第29話
今日は待ちに待った体育祭。というわけでもなくただ、ただ今日髪の毛を切ったことを少し恥ずかしく感じる。
なんか言われたらどうしよう。だとか、からかわれたらどういう対応をしようなどそんなことばかり考えていた。
学校に着き、教室に入ろうとガラガラッと前の扉を開けると、教室にいた生徒のほぼ半数が俺のことをジッと見ていた。
すると三村と蒼太が近づいてきて俺の前にくる。
「おおっ〜本当に変わったなぁ」
「うんうん、前より全然いい感じ」
「そ、そうか?自分では結構恥ずかしいんだけど」
三村と蒼太は大丈夫、大丈夫と背中叩いてくる。
「えっ??お前黒田か??」
そう言って俺の方に近づいてきたのは佐々木だった。
俺が髪を切ったのに興味を持っているのか、ジッと俺の髪の毛を見ている。
「気合入ってんなぁ〜??」
「別に、そんなんじゃないよ」
「こりゃ楽しみだ!ははっ!」
そう言って、俺のことをからかうような言い方で言ってくる。
「黒田、髪の毛切ったんだね凄く似合ってるよ!」
「ありがとう白坂」
「黒田、佐々木のこと悪く思わないでくれ、アイツは今日の体育祭を本当に楽しみにしてたみたいで、凄く気合が入ってるんだ」
「・・・・・・・・・大丈夫、そんなこと思わないから」
別に髪の毛を少しいじられただけで、俺は怒らない。
いつもは髪の毛が長い人がいきなり髪の毛を切るとなると珍しく感じてイジってしまうのは、あるかもしれないからだ。
よりによって体育祭の前の日に髪を切ったのでそう思われても仕方ないと考えていたので、今回は佐々木がウザいとは思わなかった。
まぁ普通の反応だろ、くらいで流していた。
「じゃあ外で体育祭の開会式始めるから、外に移動するぞー」
担任の先生にそう言われて、俺たちは外に移動する。
外に移動したら、番号順に並んで、開会式が始まるまで待機している。
「これから体育祭の開会式を始めます」
とアナウンスが入り、まずは校長の話。いつもいつもなんでこんなに長いんだろうと感じることがある。
次に注意事項などを話したあと体育委員が選手宣誓をして体育祭1日目が始まった。
俺たちは開会式が終わったあと、俺たちの試合はまだ時間があるので、教室に戻る。
開会式が終わったあとの教室は少し緊張感に溢れていた。
三村が、教室に入るなり机に顔を伏せているのでどうしたものかと思い、蒼太もいないことが気になったので、聞いてみた。
「あれ?三村、蒼太は?」
「ん」
三村は蒼太の場所を指でさしている。
すると、蒼太が女の子と一緒に写真を撮っていた。
多分三村はアレを見て、嫉妬と悲しさでメンタルが今ヤバいことになっているのだろう。
まぁ、この3人の中でリア充は蒼太だけだからな。
すると、バッと勢いよく、三村が起き上がる。そして、仏のような顔で、蒼太に近寄っていく。
「蒼太、もうそろそろ時間だよ」
「えっ?まだ時間じゃなくない?」
「そーくんはなに出るんだっけ〜?」
蒼太の彼女は
まぁ、蒼太にベタ惚れしている。
「ドッジボールだけど、まだ時間じゃないような気がするんだ。三村、嘘ついてないよね?」
「僕が嘘つくわけないじゃないか、ほほほほほ」
「うわぁっ、なんかキモイ」
「そーくん、言葉遣い悪いよ〜?」
「ごめんな?尾鳥さん、コイツ借りるよー」
そう言って、三村が蒼太の襟を掴み引きずるようにして、移動していく。
俺も尾鳥さんにお辞儀を一礼して、三村の方に向かう。
「ねぇ、三村全然時間違うじゃん」
蒼太がキレ気味で三村に向かって言う。
すると三村の顔が仏のような顔から、凄い鬼のような怒りの顔になった。
「お前は今から俺とドッジボールの特訓だよ」
「な、なんで今から・・・・・・」
「つべこべ言わず行くぞー!」
そう言って、ドッジボールのボールを投げようとした時、生徒指導の先生に三村が捕まった。
「お前今、ボール投げようとしたか?」
「えっ・・・・・・?いや?」
「そっちの2人もか?」
俺たちは巻き込まれたくなかったので、2人で勢いよく頭を横に振る。
三村は泣きそうな顔でわざとらしく、瞳をうるうるさせて、こちらを見てくる。
俺と蒼太は、三村のその瞳を見なかったことにしめ教室に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます