第25話

 半コートで3対3をすることになった。これを提案したのは、佐々木だ。

 3対3をする分には全然いいのだが、相手が補欠組というのがなんとも言えない。


 3体3が始まった。やはり動ける陽キャ、点をどんどん入れられる。

 佐々木が点を決めた。佐々木は「よっしゃ!」と言いながら、後ろをチラチラと見ている。


 なにを見ているのかと気になり、佐々木の視線の方に目を向けると、先程体育館に入ってきた、綾乃達がいた。


 はぁ、コイツは・・・・・・もしかして考えて過ぎかもしれないが、女子に見られたいからこの提案を持ちかけたのかもしれない。


「ナイシュー佐々木!」


 白坂が佐々木に寄ってきてハイタッチをする。2人ともニコニコ笑っているので、やっぱり考え過ぎかと自分の中で反省した。


「白河さん見てくれたかなっ!?」

「さ、さぁ・・・・・・あははっ」


 前言撤回、やはり合っていた。やめとけ佐々木、あんなに優しい白坂ですら、引いたような反応だぞ。


 というよりも、補欠組が陽キャ達にディフェンスできないのだ。

 白坂や他の人はどんどん当たっていいと言ってくれるのだが、佐々木だけが少し触っただけで、煽るようにファールと言ってきたりするのだ。


 まぁ、そんなことなくても陽キャには触ってはいけないみたいな、暗黙のルール的なのが補欠組にはあるらしい。


 俺は別にそういうのはないが、佐々木だけは流石にウザいと感じたので本気でディフェンスをした。


「クソッ!」


 すると佐々木は段々と自分のプレーが出来なくなってイライラしたのか、佐々木のプレーが先ほどよりも荒くなってきた。


 また、佐々木にボールが渡った時ピッタリと張り付くように守ると、無理やり体を押し込んできた。


「邪魔なんだよっ!」


 佐々木が上に飛んだその瞬間、佐々木の肘が俺の鼻に当たった。

 痛かった。するとツラーっと鼻血が出てきた。


「大丈夫か?黒田」


 みんなそう言って寄ってきてくれた。佐々木もやってしまった、といった表情だった。


「俺ちょっと外で休んでくる」

「あ、あぁ・・・・・・」


 そう言って、俺は赤くなった鼻をおさえながら、体育館の外に出た。

 洗面所に行き、水で鼻のあたりを洗う。その後持ってきていたタオルで鼻のあたりを拭いて。


 洗面所の外の椅子に腰掛けた。それと同時にため息が出た。


 鼻の痛みや強制的な練習参加で心身共に疲れたのだ。


「雄星くんっ!大丈夫?」


 横から、俺の名前が呼ばれたので振り向く。まぁ誰が俺を呼んだかは、振り向かなくてもわかった。

 俺を名前で呼ぶのは学校では綾乃くらいしかいない。


「うん、大丈夫」


 鼻の痛みはあるが、鼻血はそこまで出なかったのでよかった。

 すると綾乃は俺の隣に座ってきた。


「よかったぁ〜心配したよー見たら鼻おさえて外に行くんだもん、聞いたら肘鼻に当たったって言ってたから」

「あー、大丈夫・・・・・・多分」

「痛みが残ってたら病院に行くんだよ?」


 そこまでではない気がするが、「うん」と言って立ち上がる。


「あれ?もう行くの?」


 そう言って俺を引き止めてくる。鼻血も止まったし痛みもだいぶ無くなってきたので、行こうとしたのだが・・・・・・


「ずっとここに居てもやることないし」


 それを聞いて閃いたような表情で、俺の方をジッと見てきた。


「じゃあ私とお喋りしようよ」


 俺はそれを綾乃の口から聞いた時、夢なんじゃないかと思ったが、まだ、鼻の痛みが残っていたので、夢じゃないと気づいた。


「綾乃は友達と遊ばなくていいのかよ」

「私も、もう疲れちゃった」

「そっか・・・・・・」

「それで?私とお喋りする?」


 俺は黙ってコクッと頭を縦に振ってスッと自分が座っていた所にもう一度座る。


「ふふっ、素直ですねぇ〜」

「うるせ」


 口ではそう言っていたものの、顔は赤くなっていたし、口許も緩くなっていたと思う。


 気づかれないように、綾乃の方を見ると耳まで赤く染まっていた。


 ◆◆◆


「じゃあ、そろそろ私戻るねっ?」

「あっ、うん」

「元気出たみたいでよかった!」

「えっ?元気?」

「うん!元気ないみたいだったから」

「元気が出たのは、良いことがあったから」


 綾乃は俺のその一言を聞いて、「良いこと?」と頭を傾げていた。


「綾乃と喋れたこと」

「・・・・・・・・・な、な、なに言ってるの!?も、もう行くねっ!」


 一気に顔を赤くした綾乃は顔を手で隠しながら勢いよく戻って行った。


 俺は綾乃が行ったあと、自分が言った言葉がとても恥ずかしいことに気づいて、顔がジンジンと熱くなっていくのがわかった。

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