第10話
夏休みも早いもので、中盤、いや終盤に差し掛かってきた。
まぁ、当然のことながら夏休みの課題はまだ終わっていない。
よりによってめんどくさい読書感想文が残っているので、かなり
「どうしたものか・・・・・・」
前までは、なんとかギリギリ終わらせていたのだが今回は読む本すら決まっていない。
家にいても、なにも始まらないので、筆箱と作文用紙を鞄の中に入れ、家を出る。
図書館に行けば、その場で読みながら書けると思いつき、すぐに行動に起こした。
我ながらいい考えだと感じた。
しかし、クーラーの効いた涼しい部屋から一歩前に出た瞬間、暑い空気が俺の体を襲った。
「あっつー」
思わずだらしない声が出てしまった。トントンとむしむしと暑い中、階段を降りていき、ガチャッと玄関の扉を開け図書館に向かう。
ギラギラと自己主張してくる太陽がとてもうるさく感じた。
◆◆◆
「あっ、黒田くん」
「白河・・・・・・なにしてんだ?」
「私はちょっと図書館に用があって」
「黒田くんは?」と顔を少し前に出して食い気味に聞いてくる。
俺は食い気味に聞いてくる白河に対して、一歩後ろに下がった。
「俺も、図書館に行く途中」
「へー!奇遇だねー、あっ!それじゃあ一緒に行こうよ」
「・・・・・・別にいいけど」
「ありがとうっ」
白河はニコッと笑って白色のワンピースと黒髪を揺らしている。
「それでー?何しに行くのー?」
「えっと・・・・・・読書感想文を書きに・・・・・・」
「あー、めんどくさいもんねー」
「白河は全部終わってそうだな」
「読書感想文は昨日終わったかなー」
いいなぁ、とボソッと呟く。
白河が終わってるんだったら、見せてもらえばいいのでは?全部一緒だとバレるので、少しだけ変えれば・・・・・・
「あっ、白河の読書感想文・・・・・・」
「みせないよ?」
「えっ・・・・・・」
「ちゃんと自分でやりなさい」
「はい・・・・・・」
すぐに断られてしまった。でも、少しくらい考えてくれてもいいじゃないかと思い、口をへの字にして、そっぽ向いていると
「あははっ!なにその表情っ!かわいーなー」
「かわっ・・・・・・かわいいは馬鹿にしてるだろ」
「馬鹿になんてしてないよ?本当に可愛かったんだもん」
「言い方がなんか腹立つ」
「ええっーひどいなー」
そんな話をしていると、あっという間に図書館に着いた。
俺だけだろうか、意外と近かった気がする。
「意外と近かったねー」
白河も同じこと思ってたのか・・・・・・まぁ、喋ってれば、多少距離があっても、近いと感じてしまうものだろう。
荷物を置いて、2人でテーブルの対面に座る。
「ふぅっ〜すずし〜」
俺が荷物を置いた瞬間、スライムのようにひんやりした、テーブルに頭を乗せる。
「ちょっと涼んでからにしよっか」
「そういえば、なんで白河は図書館きたんだ?」
「この本を返しにね」
そう言って、鞄から本を取り出して見せてくる。
「それと、図書館では静かに・・・・・・ね?」
「はい・・・・・・」
人差し指を唇に当て、シッーというポーズをとってくる。
「だから、小さな声で喋ろっ」
「・・・・・・・・・」
俺は小さく頷いた。周りに迷惑をかけてはいけないので、白河の案に乗った。
「なんだか、ワクワクしちゃうね」
そう言われれば、こういうのはワクワクするかもしれない。
自分達だけで、秘密の会話をしているかのような・・・・・・
「あ、あぁそうだな」
「ふふふっ、だよねっ」
だか、よくよく考えてみればこの状況どうすればいいんだろうか・・・・・・
こんなところ誰かに見られたら・・・・・・いや、フラグを、立てるのはよそう、来ないことを祈るしかない。
「さてと、本を探しますか・・・・・・」
そう言って立ち上がる。しかし、探すと言ってもどう探せばいいのか全くわからない。
本は普段ラノベや漫画本くらいしか読まない。
それだったらいくらでも読書感想文にできるのだが、先生はそれを絶対許してはくれないだろう。
俺は手を顎につけ、一体どうしたものか・・・・・・と考える人のように考えていた。
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