第11話

 さっきから自分が興味を惹かれる本を探しているのだが、一向に見つかる気配がない。

 それどころか、もう諦めて帰ろうかと考えてきた頃だった。


「いいの見つかった〜?」

「いや、まだ出会えないかな」

「そう言って、さっきからそこら辺ウロウロしてるだけなんだけど・・・・・・」


 呆れた口調で白河が言ってくるが、事実なので言い返すこともできず、黙ってしまう。


 あぁ、どうしようと考えていた時、フワッといい匂いが鼻に入ってきた。

 すると、白河が俺の隣で、本を探していた。


「黒田くんが気に入りそうな本かー」


 本当に、綺麗な肌に大きな瞳まつ毛も長くて、テレビの中の人かと思ってしまう。

 髪もサラサラの黒髪で、ちゃんと手入れされているんだろうなと勝手な想像をしてしまう。


「あっ!これなんてどう?」


 そう言って俺に渡してきたのは、映画化にもなった感動作品の小説版だった。


「読んだことある?」

「いや、映画しか観たことない」

「読んでみてっ!映画とはまた違った感じで感動するからっ!」

「わ、わかった・・・・・・」


 そこまで映画と本で違うのか?内容はほとんど一緒の気がするが・・・・・・

 白河に騙されたと思って読んでみることにした。


 最初の冒頭から途中までは映画とほとんど一緒で騙されたと思っていた・・・・・・しかし、途中から映画ではやっていなかった所や登場人物の細かい設定や感情が分かり、ちゃんと感動してしまった。


 気づいたら1ページまた1ページと次の展開を読むのが楽しくなってしょうがなかった。


 ガッツリ2時間くらい読んで、すぐに誰かにこの感情を伝えたかった。


「白河っ・・・・・・」


 正面の白河に話そうとしたら、腕を枕にして眠っていた。

 2時間も暇してたのだろう。というか、眠っているのに気づかない俺もヤバいか。


 起こそうかと思ったが、流石に可哀想だと感じ、寝させておいてあげることにした。

 白河のお陰で読書感想文もスムーズにいきそうなので、本当に白河さまさまだ。


 白河が起きるまでの間、読書感想文を書き進めて丁度、最後の段落に入って、読書感想文お馴染みのとても素晴らしかったです。や 凄くいい作品でした。を付けて読書感想文は終わった。


 すると1時くらいに来たのに、もう既に4時半を回っていた。


 流石にそろそろ起こさないとまずいよなと思い、白河の肩を揺らす。

 手で触った感触は、とても女性らしい体というか触ったらもっと触っていたく・・・・・・・・・これ以上はやめておこう。


 肩を揺らすと白河が「んっっ」と少しエロい声を出して、重そうな瞼を半分くらい開ける。


「あれっ、どうしたの黒田くん」

「どうしたのじゃないから、もう4時半だから、そろそろ帰ろうか」

「・・・・・・・・・読書感想文は?」

「お陰様で終わったよ、ありがとう」

「ん、いーよ・・・・・・」


 まだ寝ぼけているのか、言葉が続かない。眠そうな声を出しながら、背伸びをする。

 するとワンピースから強調される山が見える。

 はっきりと。


「ごめんっ待たせて、じゃあ行こっか」

「あー、うん」

「なんで顔赤いの?」

「暑いからかな?」

「えっ、冷房効きすぎて寒くない?」


 もちろん暑いからというのは嘘だ。さっきのはっきりとした山を見て、白河のような美少女と一緒に帰るとなったら、男だったら誰でも顔を赤くすると思う・・・・・・


「あっ!そういえばどうだった?あの本」

「とっても良かったよ、映画ではやってない部分とかとても面白かったし感動した」

「でしょ!でしょっ!」


 共感されたのが嬉しかったのか、ウサギのようにぴょんぴょんと跳ねている。

 ウサギというか、どちらかというと羽をパタパタさせたヒヨコの方が近いか。


「本当にありがとう、今度お礼するよ」

「えっ??」


 白河は「なんで?」みたいな顔でキョトンとしていた。


「えっ?」

「私が勝手にしたことだし、私がしたかったからいいんだよっ!」


 手を大きく、横に振りながら、「大丈夫っ」という素振りを見せてくる。


「いや、でも貸し作るのとか嫌だし・・・・・・」

「えっーと、じゃあ・・・・・・メール交換しよっ」

「えっ?メール?」

「うん、だめ・・・・・・かな?」


 ダメなんかじゃないが、どうして俺なんかとやる必要があるのだろうか、彼氏居るという噂なのに、大丈夫だろうか・・・・・・


「もちろん俺は大丈夫だけど、白河って彼氏居るんじゃないの?その彼氏に悪いというか・・・・・・」

「えっ?私彼氏居ないよ?」

「あっ、そうなんだ・・・・・・てっきり居るのかと」


 今、彼氏が居ないと聞いて、なぜかホッとした分小学生の時から好きな人が居ると言われ、なぜか今度は焦るような気持ちになった。


 何してんだ俺・・・・・・


 そんな焦りは、ピロンッとメールの友だち登録を終わらせた時には消えていた。


「じゃあ私の家すぐそこだからっ!黒田くんっ」

「あぁ、じゃあな」


 まだ薄暗いが、白河とは、白河の家の近くで別れた。メールも交換したし、今日は色んなことがあって正直疲れた。


 ん?さっき白河「またね」って言ってなかったか?俺の聞き間違い・・・・・・ではなさそうだ。

 でも、また会って遊んだりすることなんてあるだろうか。


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