第14話

  髪型を変えただけで案外バレないものだ・・・・・・

さっきからクラスのやつや、よく話す奴に会うがバレている気配がない。


 ふぅ〜と、ため息を吐いた時、腕をグッと引っ張られる。


「次はあれ食べようっ!」

「まだ食べるのか?」


 しまった・・・・・・女の子にこんなこと言っちゃダメだと思ったが、遅かった。

 白河はムッと頬を膨らませていた。


「そういうことは女の子に言っちゃいけないランキング3位には入ってくるよー?」

「わ、悪い・・・・・・」

「じゃあ焼きそば奢ってー」


 ふふっ、と笑いながら言ってくるが、俺の選択肢は白河に焼きそばを奢る以外にない。


「さっきのと今のお詫びに」

「さっきの・・・・・・あ、あれは勝手にあの女性が・・・・・」

「どうかなー?胸押しつけられて、興奮しちゃったかな?」

「し、してないからっ!」


 胸を押しつけられているのに気づいたのか、でも本当に興奮などはしていない。


 結局焼きそばを2つ買った。白河は、クレープも買っていた。


「じゃあ食べよっか」

「うん、はいこれ」


 俺はそう言って、袋の中に入っている焼きそばを取り出し、白河に渡す。


「ありがとうっ、じゃあ私もこれっ」

「えっ?」

「えっ?じゃないでしょ?それともクレープ嫌いだった?」

「いや、嫌いじゃないけど・・・・・・」

「よかったー、じゃあはいっ」


 そう言って、俺にクレープを渡してくる。俺が貰うのを躊躇っていると、白河がニヤリとした表情で


「あ〜んの方がよかった?」

「い、いや別にっ・・・・・・」

「あははっ!顔赤くなってる〜」


 誰でもそんなこと言われたら赤くなるだろ!俺は心の中でそう叫んだ。


 焼きそばやクレープを食べた後は、白河に連れられて、花火を見る穴場があるらしい。


「着いたよ〜!」


 そう言って連れてこられた場所は、なんとも懐かしい場所だった。

 小学生の時に、みんなできた夏祭りこの穴場で・・・・・・あれっ?なんで白河が知ってるんだ?


 たしか、あの時白河って苗字の子は居なかった。


「たまやー!」


 白河が元気な声で叫ぶと、ピューッと音を立てて花火が上がっていく。

 そして、ドンッと音を出して、綺麗な色を暗い空に咲かせる。


 花火を見ている白河の姿はなんとも似合っていた。


「懐かしいね、こうやって花火見るの」

「花火が久しぶりってこと?」

「それもそうだけど、もう一つあるかなー?」


 またドンッと音を出して辺りが明るくなる。


「白河って、俺と・・・・・・同じ」


 タイミングが悪く、花火が上がる音と重なってしまった。


「ん?ごめん、なんて言ったの?」

「あ、いや、えっと・・・・・・」


 完全に言うタイミングを逃した。だが、このことはいつでも聞けるし・・・・・・


「ねー、教えてよー」

「いや、その、浴衣似合ってる・・・・・・」

「ん〜?その事じゃない気がするけど・・・・・・ありがとうっ」


 もうっ、と言った表情で頬を膨らませているが、褒められたのが嬉しかったのか、頬がほんのり赤くなってきた気がした。


 ラストの花火が上がった。それは一番大きく綺麗で思い出に残る夏祭りになった。


◆◆◆


「やっぱり・・・・・・白河って苗字は居ない・・・」


 俺は白河を家まで送った後、自分の部屋のアルバムを漁っていた。

 やはり、白河という苗字はいなかった。


 俺の思い過ごしだったのだろうか・・・・・・いや、でも・・・やっぱりあの時聞けばよかった。


 今になってモヤモヤが取れず眠れなくなってしまった。


「あれっ?・・・・・・多田綾乃・・・・・・綾乃?」


 苗字が一緒の子居なかったものの、名前が一緒の子は1人だけいた。

 しかし、その子だけはないだろうと思っていた。多田彩乃は髪の毛がゴワゴワしていた。


 白河の髪の毛は見ただけでわかる。サラサラの髪の毛、でも、もしそうだったら、多田綾乃が白河綾乃だったら、穴場の場所を知ってるのも納得ができる。


 そんなことを考えていた時には、すでに鳥の鳴き声が窓からチュンチュンと聞こえてきた。

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