第35話

 綾乃に連絡をしないといけないといけなくなってしまった。

 スマホを片手にメッセージを打ち込む。


 すると、すぐにメッセージが返ってきた。


『いいね!やろう!』


 白河はとてもフットワークが軽いのだろうか、すぐに綾乃の参加が決まった。

 どうやら用事はないらしい。


「黒田〜?綾乃さんは誘えたかー?」


 三村が気の抜けた声で俺に聞いてくる。


「聞いたよ、やってもいいってさ」

「よくやった!!いっぱい教えてもらおー」

「おい、あんまり迷惑かけるなよ」

「わかってるってー」


 三村は軽い口調で「わかった」と言っているが、こんなにも軽いとちょっと心配だ。


◆◆◆


「そろそろ始めよっか!」


 放課後、あまり人が来ない図書室に集まる。


 なんたって静かでいい場所だ。案外図書室は学校の中で1番いい教室なんじゃないだろうか。


 進め方は、各々が勉強して分からないところを、わかる人に聞くという、よくある普通の方法だ。

 シンプルで1番効率がいいと思う。


「あっ、そこ間違ってるよ〜?黒田くん」

「えっ?どこどこ?」

「ん〜とね〜」


 尾鳥さんが俺に教えるために、席を立つ。しかしなぜか白河の方をみて、自分が座っていた椅子にもう一度座った。


「あれ?尾鳥さん?」

「やっぱり教えてあげな〜い」

「・・・・・・え?」


 えっ?尾鳥さんって実はS?それとも俺のこと嫌いなのか?自分で考えて後者は傷つくので、勝手に前者で俺のことをからかっているのだろうと、勝手に決めつけていた。


「私は、そーくんに教えないと〜。そういう事だから綾乃ちゃん教えてあげて〜」

「う、うん!いいよ!」

「えっ?でも・・・・・・」

「なによー?その不満そうな顔〜あっ!私だと力不足って言いたいのかな?」

「い、いえっ!不満なんて・・・・・・綾乃先生教えてください」


 任せなさいと胸をポンッと叩いている。

 ぐっ、可愛い・・・・・・果たして、集中できるだろうか・・・・・・


「わ、わかりやすい・・・・・・」

「なにその驚いた顔〜」

「い、いや正直びっくりした」

「ふっふっふっ〜凄いでしょ〜」


 綾乃は褒められたからか、上機嫌になっている。


「白河さん〜俺もわかんないですー」

「あっ!はいはいー」


 今度は三村の方に綾乃は教えに行った。


 尾鳥さんと綾乃が男子3人に教えるそんな感じの勉強会だった。でもなぜか尾鳥さんは俺に教える時綾乃の手が空いていたら、綾乃に譲っていた。


 まさか、本当に俺のこと嫌いだったりして・・・・・・


「じゃあ、そろそろお開きにしよっか!」

「え〜もうちょっとしたいでーす!」

「あはは、そういうわけにもいかないかなー」


 綾乃は微笑みながら延長したいという三村の願いを優しく却下する。


「うわーん、黒田ー白河さんがいじめる〜」

「三村めんどいからやめような」

「へいへい」

「っていつもならなるんだけど、実際俺もすごく分かりやすかったから、もっとやってもいい」


 俺は素直に自分が感じたことを言葉にすると、喋る内容を紙にでも書いてきたのかというほど、案外すらすらと言葉が出た。


「え、えへへ〜」

「嬉しいな〜そんなこと言ってもらえて〜。私たちも教えた甲斐があったよ〜」


 2人は上機嫌になっていた。放課後の時間を使ってまで教えてもらったので、2人には本当に感謝だ。


 荷物をバッグに詰めて、図書室を出る。


 そして、そのあとご飯をみんなで食べると言って近くのファミレスにきた。

 こういう時間が1番楽しくて、なんだかんだ好きだ。


 そして勉強後の空腹を満たしたあと、蒼太は尾鳥さんと帰って、三村とはファミレスで別れた。


 綾乃とは方向が一緒なので、自然と一緒に帰っている。


「よかったぁ、ちゃんと教えられるか心配だったんだよねぇ〜」

「すげぇわかりやすかったぞ」


 綾乃はホッとため息をついている。


「あ、あのさ!」

「ん?どうしたの?」

「こ、今度の日曜空いてる?」

「・・・・・・・・・」

「空いてないんだったら、無理しなくても」

「空いてるっ!」


 すごくニコニコした表情で、返事を返してくる。今度はもっと自然に誘おう。なんか緊張しすぎて、噛みそうだったし。


「でも、急にどうして?」

「いや、それはその・・・・・・」


 そう言われると、なんだろう。2人で行きたかったから?欲しいものがあるから?俺は頭が混乱していた。


 綾乃はそんな俺をみて首を傾げている。


「ヒ、ヒミツ・・・・・・」

「えっ〜、なにそれ〜」


 咄嗟に出た言葉がこれだった。本当にヘタレだ。2人で行きたかったと言えばよかったと後悔した。


「まっ、いっか!じゃあ!今度の日曜日!」

「あぁ、またな」

「ふふっ、楽しみで寝れないかも」

「いや流石に明日学校だし、ちゃんと寝ろ」

「わかってるよ〜もうっー」


 あははっ!と綾乃は笑っていた。綾乃とは日曜日に遊ぶ約束をしたあと、彼女は俺に手を振りながら自分の家に入って行った。

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