第15話

 今日から2学期が始まった。

 とても憂鬱な朝だ。ただただ、家を出る時間までスマホをいじって、時間を潰す。


 だが、気のせいだろうか、こういう時の時間は過ぎるのが早い気がする。


「雄星っ!そろそろ学校行かないと間に合わないんじゃない?」

「うん、わかってる」


 よいしょ、と思い腰を上げて、バックを背負い、学校に向かう。


 久しぶりの制服に、久しぶりの通学路、だが見慣れている光景だからか、気分が上がることはなかった。


◆◆◆


 学校に着いた後は、出席番号の席順だったので、黒田なので、2列目の真ん中より前の方の席に座る。


「黒田〜・・・・・・いつも通り、早く帰りたそうだな」


 机にバックを置いて、座るとすぐに三村が飛んできた。


「まぁな、そう言ってるお前も帰りたいだろ?」

「いや、俺はまだ白河さん見れてないからな」

「あっ、そう」


 俺が一緒に夏祭りに行ったとか言ったら、三村は目から血を出しながら襲ってきそうだな。


 そんなことを考えるとフッと笑ってしまった。三村のそんな姿を考えると笑わずにはいられない。


「なんだよ、どうした?いきなり・・・・・・」

「いや、襲ってきそうだなって思って・・・・・・」


 そのあと、夏休みの課題が多いとか、夏休み旅行行ったとか、最新のゲームの情報とか、彼女欲しいとか色々な話をして盛り上がった。


 終業式は体育館で全校生徒でやった。まだ暑いというのに・・・・・・先生にも考えがあるのだろうが、教室の涼しい空間でやりたい気持ちがとてもあった。


 始業式が終わって、教室に帰る途中、三村が死んだような目をしていた。


「どうした?三村」

「・・・・・・が居ない」

「えっ?誰が居ないって?」

「白河さんがいない!さっき白河さんと同じクラスの奴に聞いたら、学校を休んだらしい、体調不良らしい・・・・・・」

「そ、そうなのか・・・・・・」



 白河が風邪をひいたのか?いや、白河妹の可能性も少なくはない。


 一応、一応だ連絡くらいはしておくか


 始業式が終わりホームルームも終わったあと、『大丈夫か?』と白河に送った。


 すると、いきなり電話がかかってきた。白河からだった。


『も、もしもし』

『もしもーし、心配してくれてるの〜?』

『いや、別に・・・・・・そんなんじゃ』


 素直に言うのは、さすがに恥ずかしさが勝った。


『素直じゃないなぁ〜』


 電話越しでも、少し辛そうだった。鼻声だし、ちょくちょくゴホゴホと咳をしている。


『それで?大丈夫なのか?』

『あー、うん、だいじょう・・・・・・ばない』

『えっ?今大丈夫って言ったよな?』

『言ってない!だいじょばない!って言ったの!」


 今確かに、大丈夫って声が聞こえたはずなのだが、大きな声で言ってくるので、俺が折れるしかなかった。


 相手は病人だし、あんまり大きな声を出させて無理させるのも悪い。


『じゃあ、なんか必要なものある?』

『んー、スポーツドリンクとか欲しいかも』


 スポーツドリンクね・・・・・・『じゃあ、後で』と言って電話を切った。

 これはただのお見舞い、それに小学生の多田綾乃が誰白河なのかを聞くのもチャンスだ。

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