第16話

 白河の家に寄る前に、スーパーに寄って頼まれた物を探していた。


 2リットルのスポーツドリンクを一本、500mlのスポーツドリンクを4、5本買っていけば大丈夫だろう。


 ついでに、熱さまシートや市販の風邪薬など、風邪をひいた時に使える物を何個かカゴの中に入れた。レトルトのお粥なども買っておく。


 意外と便利なのと、俺は料理に自信がないから、失敗のないレトルトを入れておけば、安心だ。


 意外とレジ袋は重くなってしまった。これを主婦や1人暮らしの人たちが持っていると考えると、本当にすごいと思う。


 レジ袋が重さに耐えきれず、破けそうになってきたくらいで、白河の家に着いた。


 毎回だが、インターホンを鳴らす時、少しだけ緊張してしまう。

 スゥーっと大きく息を吸って、インターホンを鳴らす。


 すると出てきたのは、俺の目線をだいぶ下に下げると、小さい頭が見えた。白河妹が出てきた。


「白河姉は大丈夫か?」

「お姉ちゃん、つらそう・・・・・・黒田、助けてっ」

「俺は・・・・・・」


 医者でも、神様でもないから、治すことはできない、そう言おうとして、白河妹の目をちゃんと見たら、今にも泣き出しそうな目をしていた。


 ウルウルと瞳が潤んでいた。


「優しいな、白河妹は・・・・・・よしっ!俺に任せとけなんたってこっちには秘密道具があるからな」

「ひみつどうぐ?」

「あぁ、お前のお姉ちゃんを助けるために、白河妹も協力してくれるか?」

「うんっ・・・・・・うんっ!」


 「えらいぞっ」そう言いながら、白河妹の頭を撫でる。


 白河の家に入り、一旦買ってきたものをキッチンのテーブルに置かせてもらう。

 ペットボトルなどは冷蔵庫へ入れる。


 すると、トントンとフローリングの床を歩く音が聞こえて来る。

 白河妹は今、洗面所で手を洗っているので、白河妹ではない。


 となると・・・・・・ガチャッとリビングの扉を開ける。白河の家は、リビングの奥にキッチンがある。それも結構広い。


「本当に・・・・・・来てくれたんだ・・・・・・」

「そりゃ、まぁ・・・・・・」

「本当に優しいね・・・・・・」


 そう言って、ニッコリと笑うがその表情はとても辛そうだった。


「病人は寝てろ」

「そうなんだけど・・・・・・寝れなくて・・・・・」


 寝すぎると、目が覚めて寝れないというのは分かる。俺も熱が出た時、寝れば治ると言われ、一回眠って起きてしまうとなかなか寝付けなかった。


 しかし、だからといってここに居させるわけにもいかない。


「白河妹ー!」

「夏乃・・・・・・」

「えっ?」

「妹の名前、いつまでも白河妹って呼ぶつもりだったの?」

「いや、それは・・・・・・違うけど」

「ふふっ、じゃあ夏乃って呼んであげて・・・・・・」


 口元を手で隠してふふっと笑っているが、さっきより辛そうにみえる。


「夏乃ー!お姉ちゃんを部屋に送ってやってくれ」

「わかったー!」


 どたどたと勢いよく夏乃が走って来る。


「コラッ、危ないから走らないよ」

「お姉ちゃん・・・・・・早くへやにもどろ?」

「でも・・・・・・夏乃に言われちゃ、しょうがないか」


 少しだけだが白河姉がこちらを見て表情がシュンとなった。


「熱さまシート持ってくか」


 熱さまシートとスポーツドリンクの500mlのペットボトルを手に持ち、白河の部屋の前まで行く。


 流石に女性の部屋に許可なく入るのはまずいし、眠っているかもしれないので一応確認を取って、部屋の前に置いておくつもりだった。


「白河・・・・・・綾乃の方、スポーツドリンクとか熱さまシートとか持ってきたから、部屋の前に置いておくぞ」

「・・・・・・・・・・・・」


 返答が無かったので、部屋の前に置こうとしたら


「・・・・・・入って」

「へっ?」


 思わず変な声が出た。

 自分でも恥ずかしい。気の抜けた声が漏れてしまったのだ。


「じゃ、じゃあ」


 バクバクと心臓が音を立てる。


「し、失礼します・・・・・」


 とてもいい匂いがして、ぬいぐるみがベッドや机に置いてあり、とても女の子らしい部屋だった。


「色々持ってきた」

「ありがとう〜」


 持ってきたものを机の上に置く。白河は熱さまシートをおでこに貼り、ふぅーっと息を吐いている。


「お姉ちゃん・・・・・・」

「心配かけてごめんねっ夏乃」

「ううん、だいじょーぶ」

「夏乃、下に行くぞ」

「うん・・・・・・わかった」

「じゃあ綾乃なんかあったら連絡して」

「うんっ」


 そう言って、俺たちはキッチンに戻った。

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