第13話

 白河と夏祭りに行くことになったが、女子と夏祭りなんて、小学生の時みんなで行った以来、一度もない。


 まぁ、縁がないというのもあるが・・・・・・高校生の女の子を相手に、会話など、どうすれば良いか考えていた。


 それに、白河は俺の学年で一番美人と噂されているのに、俺なんかと、一緒にいるなんてバレたら・・・俺はそんなことを直前になって焦ってきた。


 わかってるけど、こんな機会他に無いと思い、誘いを受けてしまった。


「せ、せめて髪型とか、服装で・・・・・・」


 そう言って、あまり使わないワックスを手に取り、髪の毛につけて、少し長い髪の毛をワックスで固める。


 服装は、どこにでも居そうな、普通の服装だが、案外、浴衣とかよりもバレなそうだ。


 俺は、準備が整ったので、予定より少し早いが、待ち合わせ場所に行くことにした。


 待ち合わせ場所に移動して、10分くらいした時白河からメールが届いた。


『もうすぐ着くよー』


 というメールだった。俺はそれに対して、『俺ももう少しで着く』と返した時


「お兄さん〜?」


 前の方から、女性の声が聞こえたので、スマホから目を離して、前を向くと、若い女性の2人組が立っていた。


「なんでしょう?」

「お兄さん1人?だったら私らとどっか遊びに行かない〜?」

「えっと・・・・ごめんなさいっ、今日は先約が・・・・」

「いいじゃない〜!」


 そう言って、腕をがしっと掴まれる。その時、胸まで押しつけられた。

 むにゅっという感触が確かにあったが、興奮というよりも、恐怖に繋がってしまった。


 腕を振り払うにも、女性に乱暴はしたくない、だがこのままだと・・・・・・


「あ、あのっ!先約があるんですって!」

「ええっ〜女?」

「まぁ、はい」

「私らの方が可愛いでしょ?」

「いや、それはないです」


 なぜか自信満々に白河よりも可愛いなどと言ってくるので、失礼だが、白河を知っている俺からしたらこの女性よりも、白河の方が可愛い。


 即答で否定されたので、右の腕を掴んでる女性の腕を握る強さが少し強くなった。


「はっ?なにっ?ちょっと顔がいいからって、なんでも言っていいと思ってるの?」

「いや、自分は顔が良くなんかは・・・・・・」

「その彼女に会わせなさいよっ!本当に可愛かったら、大人しく帰ってあげるわよっ!」


 最悪だ・・・・・・逆ギレした挙句、白河を見せろだなんて・・・・・・すまん白河変な人に絡まれた。

 

「黒田くんっ!お待たせ〜」


 後ろから、俺の名前を呼ぶ声がしたので、振り返ると、そこには浴衣に黒髪お団子でキラキラした雰囲気の白河が居た。


 正直に言おう見惚れていた。こんなにも美人だから他の男からも人気があり、女性にも憧れの的なのだろう。


 今の状況を飲み込めないのか、キョロキョロしている。


「黒田くん?この女性の方達は?」

「あー、いやなんか変な人に絡まれて・・・・・・」

「ほ、本当に可愛いじゃない・・・・・・」

「じゃあ大人しく帰ってくださいっ」

「わ、わかったわよ・・・・・・」


 そう言って、その女性の方達はキレているのか、悲しくなっているのか、分からない感じで帰っていった。


「私、初めて見た逆ナン」

「あ、あぁ、俺も初めてだよ、顔が良いなんて言われたのも初めてだし」

「そうなんだ」


 改めて見ると、やはり美人だ。黒髪が浴衣と合っている。

 大きな瞳に、肌も艶々そして何よりなんだかいつもより、色っぽい。


「それじゃあ、いこー!」

「お、おー!」


 そう言って、集合時間から5分早いが夏祭りの会場に向かった。


 






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