第21話

 体育祭に出る種目やスローガンが決まり、みんな体育祭に向けて意気込んでいた。


 その中でも1番すごいと思ったのはバスケのメンバーで陽キャの1人がバスケットシューズを買ったというのだ。


 これを聞いた時は流石に驚いた。体育祭では学校指定のシューズしか履けないので買ったところで使えないのだ。


 しかし、「練習ならできるだろっ?」と言われた時は、流石に眩しすぎて直視できなかった。


 今の俺には流石に無理だと感じながら、体育祭は陽キャの皆さまに頑張ってもらって俺は死なない程度に頑張りますか・・・・・・


 とそんなことを静かに心の中で思った。


 そんな日の放課後、バスケのメンバーは教室に残った。

 なにやら作戦を立てるらしい。


「それじゃあ、まず誰が前半に出るか決めよう」


 とリーダー的存在でサッカー部のキャプテンでもある白坂優太しらさかゆうたが話を進める。

 顔が良い。性格も良い。リーダー的存在。まぁ、こんな調子だから、女にはモテモテだ。


 サッカー部のキャプテンなのに、ここで話し合いしてていいのかとツッコミたくなった。


「サッカー部は今日オフだから、今日しかないかなって思って」


 まるで俺の心を読んだかのように、ニコッと笑顔を見せた時に眩い光を周りに放っていた。


 そんなこんなで話し合いは45分くらい続いた。


 体育祭は絶対に1人は一種目試合に参加しないといけないというルール的なものがあるらしい。

 なので、俺は後半から出るようになってしまった。


 まぁ、後半って言っても途中違う人と交換するんだけど・・・・・・


 陽キャに全ておまかせは無理だった。


「それじゃあ、今週末近くの体育館借りて練習しような!」

「えっ?」


 つい声が出てしまった。さすがに急すぎると思った。


「なんだよ黒田」

「いや・・・・・・その急だから、みんな予定はどうなのかなって思って・・・・・・」

「俺たちはいけるぜ?なぁ?優太」

「僕たちは行けるけど、黒田や他の人達が行けるとは限らないよ」


 この、俺に突っかかってきたのは佐々木、一年生の時バスケ部だったのだが、4、5ヶ月でキツすぎてやめたらしい。


 こんな空気になるとは思わなかった。クソッ!面倒なことにならないといいけど・・・・・・ってもうなってそうで怖い。


「ご、ごめんっ僕今週末は用事が・・・・・・」


 そんな空気の中、俺と同じバスケの補欠だった1人が言った。

 すると、ゾロゾロと同じ補欠仲間が俺も俺もと抜けていく。


 気持ちはわかる。大事な週末を使われたくない気持ちは大いにわかる。


 だが、今この空気感でそれをすると・・・・・・


「お前らふざけてんのかっ!!」


 ほらやっぱり・・・・・・俺は心の中でため息をついた。ため息を表に出さなかっただけでも褒めて欲しい。


 佐々木はなぜかバスケ部だったからって威張っているのだ。

 陽キャグループ以外を多分下に見ている。俺もその内の1人だろう。


「なんの用事があるんだよ!言ってみろっ!」

「ぼ、ぼく?!え、えっと・・・・・・そのっ」


 キョロキョロと周りの奴らを見ているが、誰も目線を合わせようとしない。

 みんな下を向いている。最後に俺の方を見てきた最後の頼みなんだ、と言わんばかりの目だった。


「まぁまぁ、その辺にしといてやれ・・・・・・」


 佐々木の肩に手を置きながらそう言うと、今度は俺の方を睨んできた。


「だいたいなぁ、お前があの時口を挟んでこなかったら、こんな風になってなかったんだぞ!」


 次は俺が標的にされた。こんなのを相手にしていると、さすがに疲れると思い。

 佐々木の言うことを黙って聞くことにした。


「し、新作のげ、ゲームが出るんだ・・・・・・」

「はぁ〜?新作のゲームぅ?」

「う、うんっ、ご、ごめん」


 俺に助けを求めてきた1人が、勇気を出して、いけない理由を話した。


「そんなのいつでも買えるじゃねぇかよ!そんなんだから・・・・・・」

「ストッープ!」


 佐々木が続きを言おうとした時、白坂が止めに入った。

 とてもいいタイミングだった。しかし、止めるのならもう少し早くしてほしかった。


 白坂に止められたので、納得のいかない佐々木も納得するしかないが、苛立ちを隠せない様子だった。


「じゃあ今日はここまで!話し合いはまた明日!それまでに、今日言ったこと考えてきて」


 できる男優太1日の猶予を俺らにくれた。佐々木とは大違いだ。


 とても腹が立っていた。俺は嫌いな奴はあまりいない。と自分の中で思っていたが、それは出会ってないだけで、俺は佐々木のことが嫌いなのかもしれない。


 ひとまず、話し合いは終わったので、俺は即座にバックを背負って教室を出る。

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