第23話

「じゃあ、みんな昨日言った通り、考えてきてくれたかな・・・・・・?」

「まぁ、一応・・・・・・」


 納得してくれるかはわからないが、はっきり無理だと言えば、周りも一緒に言ってくれるだろう。


「じゃあ今週の土曜日バスケ練習してもいい人!手を上げて!」


 手を上げたのは、陽キャグループだけだった。

 佐々木はそれを見て明らかに苛立っている。白坂はこうなる事を悟っていたのか、うんうんと頷いている。


「そっかー、それじゃあ僕たちだけ練習になっちゃうなぁ・・・・・・」


 うーん、と悩んでいる白坂を見て、すまんな白坂お前はいい奴だが、俺たちのことをわかっていない。


 佐々木はどうも苦手だし、他のメンツもあまり絡まないので、気まずいんだ。

 わかってくれ・・・・・・白坂。


「困ったなぁ・・・・・・」


 はぁっ・・・・・・と白坂が大きなため息を吐いた。その時、周りの女子がこちらに、ぞろぞろと寄ってきた。


「どうしたの?優太くんため息なんかしてー」

「あっ、いや、なんでもないよっ」


 ニコッと眩しい笑顔を振り向くと、周りの女子はキャッー!と叫んでいる。

 耳に響くからやめてほしい。いきなり耳元で叫ばれるこちらの身にもなってほしい。


 はぁ・・・・・・どれだけ綾乃と居るのが楽なのかがわかった。


「う〜そ〜!優太のその顔絶対何かあるときの顔だもーん」


 そう言って白坂の頬をツンツンしているのは、白坂と同じ中学だったという、原崎はらさきくろみ、なんでも中学の頃からずっと白坂に片想いらしい。


 高校に入って告白されたが、ずっと白坂は断っているらしい。

 なんでも、好きな人が居るとかで・・・・・・


 原崎くろみはこのクラスの女子のリーダー的存在だ。

 俺は全く絡んだ事がない。噂によれば性格が良くないらしい。あくまで噂だ。


「や、やめて・・・・・・くろみ」

「で?なに悩んでるの?」

「じ、実はみんな予定があって、週末バスケの練習ができないんだ」

「ふーん・・・・・・」


 そう言って、くろみは俺らの方を睨んでくる。なんかとっても嫌な予感がする・・・・・・


「あんた達ぃ〜?本当に予定あるの?」


 そう言って、指をさしてくる。


「あんたは?予定あるの?」

「お、俺は最新のゲームが・・・・・・」

「予約してないの?」

「いや、してるけど・・・・・・」

「じゃあ、あんたはバスケ練習参加ね」


 そんな感じで、どんどんバスケ練習反対派を賛成派に無理やり引き込んでいた。


「じゃああんたは?」


 ついに俺の所に回ってきた。このために理由をずっと考えてたんだ。

 しかし、今ここで変な事を言うと絶対、くろみのいいように言われてしまう気がする。


 だったら、答えは簡単。シンプルが1番だ!


「俺は普通に行きたくない、めんどくさい」

「はぁ?そんな理由?バカね」

「ちゃんとした理由だろ」

「うるさいっ、あんたも参加」

「はぁっ?勝手に決めんな」

「・・・・・・あんた、なんか言った?」


 物凄い眼力で俺を睨んできた。これが最終警告と言わんばかりの表情だった。


 それでも、嫌なものは嫌だと伝えたほうが


 そう思った時、同じ補欠組のメンバーの1人が、俺の制服の裾を掴んできた。

 振り返ると、頭を横に振ってきた。


 やめといた方が良いという事だろうか。


 たしかに、この雰囲気で俺の味方に着く者は誰一人としていない気がする。


 俺はくろみの圧と周りの空気に流され、バスケ練習に参加することになった。


「ちょっと、くろみさん、無理やり参加させるのはダメだよ」


 と、くろみの背後から委員長の声が聞こえてきた。


「なっ!?び、びっくりしたぁ・・・・・・暗いのよ!あんた、それに無理やりじゃないし、あーやだやだ、こんな堅い女」

「大丈夫だよ、委員長、俺らがやりたいんだから」


 1人の補欠メンバーが委員長に言う。このまま長引いていたら、委員長がくろみの標的にされかねないからな。


 ここは、男としてよく言ったと褒めてやりたい。


「で、でもっ・・・・・・」

「はっ?コイツらが言ってるのに信じないの?」


 委員長もうやめてくれ、空気が異常なくらい重い。


「はーいっ!席つけー!」


 気づいたら昼休みが終わっていた。先生が教室に入ってきて、やっと解放された気分だ。

 補欠メンバーは全員憂鬱になっている。


 三村が手を合わせて、ご愁傷様です。とやってきた時は、本当にイラついた。


 あんなに夜、理由を考えたのに・・・・・全部無駄になった、だったらゲームでもすればよかった。

 と時間を無駄にした事を後悔した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る