第33話

 2年1組がまさかここまで強いとは思わなかった。バスケ部が数人いるとしても、佐々木とはレベルが違う。


 しかし、バスケ部はハンデがありシュートはすべて1点というハンデだ。


 しかしそんなハンデ最初から無いようなもので、バンバン点数が入っていく。


「ちょっ、これ、絶対負けた・・・・・・」

「強すぎる」


 コート内の陽キャ達も、さすがにネガティブな言葉が飛び交っている。


「俺にボール集めろっ!」


 佐々木が1人で大きな声でボールを呼んでいる。しかし、ボールを集めても抜けない。無理やりシュートを打って入らない。


 そんな試合展開のまま、後半戦俺ら補欠組の番になった。


 すると、綾乃の表情がなんか、にこやかになった気がする。自分がコートに入ったからなんて・・・・・・自意識過剰すぎるだろうか。


「さっ、頑張るか〜」

「黒田っ」

「わかってる・・・・・・勝ちたいよな、くろみに謝らせたいのは俺も同じだ」

「ありがとう」


 俺は試合前、どうしてもこの試合に勝ちたいことを教えてもらった。

 どうしてもくろみに謝らせたいらしい。そして、いつも下に見てきた佐々木達を見返したいらしい。


 俺もそれにはすんなりOKを出した。


「落ち着いていけば勝てるよ」

「ほ、ほんとう?」

「うん、お前ら体力とかは無いかもしれないけど、器用だろ?」


 そう言って、後半が始まる。


 さっきはジャンプボールであったからだったので次は俺たちの攻撃から始まる。

 俺はボールを持って少しドリブルをしたあと、いきなりスピードを上げて、すぐに1人抜き点数を決める。


 周りからは「おぉ〜」という声が聞こえてきた。


 そのあとは、バスケ部の奴がマークについてきたが抜けない訳ではなかった。


 しかし、1、2回くらい抜いてしまうと、もう対応され始めて、さすがバスケ部だと感じた。

 さすがにもう抜かせてはくれなかった。


 しかし、補欠組でもシュートが入る奴にパスを出し、今度は俺が囮になる役になった。


 その時はいつもの体育よりみんなのシュート率が良かった。

 舐めてもらっちゃ困るなんせ俺たちは、あっちのクラスとは熱量が違う。


 そしてまさかの、勝利してしまった。


 みんな驚いていた。

 そりゃそうだ、誰も俺たちが勝てるとは思ってなかったのだから。


「雄星くん!」

「あ、綾乃?」

「んーと、なんて言ったらいいのか分からないけどとにかく凄かった!次も頑張れ!」


 「じゃあね!」と言ってすぐに体育館から出て行ってしまった。

 それで気が緩んだのか、俺は一歩前に足を出した時、ピンッと衝撃が走った。俺は左足を攣った。


 その次の試合は見事3年生に完敗しました。


◆◆◆


「くろみ、なにか言うことあるだろ」

「・・・・・・・・・ご、ごめんなさい」


 くろみももっと素直になればいいのにと思った。


 あのあと少し駄々をこねたのだが白坂に強めに言われさすがに心に効いたのだろう、しょんぼりしているのが目に見えてわかる。


 佐々木はというと、綾乃にあのあと自分の活躍を聞きに行ったが「ごめん見てなかった」と言われ自分には脈がないと落ち込んでいた。


 フッ、ざまぁ。すぐにこう思ってしまった。

 俺は案外性格が悪いのかもしれない。


「ありがとう。黒田くん」


 委員長が俺にお辞儀してきた。綺麗なお辞儀に見惚れていた。


「いや、俺は何もしてないよこの結果になったのはみんなで頑張ったからだよ」

「うん、みんな凄かったっ・・・・・・」


 少しは気が楽になったのだろうか、少しだけ口角が上がっていた。


 俺たちはそのあとに閉会式と成績発表をして、体育祭が終了した。

 

 閉会式のあと俺はメッセージで綾乃に呼び出された。


 誰もいなくなった教室に呼び出され、俺たちは2人きりになった。

 なんだこの緊張感。変な空気が漂う。


「どうしたんだ?綾乃」

「雄星くんは、好きな人いる?」

「・・・・・・いるよ」

「私もいる」


 その返答になんかちょっとドキッとしてしまった。ここで俺に言ってくる理由はなんだ?とずっと頭の中で考えてしまう。


「前に言ってた、小学生の時から好きな人?」

「うん・・・・・・誰だと思う?」


 と顔を近づけて、下から覗き込むように、ニッコリと俺に向かって微笑みながら聞いてくる。

 今、目を見ると照れてしまうので目線を下にすると今度は胸に目がいってしまう。


 早く問いに応えないと、俺は正気に戻り、改めて誰が好きなのかを考える。


 もしかしたら俺なのかもしれない。というより俺しかない。そう思っていた。

 今日はやっぱり自意識過剰かもしれない。


「それって、お、お・・・・・・」


 ピンポンパーンとスピーカーから音が鳴る。


 「内容は実行委員の皆さんと体育委員はすぐに3年1組の教室に集まってください」


 と言う内容だった。


「あっ!私実行委員だった!ごめん!行くね?」

「あっ・・・・・・うん」


 冷静に考えてみたら、俺はなんて恥ずかしいことを言おうとしていたんだ。

 そう思い、一気に顔が赤くなる。


「はぁ〜私はなんでいつもこうタイミングが悪いんだかな〜」


◆◆◆


「あっ、白河さんちょっと待ってくださいっ」

「どうしたの?」

「えっと、突然こんなこと言うのはアレですけど、黒田くんってかっこいいですよね?」

「え?う、うん、」

「私も今日バスケしている彼を見てカッコいいと思いました」


 えっ、なになに、この子って黒田くんのクラスの委員長だよね?まさかこの子も雄星くんのことを?


「突然ごめんなさいっ!その、好きなんですか?」

「・・・・・・・・・うん、大好きだよ」

「そ、そうなんですね」


 あきらかに顔が赤くなっている。なんだろうこの気持ち、雄星くんがカッコいいって言われて嬉しい気持ちと、このモヤモヤ・・・・・・ほんとなんなの!


「あ、私は黒田くんじゃなくて、白坂くんのことが好きなので大丈夫ですよ」

「あっ?いや、うん」


 なんだぁよかったぁ、自分でもびっくりするほど安堵してしまう。


「私も可愛くなれるでしょうか・・・・・・」

「なれるよ、絶対なれる!」

「ほ、本当ですか?私なんかが」

「私もそうだったからなれる!」


 女の子が可愛くなれないことなんてない。いくらでも可愛くなることはできるんだからっ!


「ちょっといい?」


 そう言って彼女のメガネを外す。


 びっくりした。とっても大きな瞳。すごく可愛らしい表情。


「ごめんね、私もう帰るね?」

「あっ、はい。すみませんお手間をかけてしまい」


 そう言ってぺこりと頭を下げている。


「あっ、メガネを外して、コンタクトにするだけでも変わるかも、あなたとってもかわいい!」


 そう言ったはいいものの、内心めっちゃ安心した


「よかったぁ、ライバル増えなくて・・・・・・とっても可愛いんだもんあの子、雄星くんのばかっ!もうーライバル増やしちゃうことしないでよー」


 わたしって独占欲強いのかなぁ・・・・・・

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