
「いやいやいや、なれるとは決まってないだろっ」
「そうかなぁ、かなり脈アリだと思うぞ?」
「やっぱり、脈あるかなぁ」
「あれでなかったらもう誰も付き合えないだろ」
たしかに?俺はどう言ったらいいのかわからなかったが、なんか三村に元気をもらった気がしたので帰りにバーガーを一つ奢ってやった。
三村と別れた暗い夜道を歩きながら、家に着くと見覚えのある靴が一足玄関に並んでいた。
「ただいま」
「おかえり〜!」
「ゲッ・・・・・・姉ちゃん」
「なによ!ゲッって」
「帰ってきてたんだ」
そう聞くと「まーねー」とあっさりした返しがきた。
「ねぇ、あんたお腹空いてる?」
「いや、今食べてきたけど・・・・・・」
「育ち盛りの男子だったら食べれるか!」
「は?何の話?」
なんか、俺が話をさせてもらえない速度で由美は話を展開させていく。
「ラーメン食べ行こ」
「今から?」
「いまから!」
そう言って、由美「ラーメンラーメンー!」と言って嬉しそうだった。
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